表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/49

某事件に関する調査報告書



XXXX年X月X日

ご依頼主様

ナカム調査事務所


ご依頼の通り、某事件の詳細と関係者について調査いたしましたので、調査結果を送付させて頂きます。

本人たちによる証言をまとめた調書は今回入手できず、一部調査員の考察により補完した部分がございますがご了承ください。


☆簡単な事件概要

◎事件の概要

XXXX年X月X日X時頃

理事長の娘・シェバにより草原で倒れるカヨコ・カガミが発見され医務室に運ばれる。

その後、カヨコ・カガミの衣服などを取りに帰ったシェバにより、瀕死の状態の八条、エル、ルイ・クーポー、イソトマの三人がカヨコ・カガミの部屋から発見される。


◎部屋の状態について

挿絵(By みてみん)

〇右手から順に、

・ベッドの上に血を吐く八条(H)

・ベッドの下に全身やけどで座り込むルイ・クーポー(L)

・扉近くに首から血を流し倒れるイソトマ(I)

・その左に多数の切創がある状態で横たわり蹲るエル(E)

が発見される。

〇血液に関しては、

・妖狐(八条)

・人間(カヨコ・カガミ)

・エルフ(イソトマ)

・セイレーン(消去法的にエルか?)

以上の四種族のものが検出される。



◎カヨコ・カガミから検出された魔力の痕跡について

※体内にまだ残っていたもののみ

※魔力探知機を使用し調査

魔力の蓄積量の低いものから順に、

〇治療魔法(複数回)

医務室か誰かしら身近な人間からかけられたか?

〇安楽魔術(複数回)

魔法とは異なる種類のものであったため八条の可能性が高い。

〇中級レベルの防衛魔法

ルイ・クーポーに対して発動される。詳細はルイ・クーポーの欄にて

丁寧に編まれた痕跡はあるものの、少々隙が目立つため術者の魔力あるいはコントロール力がそこまで高くない可能性あり。また、ルイ・クーポーに対して発動しているため、術者は魔法使いとしてルイ・クーポーより上の実力を持つ人間である可能性が高い。

〇治癒魔術(複数回)

魔法とは異なる種類のものであったため八条の可能性が高い。

〇上級レベルの記憶魔法

レベルのかなり高い魔法にも関わらず含まれる魔力量は少ない。かなりの高等技術のため意図的にしたものだと思われる。

ここまでの高度な技術を要する魔法をかけられる者はかなり数が限られると思われる(おそらくイソトマか。あるいはかなり可能性は低いが理事長か)。

〇中級レベルの支配魔法(複数回)

魔法のレベルに反して含まれる魔力が少ない。記憶封印魔法と同じく高度な技術が使われている。支配魔法ということもあり、イソトマの可能性が高い。

〇精神支配魔術(複数回)

正直理解が大変難しい魔術。

なにかしら精神がコントロールされていたと思われる。

セイレーンの歌が最有力か?

〇監視魔術

他の魔術とはまた種類が違ったため、八条でもセイレーンでもない可能性が高い。

「以前はカヨコになにかがあると必ずシェバが来た」という証言から、シェバがかけたものかと推定。

〇初級レベルの攻撃魔法(複数回)

嫌がらせの中で受けたものの可能性が高い。一つ一つの魔法の魔力自体は大きなものではないはずだが、回数が多くなったことにより蓄積量がかなり多くなったことが推定される。

〇セイレーンの血肉

信じ難いが、カヨコ・カガミの肉体には多分にセイレーンの血肉が含まれていた。

当然ながらセイレーンの血肉は高い魔力を含む。

〇言語魔術

カヨコ・カガミがこの世界に来た当初八条がかけたものだと思われる。




☆事件関係者について(一部調査員の考察含む)

◎シェバ

〇基礎情報

・種族:人間・ジン

※ジンに関しては伝承レベルのため不明

・年齢:21

・出生日:3月5日

・身長:197cm

・体重:95kg

・性別:女性

・外見特徴

褐色の肌、腰までの銀髪、碧眼、筋肉質

・生い立ち

シャローム王立大学の理事長の娘。母親は不明。伝承が事実ならば知恵の王の子孫であり、ジンの血を引く。


〇評判

学内でもトップクラスの成績を誇り、なおかつ趣味で嗜んでいる剣術(剣術部に所属)でも好成績をおさめる。

何事にもストイック、成績だけでなく素行も優良で教師からの評価も高い。

また、その高潔さとカリスマ性から彼女を慕う生徒も多くいる。


〇カヨコ・カガミとの関係性

同居人。

同居がはじまって数か月間はカヨコ・カガミになにかあった際は、常にシェバが駆けつけていた様子。その数か月間はかなり親しい様子が確認されており、二人が抱き合っていた姿なども目撃されている。先述の通り、カヨコ・カガミの肉体から検出された監視系の魔術をかけていた可能性がある。

しかし、ルイがカヨコ・カガミのサポートを命じられるようになってからは、一定の距離をおいていた様子。


〇当日の負傷

なし。

事件に関しては特に関与はしていなかったと考えられ、あくまで事件の第一発見者だったのではないかと考察される。




◎八条

〇基礎情報

・種族:人間・妖狐

・年齢:22

※公に公開されている情報によると22。しかし実際のところ不明

・出生日:不明

※呪詛などを防ぐため非公開とのこと。調査したもののやはりわからず。

・身長:不明

 (大人の姿の際は約185cmほど、子供の姿の際は約120cm)

 ※姿が度々変わるため測定不能

・体重:不明

 ※姿が度々変わるため測定不能

・性別:不明

 ※姿が度々変わるため不明。ただ、カヨコ・カガミと会う際は男の姿だったのではないかと推定される。

・外見特徴

真っ白な肌、長い白髪、吊り上がった金目、朱色の化粧、瘦せ型

・生い立ち

東方の島国のとある尊いお方(事件とは無関係かつ語る不利益が大きいと判断したため具体名は伏せさせて頂きます)と、名高い化け狐の血を引く一族の女性の間に生まれる。最近までは高貴な生い立ちに反し、故郷の国の森の中で少ない従者とともに隠れるように暮らしていたと考えられる。

先祖帰りのためか、あまりにも強い力(魔力に近いようで遠い力の様子)と巨大な「狐」の姿をもつ。


〇評判

高い魔力はあるものの授業、試験すべてを欠席しているため常に成績評価は「測定不能」。

また、男女関係なく火遊びを繰り返している様子で、学生間でも教員間でも悪い評判が絶えない。

魔術を使った「遊び」を人間で行っているという噂があるが、そういった事実は観測できない。おそらく、前述の火遊びで交際相手や周囲の人間から恨みを買った結果、そういった噂が流布されている様子。


〇カヨコ・カガミとの関係性

翻訳魔法(ではないと推定されるがそれに近いもの。以下からは翻訳魔術と表記する)をカヨコ・カガミにかけており、彼女の日常を保障していた。

最初に翻訳魔術をかけられて以降も、どこかで知り合い森で時折会っていた様子。また、「翻訳魔術」と近い魔力の形をした魔術が他にもカヨコ・カガミにかけられていたため、それ以外にもなにかしらの魔法をかけていた可能性が高い。


〇当日の負傷

劇物による喉の損傷。

カヨコ・カガミの血には多分にセイレーンの血が含まれており、セイレーンの血の退魔効果により喉を損傷した*1と考えられる。調書によると当日カヨコ・カガミの身体には特に目立った損傷はなかったとのことだが*2、カヨコ・カガミが脱ぎ捨てたと考えられるシャツの二の腕部分に血の痕があったとの調書があったため、八条がカヨコ・カガミの二の腕に噛みつき捕食、吸血、殺害なんらかの行為をしようとしたと考察される。


*1八条は妖狐の血をひいているため、セイレーンの血が反応したと考えられる。

*2損傷はセイレーンの血肉により癒えたと考えられる。



◎エル

〇基礎情報

・種族:セイレーン(?)

※詳細は生い立ちにて

・年齢:不明

※彼の過去に関する記録が一切存在しないため完全に不明。見た目的には10代後半程度であると推測されるが、セイレーンに関しては資料が不足しているため不明。

・出生日:不明

 ※同じく記録がないため不明。

・身長:183cm

 ※セイレーンの際は不明

・体重:70kg

 ※同じくセイレーンの際は不明

・性別:男性(雄)

・外見特徴

青白い肌、癖毛の黒髪、淡い水色の眼、三白眼、度数の高い眼鏡、女性的、華奢

・生い立ち

過去に関する記録が存在しておらず一切が不明*1。しかし、過去の記録がないこと、大学からの扱い、調書の情報などから判断するに彼が現場にいたセイレーンではないかと推定される。

また、彼はシャローム王立大学のあるオフィル島を代々守るセイレーン*2の一族の一員である可能性が高い。


〇評判

高い魔力と学力を持った秀才でありながら、人当たりもよい学生として教員からも他の学生からも評価が高く友人も多い。筆記では学年二位だが、実技では常に学年一位をとっていた。現在、いくらか筆記の順位を落としているが、実技に関しては変わらず学年一位である。


〇カヨコ・カガミとの関係性

サークルの友人。

エルは勉強サークルを運営しており、カヨコ・カガミはそのサークルに所属していた。他のメンバーはいないため実質二人きりだったと考えられる。

しかし、調書によるとカヨコ・カガミの肉体からは「事件の日の一日きりだった」とは考えられないほどセイレーンの魔力と血肉が検出されており、さらにはセイレーンの血肉がカヨコ・カガミの体に馴染み彼女の肉体が半ばセイレーンになりかけていた様子がみられる。そのため、二人がただのサークル仲間だったかどうかは疑問が残る。

ここからはあくまで調査員の考察になるが、日常的にエルはなんらかの方法でカヨコ・カガミに自身の血肉を摂取させていたのではないだろうか。


〇当日の負傷

刃物(現場にあったナイフ)による多数の切創。大量出血による意識障害。

実際に出血したのであれば致死レベルの量のカヨコ・カガミの血液が現場から発見されているにも関わらず、その割にはカヨコ・カガミの損傷が少ないため、彼が自身の血肉をカヨコ・カガミに分け与えて治療した可能性が高い。


*1そういった人物をシャローム大学が受け入れる可能性は低いため、エルがセイレーンであることは大学側は承知の上である可能性が高い。

*2島の周りのセイレーンは基本的に雌の個体しか観測されていないが、エルは未観測である雄の個体であると考えられるが詳細は不明。エルが正体を偽るために性別を偽装している可能性もある。



◎イソトマ

〇基礎情報

・種族:エルフ(純血)

・年齢:21

 ※あくまで研究機関に登録されたものであり、実際のものか不明。実際に21なのであれば、エルフにしてはかなり若い

・出生日:10月8日

・身長:174cm

・体重:55kg

・性別:非公表

・外見特徴

白い肌、プラチナブロンド、深い緑の目、尖ったエルフ耳、中性的、痩せぎす

・生い立ち

大陸の西方に住む純血のエルフ一族の出身であり、幼少期は森での生活だったと考えられるが詳細は不明。

12歳頃から西方の街のボーディングスクールに通いはじめた記録がある。


〇評判

大学生でありながら、精神支配魔法研究の第一人者という飛びぬけて優秀な人物。学内にラボを持っており、学内の優秀な生徒を助手としてスカウトし自身の研究などを手伝わせている。彼のラボの「助手」になれば将来が約束されるため、助手の立場を狙っている生徒も多くいる。

その優秀さと美しさから多くの生徒の尊敬を集める一方、高慢で人を人とも思わない言動をしばしばするため一般の学生からは距離を置かれている。また、教師からもその複雑な立場から距離を置かれている。


〇カヨコ・カガミとの関係性

嫌がらせ行為の主犯と被害者。

学生たちの証言をまとめると、イソトマのラボが中心になってカヨコ・カガミへの嫌がらせ行為を扇動していた可能性が高い。

また、カヨコ・カガミからはイソトマからだと思われる記憶魔法や支配魔法がかけられているが、記憶魔法に関してはかなり長期にわたってかけられていた可能性が高いが詳細は不明。嫌がらせに関する記憶などをコントロールしていた可能性が高いかもしれない。


〇当日の負傷

刃物(現場にあったナイフ)による首の切創。大量出血による意識障害。

現場にいた何者かに首を切りつけられた可能性が高い。動機などを考えるに、カヨコ・カガミが行った可能性が高いと思われるが断定はしかねる。



◎ルイ・クーポー

〇基礎情報

・種族:人間

・年齢:19

・出生日:6月29日

・身長:175cm

・体重:60kg

・性別:男性

・外見特徴

白い肌、深い紫色の髪、青紫色の目、鷲鼻、均整のとれた体

・生い立ち

大陸の西方の某都の舞台女優兼高級娼婦の息子。母親は都のあらゆる男たちをたぶらかし、力と金を欲しいままにする「悪役」(「悪役」に関することのため具体名は伏せさせて頂きます)。

幼少期は病弱だったようだが、魔法による治療で無事に成長。15歳の頃には都のリセ・シャルル=ル=グラン*1に入学。


〇評判

魔力量・コントロール力に不足する部分があり実技での成績は振るわないものの、筆記での成績は学年一。「悪役」の息子ながら傲慢にふるまう様子もなく、授業態度・生活態度ともに良好であり、いわゆる優等生。教師からの評判はいいものの、学生からの評判は「悪役」の息子なのもあってかふるわない。


〇カヨコ・カガミとの関係性

親しい友人。

シェバと入れ替わりのような形でカヨコ・カガミの日常のサポートをしていた様子。

周囲の学生によると、揃いの香水をつける程度には仲が良かったのではないかとのこと。

また、カヨコ・カガミの部屋に調査に入ったところキッチンやいくつかの部屋から彼の魔力が検出されたため、カヨコ・カガミから部屋に招かれる程度の関係性であったことがうかがえる。

しかし調査の結果、以前彼からの圧力により、カヨコ・カガミがアルバイト先から解雇された可能性があり(いくつかの証言を組み合わせた結果浮上した可能性のため断言はできないが)、なおかつ後述の負傷などから、ルイ・クーポーからカヨコ・カガミに向けられたものが純粋な友情であったかは幾ばくか疑問が残る。


〇当日の負傷

全身火傷。

全身火傷という大やけどにも関わらずカヨコ・カガミの部屋のものが一切焼けていないことから、ほぼ間違いなく魔力火炎*2による火傷だと推定される。

カヨコ・カガミに仕込まれていた防衛魔法に反応するなにかを彼がカヨコ・カガミに対して行い、その結果負傷したと考えられる。


*1都の名門ハイスクール

*2防衛魔法をかけられた人間に攻撃をしかけた際に攻撃者側に発生する火炎。


◎ルエ

〇基礎情報

・種族:人間

・年齢:59

・出生日:11月11日

・身長:180cm

・体重:75kg

・性別:男性

・外見特徴

白髪まじりの暗い茶髪、グレーの目、鋭い目つき、全身ブランド物、中肉中背

・生い立ち

スラム出身でありながら、シャローム王立大学学長に上り詰めた人物。

ハイスクールまでの学歴はないが、20代の後半にシャローム王立大学理事長と大陸の西方の街で出会いそこからシャローム王立大学で1から学び直し、卒業後もシャローム王立大学の運営に関わり現在に至る。

幼少期に窃盗などの軽犯罪の経歴あり。


〇評判

学長にまで上り詰めただけあり優秀ではあるようだが、利益至上主義者であり研究者気質の人物が多いシャローム王立大学ではいまいち評判が悪い。また、がめつく金に関する悪い噂が定期的に大学内でも流れる様子。

実際にいくつかの不正に関わっている痕跡がみられたが、断定できるほどのものではない。


〇カヨコ・カガミとの関係性

大学側(理事長)とのやり取りは彼を通して行われていたとみられる。

これに関しては断定できないが、大学から支給されていたはずの金額(おそらく困窮学生への支援奨学金と同額程度あるいはそれ以上の額が給付されていたと推定)とカヨコ・カガミの生活状況が合っていない。奨学金はルエを通してカヨコ・カガミに毎月手渡されていたため、金額の多寡は不明だが彼により横領されていた可能性がある。


〇当日の負傷

特になし。



◎カヨコ・カガミの恋人(推定ルイゾン)

「特に厳重に調べるように」とのご依頼だったため、こちらも殊更丁寧に調べましたがそれらしき人物は発見できませんでした。

「ルイゾン」という人物は島内には存在せず、カヨコ・カガミの恋人らしき人物も見つけられません。

「ルイゾン」の名前に関してはルイ・クーポーの愛称である「ルイゼ」を聞き間違えた可能性、恋人に関してはなにかしらの誤解があったのではないかと考えられます。



◎カヨコ・カガミ

〇基礎情報

・種族:人間

・年齢:18~22と推定

・出生日:8月31日

・身長:不明(150cm程度と推定される)

・体重:不明(40kg後半から50kg前半程度の体重と推定)

・性別:女性

・外見特徴

濃茶色の髪と目、平凡、中肉中背

・生い立ち

異世界からやってきたとのこと。詳細は不明。


〇評判

成績は学年最下位であり、人付き合いもあまり得意ではなかった様子であり、教師からも生徒からもあまり評判はよろしくない。その評判に関しては、イソトマの嫌がらせの扇動も追い風になった様子。


〇当日の負傷

首元に小さな傷痕。


〇なぜ目覚めないのか

①血液から非魔法使いの許容量を大幅に超える魔力の検出

②たびたび「震えていた」という生徒たちからの証言

③どんな治癒魔法をかけても目覚めない現状


以上3点の理由から、彼女は「()()」であると考えられます。


 親愛なる依頼者様には不必要な補足かと存じますが、雪病とは魔力がないor少ないなど魔力をコントロールする術を持たない非魔法使いが主に罹患する病で、非魔法使いが魔法をかけられる・魔力保持者との性行為などで体内に一定期間内に一定以上の魔力をため込むと体内で蓄積した魔力が暴走し起きる病です。

予防と末期症状にいくまでの治療はごく簡単で、罹患者がリラックスした状態で、非罹患者と触れ合い魔力を循環させることで治すことが可能です。触れ合う相手が魔力をコントロールする魔法をもつ魔法師などであればより効果的な治療となり、症状はすぐに収まるとされています。

 象徴的な症状として「震え」があり、寒くなどないはずなのに震え続けること、最終的には眠り続けて目を覚まさないことから「雪」と「白雪姫」の物語になぞらえ「雪病」と呼ばれております。


初期症状としては、震え、抑うつ、むくみ、発汗異常、嗅覚の異常。

中期症状としては、ふらつき、幻聴、妄想、睡眠異常。

後期症状としては、転倒、幻覚。

最終的には、昏睡状態に至ります。なお、この症状にまで至ってしまった患者で、回復した者は有史以来おりません。



 *  *  *  *



 __雪病。


 …たしかに、一致している。なぜ気づかなかったのかわからないぐらいに。

 彼女は汗をかきながら震え、時折おかしなことを言って、最近は何度も転ぶことを繰り返していた。もしかすると、恋人…推定「ルイゾン」の存在も妄想と幻覚の産物の可能性さえある。

 この病は魔法使いであれば…いや、この世界の住人であれば物心つく頃にはある程度理解している。それに自分は気づかなかった。たしかに一瞬頭には過ぎった。だが、まさかこんなにも多くの人間が彼女に魔法をかけているとは思わなかった。それに、この病はスキンシップや時間経過などによる自然治癒が基本で、末期症状にいたる者などめったにいなくて…


 …いや、こんなの言い訳だ。

 いくら言い訳したところで、事実は変わらない。

 彼女が眠り続けているという事実も、自分が彼女からさほど信頼されていなかったという事実も。

 彼女は未だ眠り続けている。きっとこれからも眠り続ける。


 その中で、いったい自分はどうすればいいのか。

 死ねばいいのか?でも、あの状態の彼女を放り出して死ぬのか?そんなのあまりにも無責任すぎる。

 だからといって生きるにしてもどうにも苦しい。今ですらどうしようもない後悔の中で溺れるように生きているのに、これからの長い残りの人生を自分は………


 人影は、力なくその場に座り込んだ。



これで完結です。遅くなってしまい申し訳ありません。

長い間お付き合いいただき本当にありがとうございました。

おそらく番外編なども投稿すると思われます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
◎やっぱり、雪病だめなのですね。 お互いがカヨコにかけた魔法・魔術のこと知らないから。 セイレーンへの作り替えで何とかなったのかと思ってたけど、だめなのですね。 魔に限らず、これぐらいならカヨコを損な…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ