2話目
全63話予定です
今回に限り「あゆみと瞳美」は曜日に関係なく毎日2話ずつ、18:00と18:10に投稿します(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
そうそう、あたしンちの家庭事情ってのを少し話すよ。
まずはお父さん。
家には留守がちだけど、ちゃんとあたしの事を見てくれるいいお父さん。外では色々とあるみたいだけど、決してあたしたちの前で愚痴を言ったりしないんだ。
そしてお母さん。もしかしたら諦めちゃったのかもしれないんだけど、あたしをちゃんと女の子として見てくれる貴重な存在なの。それを言ったらお父さんだってそう。おままごとしててもにこやかにしてくれてた。
あとは、猫ね。
むぎっていうオスの猫なんだけど、あたしの遊び相手。あたし、毛のある動物は大好きで。犬、猫、ネズミ、その他もろもろそんなに大きくなくて体毛が生えててモフモフ出来そうな動物はみんな好き。
初めはハムスターを飼おうかって話だったんだ。あたしが[ハムスターがいい]って言ったら反対はされなかったけど[寿命が短いよ]って。その頃にはあたしもだいぶ分別が付くようになってたから、寿命が短いのはきっと別れる時辛いだろうな、って分かってて。
ちょうどそんな頃かな、近所で子猫が捨てられてて、それを買い物帰りのあたしとお母さんが見つけて。
気が付けば一言[飼いたい]って言ってた。
その日はとりあえず連れて帰って、お父さんが帰ってから相談して。そうしたら[いいんじゃあないかな]って言ってくれて。
しかしここで問題発生。あたしンちはアパート暮らしだったんだけどペット禁止のところだったんだ。だから音の出ずらいハムスターって考えてたのもあるんだけどね。
だけど、ちょうどお父さんの転勤が決まったのもある。気が付けば学校も変わって別のアパートで暮らしてた。そこはペットOKだったから時々吠えるワンちゃんとかいたよ。
残念ながらあと家族と言える存在はいないんだ。いわゆる一人っ子ってやつ。
まあ、邪推になるけど、あたし一人だったからこんだけ自由にさせてもらえたのかも知れないって今では思ってる。これが兄弟姉妹がいたらどんな扱いになっていたか。
もれなく[何々くんはちゃんと学校に行けて友達も作ってるのにお前は何で]とか言われてそう。まぁ、これは今となっては邪推だったんだけどね。だけど実際、転校前は本当の意味での友達、結局出来なかったな。
ちょうどその辺りからかな。歳で言えば小学校三年生の頃、親の転勤をきっかけにお父さんとお母さんが向こうの学校に掛け合ってくれて。そこでは女の子として通える事になったんだよ。
まぁ、見た目が既に女の子だったからかも知れないけどね。もちろん[アレ]はついたままだよ。でもね、女子トイレのいいところは、個室ってところ。そう、黙っていればちゃんと用は足せるんだ。
声も見た目も女の子寄りになっていた、っていうのもある。詳しくは分かんないけど、学校としても[見た目も声も女子生徒なのに男子生徒として扱うのはちょっと]というところなんじゃあないかな。
残念ながら体育は欠席してた。そりゃあ胸はあるけど[ソレ]もあるからね、下着姿になればいやがおうにもバレちゃう。だから先生たちには病弱だという話で口裏を合わせてもらう事にしたんだ。
何が病弱なものですか、と思いはしたけど流石にもう自分の置かれている立ち位置がとても不安定なのは理解できる歳だ、素直に体育は欠席した。
そう、もうひとつは運動会とプール。これは困ったなぁ。幸いだったのは、運動会は当日は体育着で登校だったってところ。つまり着替える心配がない。だから玉入れとか、そういうあまり体力を使わないような種目には出られたよ。
そして、プール。こればっかりは人前で脱がないといけない。だから必然的に日光にあまり当たれないって話で病欠でずっと通した。
幸いなのは女性ホルモン? の働きが強い疾患だったみたいで、成長するにしたがって見た目はどんどん女性に寄っていったところかな。
これでも男子からはもてたんだよ。女子からは……まぁそれなりに、ね。ちょっとは友達も出来た。
何もかも上手くいってる、そう思ってたんだ。あの事件までは。
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