29話目
全63話予定です
今回に限り「あゆみと瞳美」は曜日に関係なく毎日2話ずつ、18:00と18:10に投稿します(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
それから二週間。学校の方は何事もなく、バイトも順調に進めていた。
「そう言えば、夏祭りは行くのかい? シフトから二人とも外れてるけど」
シフト明けで次に入る店長さんがそう話しかけてくる。すみませんねぇ、その穴埋めも店長さんなんですよ。
そんな店長さんに、
「スミマセン、二人でお休み貰っちゃって。ちょっとひと夏の思い出にって思いまして」
とあたしが頭を下げると[いや、いいや、良いんだよ]と手を振りながら、
「学生の特権さ、楽しんでおいでよ」
笑顔で店長さんにそう言われるとちょっと後ろめたいが、
「はい、そうします。ご迷惑をおかけします」
というやり取りが昨日の話。
そして今日。
学校も祭りがあるというので授業も早めに終わった。先生の[あまり羽目を外すなよ]という台詞を背中で聞きながら、二人して学校をあとにして家へと帰る。瞳美には着替え次第ウチによってもらう手はずになってる。夏祭りは川沿いのところで主に行われるんだけど、その会場がウチの方が近いんだ。だから待ち合わせはウチでって事になった。
浴衣をお母さんに手伝ってもらいながら着て帯を締める。
姿見を見て、
[おぉ、さまになってるじゃん。ちょっと美人だぞ、あたし]
なんて思ったりしてね。そんな事をしながら、手持ちの巾着とかを用意してると[ピンポーン]と音が鳴る。
お母さんが[はいはーい]と出ると、そこには浴衣姿の黒髪美人がたたずんでいた。
「似合うじゃない」
思わずお母さんと二人でハモる。そのくらいの美人さんなのですよ、元々。どれくらいってちょっと周りが心配なくらい。
だからあたしがエスコートしなくっちゃ。
「行こっ」
そう言って手をとりながら外に出る。周りを見れば、チラホラそんな格好の人たちが同じ方向を目指して歩いてる。ウチの学校はやってたけど、学校によっては休みのところもあるくらいなの。
日本人だもん、お祭りは好きだよ。この姿になってからはやっと楽しんで来られるようになった。もちろんお父さん、お母さんにはいつも笑顔で接するようにしてる。そう言えば、お父さんの言った言葉[笑みは、微笑みは笑ってるのと違う、自分を守る盾なんだ]ってその通りだと思う。イヤな事があっても笑みを浮かべていれば相手には伝わらない。
心の中だけで泣くことも出来るんだ。そうやって今まで生きてきたよ。だけどね、今は違うんだ、今は泣いても顔をうずめさせてくれる相手がいる。もちろん相手が泣けば受け止める事だって出来る。
それがとても嬉しいんだ。だからこの関係がずっと続けばいい、そういう風に感じてる。その相手、つまり瞳美も同じように思ってくれてる、と信じたい。
多分ね、同じように感じてくれていると思う。それは言葉で伝えなくても分かるよ。唇は言葉を紡ぐものだけど、言葉以外を伝える為の手段でもあるんだ、なんて哲学的な事を言ってみたり。
「ほら、行くわよ」
そうだった、それじゃあ行ってきます。
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