28話目
全63話予定です
今回に限り「あゆみと瞳美」は曜日に関係なく毎日2話ずつ、18:00と18:10に投稿します(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
瞳美は夏祭りとか、そういうイベント事とは無縁の世界で生きてきたらしい。それは純粋に興味がないから、というのと誘う相手がいなかったから、というのがある。ただ間違いないのは、前者も後者も彼女が理由ってところ。
でも、それって分かる気がする。あたしだって小さい頃の夏祭りは逆に嫌だった。だって浴衣、着たいじゃあないですか。それが半ズボンにTシャツっていう男の子の恰好をしないといけなかったんだから、そりゃあ近寄りたくもなくなるものですよ。
それが転校してあんな事件があって、また転校して女の子として扱われるようになった時、ようやくイベント事が嫌いじゃあなくなったの。
だから瞳美の気持ちも分からないではない。一人で行ってもつまらないもん。
今は二人でいられる。だから今年は浴衣で行こうって。
あ、そうだ、
「ねぇ、浴衣って」
「持ってるわよ、着ないだけで」
即答である。そりゃあそうか、女の子だもんね。
「じゃあ、袖を通した事は?」
少しだけ突っ込んだ話をする。向こうが拒否反応を示したらすぐ止めるつもり。でも、それは杞憂みたい。[貴方になら話してもいいよ]って言ったあと、
「秘密があるから浴衣は数度着たくらいかな。ちなみにそれで外出はした事は無いよ。写真を撮る為に着替えたの。そういう[思い出作り]をしてたのよ、私は」
どうやらイベント事があるとその恰好をして写真を撮っておしまいにする、そういうのを続けてきたんだって。
「何で?」
と聞いた時の、ちょっとした気まずさが走るんだけど、直ぐにそれは鳴りを潜めて、
「うちがね、そういうのを大事にしてた家族なの。実際にやったやらないは関係ない、そういう思い出だけは作るっていう。それは……成人して、結婚して、子供が生まれて。そしてその子が大きくなっていく際に[ママの写真が見たい]って言われた時の為のものなの」
そう呟くように話してくれる瞳美は、ちょっと悲しそうだ。
そりゃあそうだ、誰だってこんな身体を望んではいない。あたしだって、瞳美だって。でもいずれはそういう時が来る。その時に[人並]の事をしてないとどう言われるのか、そこまで考えての事なんだと思う。
だったら、
「今年からは一緒に行こっ、思い出作りしようよ」
気が付けばそう言って瞳美の手を握ってた。少し、手のひらが湿ってたよ、緊張してたんだろうなぁって。
それくらい今の話は瞳美にとっての心の傷なんだろうな。でも、表面上消えている傷は相手には見えない。だからと言って掘り返すのはどうかと思うけど、それでも話さなければ分からないんだ。
だからあたしはその傷に触れた。でも瞳美はその傷を隠さなかった。
また一歩瞳美との距離、縮まったと信じたいなぁって。
そんな瞳美は、
「ええ、貴方と一緒に思い出、作りたい」
そう言って笑顔になってくれた。やっぱり瞳美の笑顔が好き。それこそ自分だけのものにしたいくらいに。それって欲張りなのかなぁ、とちょっと思ってもみたり。
とにかく、一緒に行ける事になって嬉しいよ。
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