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001 俺は平穏に暮らしたい。

「冒険者試験に合格された(かた)、こちらでーす!」




苦節くせつ三年、やっと冒険者になることができる。心躍(こころおど)らせつつ、案内された(ほう)へと向かう。




「はーい、押さないでくださいねー。こちらに並んで待っててくださーい。」




案内係と(おぼ)しき少女は、そう言い残し、建物の中へと消えていった。おそらくあの建物で冒険者登録の手続きが行われるのだろう。


俺は大勇者に(あこが)れて冒険者を目指した…わけではない。はっきり言えばお金のためである。だから災厄(さいやく)とか怪獣(モンスター)とか、そんな危険なものと戦うつもりなんて毛の先ほどもない。採取依頼を細々とこなし、日々の生活に困らなければ、それで満足だ。




―――薬草が買い取りで10ゴールドだったから、一日500本採れれば…。




武器なんか買うつもりはないし、宿代と食事代だけ稼げればなんとかなる。




―――さぁ、地面と向き合う生活が始まるぞっ。




気合いの入れ方を間違っている気がするが、これで俺は平穏な生活を手に入れることができるのだ。




「次の方、どうぞー。」




先ほどの少女の声だ。次は俺の順番なので、扉を開ける。




「失礼します。」



「えーっと、タイキさんですねー。どうぞおかけください。」




うながされるまま腰をおろす。さて、お(えら)いさんのご登場か。




「はい、では登録の手続きを行いますね。」




―――…ん?あ、案内係じゃなかったのか。これは失礼しました…。




「…どうかされました?」



「い、いえ。どうぞ。」




少女は一瞬、怪訝(けげん)な表情を浮かべたが、そのまま手続きを進めてくれた。




「…以上が冒険者としての注意点ですねー。それではお待ちかねの装備選択ターイムでーす!」




急にテンション上げないでください。心臓に悪い。…それに待ちかねてはいません。




「ん?ここ盛り上がるところなんですけど…。ま、まあ良いです。冒険者登録のお祝いとして、武器をプレゼントします。武器は全部で5種類ですねー。」




少女(いわ)く、「大剣・短剣・(つえ)(やり)・弓」があるそうだ。まあ、正直なんでも良い。どうせ売るし。




「一番高いのはどれですか?」



「へ?値段…ですか?…高いから強いってわけじゃないんですけど…。そうですねー、杖が一番高いですかね。」



「じゃあ、杖で。」



「…即答!?いや、これであなたが一生使う武器の種類が決まっちゃうんですよ。普通悩むんですよ。どれにしようかなーって。」



「はい。杖で。」



「…ま、まあ良いですけど。杖ですね。杖はあんまり人気ないんですよね…。あ、用意してなかった…。奥の部屋に置いてありますから、お持ちください。」




なんだかあきれられている気がする。その前に「用意してなかった」って聞こえたんだけど。聞かなかったことにしよう。




「ありがとうございます。」




とりあえずお礼を言って、奥の部屋に進む。杖が壁にたてかけられていた。




―――これが杖か。




確かに心なしか他の武器に比べて豪華な気がする。値段が高いだけのことはある。ありがたくいただいて、質屋へと急ぐ。











「おー、タイキじゃねーか!また冒険者試験落ちたのかー?」




店に入るなり失礼なことを言われてしまった。言葉を返すかわりに杖を掲げる。




「おっ!受かったのかい!へぇ。こいつは今日は雪が降るな。」




また失礼なことを言われる。ここの店主は幼馴染(おさななじみ)なのだ。




「これ、買い取ってくれ。」



「え、良いのかい?確か冒険者登録するともらえるってやつだろ。初心者用だろうけど、ないと困るんじゃねーか?」



「大丈夫、俺は地面と向き合う冒険者生活を送るんだ。」



「地面と?まあ、買い取ってくれって言う以上、買い取らねーことはねーが。」




そういうと、店主が手を出してきた。杖を渡す。




「…うーん。杖は初めてだからな…。初心者用装備はだいたい500ゴールドが相場だから…。」




そういうと、店主は600ゴールドを手渡してくれた。合格祝いも入っているそうだ。合格祝い、100ゴールドか…。少し悲しい。




「じゃあ、これで。…あ、防具は良いのかい?」



「防具か…。まあ、また今度で。」




買っても良いが、何分600ゴールドでは初心者用の防具しか買えそうにない。武器にお金を使わないのだから、防具ぐらいは良いものをそろえたい。




―――まあ、薬草の採取ぐらいでダメージを負うことはないだろうし。




薬草が生えているのは町の周辺だ。そんなところに怪獣モンスターは出現しない。




「俺の地面ライフに幸あれっ!」









――――――ところかわって冒険者登録の間




「ふうー。やーっと終わった。今日もたくさん冒険者が誕生しました。大勇者さまもお喜びになられていることでしょう。」




―――大勇者さま、ミレイ頑張りましたっ!




少女、もといミレイは、冒険者登録の仕事を終え、伸びをした。




「さてと。大勇者さまにご報告のお手紙を書かなければ。…あれ、ペンがないですね…。でも大丈夫です。魔法の杖さえあれば…。」




―――えーっと。そうそう。奥の部屋に置いておいたんでした。




「…ん?あれっ…?」




ミレイの血の気が引く。




「つつつつつつつつつえがなーーーーーーーーいっ!」




自分でも信じられないような大絶叫をした後、ミレイは部屋中を駆け回る。




「どどどどどどうしましょうー。つえが、私の大切なつえがー。ふえーん。大勇者さまに怒られるぅ…。」




―――あ、あの冒険者だっ!




「確か名前は…そう、タイキとか言った。」




―――まだそう遠くへは行っていないはず…。




ミレイは扉を突き破り、町へと飛び出した。

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