18話目
全63話予定です
今回に限り「あゆみと瞳美」は曜日に関係なく毎日2話ずつ、18:00と18:10に投稿します(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
そのあとは出された紅茶を飲みながら話をした。昔ばなしを。瞳美ちゃんは物心ついた時からカツラの生活を続けていたんだって。だから本当に真実を知ってる人間は両親以外いないんだって。
あたしも昔ばなしをした。先天疾患の現状も、例の転校のきっかけになった事件の事も。瞳美ちゃんは静かにそれを聞いてくれた。その時の表情は学校の時とは違う、まさに十五歳のそれだ。喜怒哀楽がちゃんと顔に出ている。いつもは相当我慢して生活してるんだな、そんな気がした。
「じゃあ、今は女性としての性が強いの?」
という質問にも、
「うん、その[アレ]は付いてるけど、ホルモン療法? っていうので女性化して来たっていうのが本当のところ。もしもあたしが[男の子になりたい]って言ってたら別の治療をしたらしいんだって。だから、その、ほとんど飾りというか」
十八歳で摘出手術を受ける話もした。もうここまで来ると秘密とは何ぞや、というやつですよ。実際に摘出しないと命の危険性があるんだし。
「そうなのね。じゃあ両方のまま、っていうのは」
「うん、無理だって。今はホルモンバランスを取ってるから女性として生活できているけど、何も治療しなければ多分そろそろ寿命が来てるんじゃあないかな」
そんな疾患なのですよ、あたしのこれは。
もちろん好きでなった訳じゃあない。小さい頃にはお母さんに対して当たり散らした事もあった。でも、その時のお母さんの何とも言えない悲しそうな、すまなそうな表情を目の当りにしたら、もうあとはただその場で泣く事しか出来なかったんだ。
「ご両親を恨んだことはないの?」
今日の瞳美ちゃんは凄く積極的だ。本当なら誰にも聞かない事でも入って来る。でも、それが秘密を知った者同士の会話なのかも知れない。
「小さい頃は恨んだよ、でもね」
あの顔を見たらもう何も言えなかった、そう話したの。
「瞳美ちゃんこそ、秘密を抱えて生きてきたんでしょ?」
あたしもいつもは絶対に聞かない事を聞く。それが相手への礼儀だと思ったんだ。秘密を共有した者同士の礼儀。
それを分かっての事だろう、
「私も子供の頃、両親と一緒にお風呂に入った時に当たった事があるわ。一度だけだけどね。私はそれ以上何も言わなかった、いえ、言えなかった。それは、多分貴方と同じ理由かな」
って答えてくれた。
それはすごく分かる。両親だってそんな疾患を望んだ訳じゃあない。ベストは五体満足な体で生まれて育つ事なんだけど、起きてしまった事はどう足掻いてもかないっこないんだ。いくら子供でもあんな両親の顔を見れば、それ以上は何も言えないよ。
「でもどうしてこんな秘密を知ろうとしたの?」
ようやく頭が回って来たから一番初めの疑問を口にする。
その問いに瞳美ちゃんは、
「貴方が同じ高校に行くって分かったからよ。観察期間は義務教育の範囲だけど、もしも同じ高校に行ったら引き続き身の回りの世話をしてあげるようにって言われてるの。でもね、その前に私の秘密を教えておかないとフェアじゃあない、そう思って、その、確かめさせてもらったの。言葉で言われているのと、実際に確かめるのとでは重みが違うでしょ?」
それはそうだ、書類上は男の子が女子の中に混じって生活してるんだから慎重にもなるだろうし、観察もするだろう世話もして……あげる?
あたしは顔に良く感情が出るって言われる。もちろんいつもは気を付けてるからそんなめったな事でボロは出さないけど、今日は特別。
「そうお父さんからは[本人はとても生きづらい生活をしてるだろうけど、お前がサポートしてあげなさい]って」
あたしは少しだけ泣いた。嬉しかったんだ、こんな身体でも心配してくれる人がいる、それが嬉しかった。
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