17話目
全63話予定です
今回に限り「あゆみと瞳美」は曜日に関係なく毎日2話ずつ、18:00と18:10に投稿します(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
「私がこの姿なのには理由があるの。私は無毛症という先天疾患を持ってるの。もちろん、この疾患には程度があるんだけど、私の場合は身体の殆どの毛が無い。その、そこの毛もね。同じく先天疾患を持った者同士、更にはそこに教育委員会の人間が絡んでいるとなれば話が早いという訳。私が人と積極的にしたりしないのはそんな背景もあるの」
そうか、瞳美ちゃんにもそんな秘密があったんだ。だからなんだろうな、色恋沙汰に限らず人と関わるという作業に一枚ベールをかけて線を引く。そしてその線の中には絶対に誰もいれない。
って事は、あたしはそのベールの中に入れたの?
「瞳美ちゃん……」
思考は回るのに言葉が出ない。それだけ自分の秘密を知られたという事実と、友達の秘密を知ってしまったという事実と。
それでも黙ってる訳にはいかない。
「と、とりあえず、元の姿に戻ってくれる?」
やっと出た言葉がそれだった。
瞳美ちゃんは手慣れたようにカツラをセットし、机の引き出しを開けて化粧道具を出して眉毛を書く。そうするといつもの彼女に戻っていた。
すごく手慣れてる。そう言えば瞳美ちゃんは水泳の授業もちゃんと出席してる。髪の毛はどうしてるんだろう。
「水泳の」
とまで言ったところで分かったのだろう。
「水泳の授業は水泳帽が必須でしょ? それにこのカツラは特別製なの。外すにしてもコツがいるの。ちょっと引っ張ったくらいでは取れないわ」
そう言って少し自分の髪の毛を上に引っ張る。確かにちょっと力を入れてるのに取れる気配がない。
「でも、どうして……」
もう、もどかしい。上手く言葉が出ない。それでもこの状況を自分で納得しないといけないんだ。だからあがくように声を出す。
「私の秘密を晒す代わりに貴方の秘密を知りたかった。それは自分で確認しないと納得なんてできない。だからちょっと強引に確認させてもらったの」
瞳美ちゃんはそう言うとすうっと顔を近づけて来て、
「これで私たちは秘密を知った者同士」
その瞳は少し笑っていた。
「あたしがバラさない代わりに瞳美ちゃんもあたしの事は」
「ええ、絶対にバラしたりしない。それは命に代えてもね」
瞳美ちゃんは、今度は真剣な目であたしを見てくる。彼女は嘘は言わないタイプの人間だ、多分自分から秘密を明かす事はしないであろう事は分かってる。もしも不意に漏らしてしまったら本当に死を選ぶだろうというのも。
だからだろう、やっとあたしも自分が取り戻せてきた。
そして、
「あたしたち、これで別れられないね」
そんな言葉を投げかける。それはあたしが瞳美ちゃんに抱いていた感情だ。友達に、親友と呼べる友達になりたい。それはもしかして今日叶ったというの?
そんなあたしの心を見透かしていたのかも知れない。
「これで私たちは親友同士。だって一番互いに知られてはいけない秘密を知ったのだから。これからも仲良くして、くれる?」
最後の言葉は少し恥ずかしそうだった。そうか、瞳美ちゃん、そんな表情もするんだね。
「いいよ、あたしたち、親友になろう。何があっても絶対に離さないから」
この言葉が後々にいろいろな意味を持ってしまっている事に、あたしはこの時は気が付いていないんだ。
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