58.大飯店の事後①
ミツル君は気絶した模様です。
バーバースタイルが「ふぅ――ッ」と、マッシュ―ブロックが「はぁ――ッ」と、息を吐きました。
私は近くの椅子に〝ちょこん〟と腰掛け、安堵しています。
「じゃあ、呼んでくるよ。」
マッシュ―ブロックが出入口へと向かいました。
「誰をです?」
窺う私に、
「ああ、“マサ”の友人らを、外に待たせているんだ。」
バーバースタイルが答えたのです。
消去法でいくならば、この人は“ヒデ”に違いありません。
そのヒデさんが、どこかへ電話していたら、
「さぁ、こっちへ。」
マサさんが二人の女性を連れて来ました。
一人は身長160㎝ほどの茶髪ショートヘアーで、もう一人は背丈が165㎝ぐらいの金髪ロングストレートです。
どちらもギャルっぽい雰囲気であります。
「おー、本当に、やっつけたんだ。」
少なからず驚く茶髪さんに、
「あそこに座っている女子校生のお陰でね。」
マサさんが伝えました。
「なるほどぉ。」
「で、私は、その子の防具を直せばいいわけね。」
茶髪さんが〝ふむ ふむ〟といった感じで頷き、
「それじゃあ、こっちは、床を修理していくよ。」
金髪さんが述べたのです…。
茶髪ショートヘアーさんは【錬金術師】だそうでして、出現させた道具で〝トン! テン! カン! テン!〟と、私の胸当てを打っています。
金髪ロングストレートさんの方は【修復士】との事で、左官屋さんの“コテ”で、直径20㎝×高さ40㎝くらいの銀製容器に入っている“透明のクリーム”みたいなものを、モーニングスターで壊されてしまった床に塗り込んでいきました。
すると…、なんということでしょう。
あっという間に、床が元通りになったではありませんか。
これぞ、“匠の技”に他なりません。
ごめんなさい、ふざけました。
なんでも、修復士のアイテム&スキルとの事です。
茶髪さんはファッション系の専門学生で、金髪さんはガテン系の職人なのだとか。
そんな二人は、マサさんの高校時代の同級生だそうです。
いろいろと予測していたマサさんが、大飯店に来る途中で連絡し、合流していたとのことでした。
ちなみに、マサさんは大学生ですが、アマチュア相撲レスラーとは別の学校みたいです。
ヒデさんは、IT企業に勤務しているとの話しでした。
「それで…、何故、味方してくれたんですか?」
私が訊ねてみたところ、
「ああ、俺とマサの家族は、この中華街で店を開いているんだが……、昨日、どこからともなく訪れて“小ボス”を負かした、そこのデカブツに、〝傘下に入らなければ、親兄弟、皆殺しにするぞ〟と脅されてな。」
「俺達だけでは勝てそうになかったんで、逆らえず、言いなりになってしまったんだ。」
「恥ずかしながら。」
ヒデさんが説明してくれたのです。
更には、
「ただ…、君に協力すれば倒せるんじゃないかって思ったから、駆け付けたんだ。」
マサさんが続きました。
「なるほど、です。」
そう納得していたら、10人程の男女が〝ゾロゾロ〟と店内に踏み込んできたのです。
(まさか、新たな敵?!)
緊張する私でした―。




