9.巡回しましょう、そうしましょう。
私の父が、立ち上がりながら、
「お前ばかりを危険な目に遭わせる訳にはいかない。」
「俺も行こう。」
と申し出てくれました。
更には、叔父さんたちや、私と歳の近い従兄弟らも、
「それじゃあ、俺も一緒に。」
「だったら自分も。」
みたいな感じで続いたのです。
「けど、戦えないでしょ?」
「ジョブ的に。」
私が疑問を呈したところ、
「なぁに、ゴルフクラブなり、金属バットなりで、どうにかなるだろ。」
と、叔母(長女)の旦那さんが返してきました。
(いやぁ~、でもなぁ。)
なんだか微妙な気がしたので、
「だったら、男性陣は、ここに残って、皆のことを守るか逃がすのに専念してもらえる?」
「結界を壊しちゃうぐらいの敵が現れないとも限らないし…。」
「私には、いざとなったら過去に戻れるアイテムが有るから一人でも大丈夫だよ。」
と説得を試みます。
何せ、レベルが2になったとはいえ、私の全ステータスは“☆×10”のうち“★が1つだけ”でしかありませんしね。
つまり、私の【結界】は、今は未だそこまで強固ではなく、打ち破れる者がいてもおかしくないのです。
いえ、モブでなければ、きっとそれを成し遂げてしまうでしょう。
「…………。」
「ふぅ――ッ。」
諦めたかのように息を吐いた父が、
「そのネックレスもどこまで頼れるかは不明だから、命を粗末にするような真似だけはしないように!」
「…、必ず帰って来なさい。」
と述べました。
父を始め、家族を心配させまいと思った私は、
「分かった。」
「約束するよ!」
力強く頷いたのです。
いざ、パトロールへと出掛けた私は、門を通った後に、右へと向かいました。
私たちの家は角に在るので、そこも右へと曲がります。
実家を中心として一番遠い親戚宅から確認していこうと考えたので、北→東→南と回っていく予定です。
そんなこんなで、右折してみたら、悲惨な場面が視界に映ってきたではありませんか。
嫌でも。
なんと、路上に点々と倒れている人々が、エネミーどもに喰われている真っ最中だったのです!
敵は30体程いて、それぞれに餌を巡って争っています。
その隙をついて肉を貪る輩を邪魔するみたいな展開が繰り広げられているのです。
餌食となっている4人の男女は既に息を引き取っているようですが、モザイク無しでは見ていられません。
どちら様も20代後半~30代前半でしょうか?
割とグロい光景に「うぐッ!」とリバースしそうになった私は、急ぎ左手で口を押さえました。
ま、胃の中に何も入っていなかったので、戻さずに済みましたが…、
「ケホッ、ケホッ。」
と、咳を堪えきれなかった私に敵が気付いてしまったのです。
その反応は三者三様でした。
こちらを狙ってくる奴らや、それを阻止して私という獲物を横取りしようとする連中に、今のうちにと御遺体に噛みつく生物ども、といった具合です。
これらの面子には、最神ファミリーを襲ったのと同じタイプも見受けられました。
ゴブリン・ミニデー○ン・油すましのような妖怪が二匹ずつ(計六匹)に、エンジェルボーイ&エンジェルガールが五人ずつ(計十人)と、お地蔵さん的な仏が七体です。
他には、全身が紫色で瞳の赤いドーベルマンが四匹に、両手が鎌状になっている妖怪が三匹といった、ニューフェイスも存在しております。
犬たちは実写映画化されたことでも有名なゲーム“バイ○ハザード”みたいに顔から首にかけてが〝ガバァーッ〟と開かないだけでも、まだマシです。
あれは割と気持ち悪いですからね。
実際にあの現象が起きてしまったならドン引きしかねません。
もう一方のグループは、まさに“鎌鼬”です。
大きさは、どれも50㎝ほどでしょう。
まぁ、説明はこれぐらいにして。
これらを討ち滅ぼすべく、【閃光】からの【恩恵】を発動する私でした―。