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エピローグ

真っ白な雪が庭にうっすらと降り積もっていく……

初雪だ。道理で今朝は冷えると思った。


僕は冬が好きだ。

といっても寒いのが好きってわけじゃない。どちらかと言えば苦手だ。

じゃあなぜ冬が好きなのかと言うと……


雪で馬が走れなくなったら街への買い物に行かなくていい。

庭の草木もほとんど枯れてしまうから手入れをしなくてよくなる。

魔王様も暖炉のある温かな部屋でお過ごしになられるから、掃除をする箇所が減る。


つまり……やる仕事が格段に減って魔王様のそばで過ごせる時間が増えるから、冬が好きなのである。






僕の名前を呼ぶ声が聞こえたので魔王様の元へと二秒で駆け付けた。

本を読んでいた魔王様は目線をチラリとだけ上げると、部屋の隅に置かれた薪棚を指先した。

暖炉の薪がなくなりそうだから足しておいてくれと言うことだ。

分かりましたと薪小屋へと行こうとしたのだけれど……そう言えば薪小屋って川のそばにあるんだよね。



「魔王様。もしまた川でカゴに入った赤ちゃんが流れてきたら……」

「流れてきてももう飼わん。」



拾って育ててもいいですかと聞く前に速攻で却下されてしまった。

えっ……なんで?!


「いいじゃないですか!今度は僕が一人で面倒見ますからっ!」

「赤子などうるさいだけだ。」

ひ、酷いっ……!

魔王様だって本心では可愛いと思ってたくせにっ。


「この城は静かすぎます!魔王様は寂しくはないのでっ……」

「寂しくなどない。」


また被せ気味に否定されてしまった。

まあ魔王様はそうだよね。予想通りだ……

大人しく薪だけ取りに行くか……






「エミルがいるからな。」






……へっ………?


これは……予想外だ。




えっ、待って。今のなに?

心なしか微笑んでなかった?

あの魔王様が、デレたっ?!


うっっそだろっ………

嬉しすぎて顔の表情筋が全部落ちるかっくらい緩んじゃうんだけどっ……!!

隠しきれずに一人でニマニマしまくっていたら魔王様に頭を小突かれた。




「そんなことより、アップルタルトはいつ持ってくるんだ?」




そう言えば、はるか昔にそんなことを頼まれていたような気がする………


「まさか忘れていたのではあるまいな?」

「いえまさかそんな……」


魔王様の方こそいつもビックリするくらいド忘れするじゃないですか?

なんてことは口が裂けても言えない……



「直ぐに買ってまいります!」

「二秒でな。」



────────無理ですっ!!







親子だったと分かったとしても魔王様と僕の関係がなにか変わるわけじゃない。

僕にとって魔王様は魔王様だ。


仲が良いとか悪いとか、好きだとか嫌いだとか、魔王様と僕の関係はそんな次元の話ではないのだ。


今まで仕えてきた150年となんら変わらない日々がこれからもずーっと続いていくのである。



そうでなくっちゃ、魔王様と僕じゃない。





「魔王様!買ってまいりました!!」

「久しぶりに薔薇が咲き誇る庭が見たい。」




……はい?今、冬ですけど……?








今日も今日とて


魔王様の気ままな無茶ぶりに振り回されつつも、


少しでも魔王様が快適な暮らしが送れるよう……









一意専心にお世話をするのが、僕なのだっ。













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