12話目
全63話予定です
今回に限り「あゆみと瞳美」は曜日に関係なく毎日2話ずつ、18:00と18:10に投稿します(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
「本当に?」
念のために聞き返すと、
「ええ、今まで気を遣わせちゃって御免なさい。いいわ、一緒に帰りましょう」
もう意外な言葉ですよ。事実、また一歩彼女のベールの内側に近づいた気がした。嬉しかった。思わず少しだけウルっと来たよ。
そんなあたしに、
「もう少し、お話してもいい?」
瞳美ちゃんはそう言ってきた。もちろん大歓迎ですよ。
それからはちょっとだけプライベートな話をした。瞳美ちゃん、一人っ子なんだって、ウチと同じだ。それはそれで意外というか、順当というか。あと、例のマンションに住んでる話もしてくれた。
ウチはアパートなんだけど、これはお父さんの仕事の関係が大きいかな。転勤が結構あるんだ。まぁ、前回はたまたま同じタイミングになったから、ある意味救われたんだけどね。実際にお父さんだけ一時的に出向なんて時もある。だからかも知れない、家を持とうとしないんだよ、ウチの両親は。いつもアパートで良いからって。
そんな話もした。
「そうか、ご両親の転勤があるのね」
と答えた瞳美ちゃんの目はちょっとくすんでた。もちろんそんな表情をあたしが見逃すはずがない、すかさず、
「で、でもね、あたしが高校受かったら、もし転勤があってもお父さんだけで行くから、ここにいてもいいって」
と返すと、
「そうなのね、それなら安心だわ」
何が安心なのか分からない。あたしはただ会話を途切れさせたくなくてそのまま口に出たんだけどね。
「お父様は何をしてらっしゃるの?」
と来たもんだから、
「ウチのお父さんはね、研究職って言ったらいいのかな、生き物と機械の研究をしてるよ。まぁ、それくらいしか教えて貰えないんだけど」
実際にお父さんから会社の愚痴一つ聞いた事がない。ただ、以前に[好きでやってる仕事だよ]と言われた事はある。
「瞳美ちゃんのところは?」
順当に行けばそういう返しになるよね。
「私のお父さんは学校関係者、と言ったらいいのかしら。教育現場に出て教鞭を振るう立場ではないんだけど、先生方の裏方、と言ったところかしら」
へぇ、教育関係なんだ。まぁ、瞳美ちゃんを見ていれば、しっかりしたご両親なのは分かるよ、子供を見れば親が分かる、なんて言われるくらいだからね。でも、教育者としてはそんなに厳しい、という程ではないんだろうな。
それでも瞳美ちゃんが持つ独特のベールの謎には至ってないんだけどね。ここで過去話をすれば少しは出てくるんだろうけど、それは自分の首を絞めるのと同義だ、それが分からないほど舞い上がってはいません。
だからそのあとはあまり深い話は突っ込まずに話をして過ごした。何が好きか、とか何が嫌いかとかそんな話をしてね。
そんなこんなで例のマンションまで来た。
「今日はありがとう、少し話が出来て良かったよ」
あたしからそう言うと、
「こちらこそ、いつも気を遣わせちゃってるみたいで御免なさい。それで」
それで? 何だろう。
そういう表情をしているのが伝わったようで、
「今度、私の家に来ない? 勉強会みたいな」
え、いいの!?
「いくいく、行きます、行かせてください」
即答である。またひとつお近づきになれる、そんな気分なのですよ。
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