表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/49

4


 

「あ、あのね、実はね…恋人ができたの」


 その言葉に、そのたった一言に、雷に撃たれたかのように身体が動かなくなった。


「だから、部屋の確認はもう大丈夫。い、いままで迷惑かけてごめんね…」

「…ああ、そう」


 あまりの衝撃にただそれしか言えなかった。

 そういえば最近呼び出しの電話が来ないなと話を振ってみたら、想像もしてなかった答えが返ってきて何を言えばいいのかわからなかった。

 本当はその後に、転校とか引っ越しの提案とかそういう会話をするはずだったのに、そんなもの全部吹っ飛んでしまって。


 いつの間にか会話が終わっていて、いつの間にか授業も全部終わっていて、いつの間にか自分の部屋にいて、いつの間にかベッドに倒れこんでいた。

 それを疑問に思うまでもなく、突然吐き気が襲ってきて手洗いに駆け込む。吐いて、吐いて、吐いて、胃の中身が空っぽになるまで吐いたけど、吐き気は収まらなくて。


 …お前、僕じゃなかったのかよ。どうせ、ちょっと優しくしてくれたからって適当なやつに…引っかかったんだ…


 違う。違う。あの女の気持ちにもその相手にもなぞ興味ないのだ。あの女の気持ちがどこに向いていようと僕になにも関係ないし、僕の心は揺れ動かない。だって、僕はあの女になんの興味もなくて、あの女なんかどうでもよくて…あんなのは所詮道端の蠅で…


 __苦しい。


 いくらはいても、薬を飲んでも、考えても天井はぐるぐると周り続けている。

 死んでしまった方がマシなのではないかと思うぐらいに苦しい。


 本当に、たかがカヨコのあんな一言で僕は何を動揺しているのか。

 彼女に恋人が出来たことがショック?そんなわけがない。僕が、僕が、あの母の息子たる僕があんな惨めで不細工な女に好意の欠片すら抱くとでも?ありえない。そんなこと許されるわけない。

 じゃあ、だったら、どうして、なんで…

 





 …簡単だ。

 面白くないのだ。あの女が少しでも幸せになることが。なにを忘れているのか。

 "あの女は不幸だから面白い"、ずっと前からわかってたことじゃないか。不幸になればなるほど面白みは増していき、幸せになればなるほど面白みはなくなっていく。あの女が面白くなくなったら、毎日がつまらなくなる。


 幸せになった分、もっと不幸にしてやらないと。


 今の幸せを奪うだけじゃ少しも足りない。幸せになったことを後悔するぐらいの不幸を。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ