53.大飯店でのバトル①
黒色を基調とした長袖アロハシャツ&ジーンズに黄色いスニーカー姿のミツル君が〝ズン ズン〟と近づいてきます。
毎度のパターンで、
「閃光!」
からの、
「恩恵!」
を発した私が、攻撃すべく走り出したところ、モーニングスターを、横に、斜めに、〝ブン!ブン!〟と振り回されてしまったのです。
一時的に目が見えなくなったなかで、間合いを詰めようとする私を牽制しているのでしょう。
迂闊に懐へと飛び込めなくなった私は、左側に在る椅子を掴んで、右斜め前へと放りました。
床に〝カンッ!〟とぶつかった音に、相手が反応します。
(今がチャンス!)
再度、駆けていったら、
「デストロイ!」
と、発したアマチュア相撲レスラーが、私の眼前で、上から〝ブオッ!〟とモーニングスターを叩き付けてきたのです。
「!!」
バックステップで躱そうとしたら、体勢を崩して、尻餅を着いてしまいました。
その両足の側に、
ドゴンッ!!
とモーニングスターが当たり、床を少なからず陥没させたではありませんか。
血の気が〝サァーッ〟と引いた私は、そのままの姿勢で後退りしていきます。
おそらく、顔面蒼白になっている事でしょう。
「外れたか…。」
“図体デカ男”が構え直しました。
立ち上がって呼吸を整えた後に、〝ジリ ジリ〟と歩を進める私は、
(あの時の“ボス鼠”に比べたら大したことない! …はず。)
(絶対、いける!)
(弱気になるな!!)
そう自分に言い聞かせ、意を決して、ダッシュしたのです。
右から左へと払われるモーニングスターを、身を低くして逃れつつ、左脇腹に薙刀の柄を〝バンッ!〟と、くらわせました。
「ぐッ!」
五厘刈りが呻きながらも、動きを止めず、左斜め上から右斜め下へとモーニングスターを振るってきます。
(やばッ!!)
頭から左方へと跳んだ私は、〝ズザザーッ〟とスライングしました。
「いつつぅ~ッ。」
私が再び立ったところで、【閃光】が終了したようです。
「お! 見えるようになった。」
瞼を開いた相手が、
「お前、結構やるな。」
「……、どうだ? 俺の部下になんねぇか?」
「毎日、タダ飯、食わせてやるぞ。」
と、勧誘してきました。
「遠慮させてください。」
当然、お断りします。
すると、
「じゃあ、しょうがねぇな。」
「死んでも恨むなよ!」
ミツル君が威嚇してきたのです。
私は、
「閃光!」
「恩恵!」
この二つを発動しました。
しかし、勝てるかは不明です。
【アサシン】のように“探知”していたり、【シーフ】みたいに“嗅覚”と“聴力”を高めている訳ではなさそうなのに、攻撃が割と的確な感じなので。
ただ闇雲なだけの可能性もありますが、勘が優れている印象も受けます。
いずれにしても、厄介な敵に違いありません。
そんな巨漢めがけて、改めて突進していくのでした―。




