39.鼠たちとのバトル①
この神社の名前になっている “艮”とは、丑寅であり、鬼を表しています。
鬼と言えば、大正時代を舞台とした“○○の呼吸”で戦う人達に目の敵にされてしまいそうです。
そんな[艮神社]の狛犬は、何故だか“猫”となっております。
(鬼神を祀っているのに、猫?)
ただでさえ、そのような疑問があるというのに、現在、ここに居座っているのは鼠です。
もう、訳が分かりません。
ですが、あのネズミたちを倒すべきだということだけは理解できています。
割と広い境内には、砂利が敷かれており、幅2Mの参道も設置されております。
南側の鳥居をダッシュで通過する私達に気付いた敵が身構えたようです。
更には、連中の親玉が〝のそっ〟と立ち上がりました。
その左右から、直径13~15㎝の火/氷/雷といった球体の魔法が飛んでいきます。
数は、合計で10個ほどでしょう。
幾らかの“矢”と“銃丸”も含めたそれらが、ボスキャラに、〝ボンッ!〟〝ブシュッ!〟と当たりました。
続いて、【アサシン系】と【武闘家】が駆けていき、【騎士】や【戦士】に【剣士】と【侍】などが後を追っています。
これは…、〝相手の注意を正面に向けさせておいて、神社の東西から【魔法使い】と【魔女】に【弓使い】や【機工士】が攻撃した後に、同じ班の接近戦および中距離戦メンバーが出撃する〟という、団長さんの作戦だそうです。
それが功を奏したらしく、身長1Mぐらいの鼠らがプチパニックに陥っていました。
しかしながら、親玉が、
「キィ――――ッ!!!!」
と、発したことによって部下たちが我に返ったようで、
「キィキィキィキィキィキィ!!」
と鳴きまくってコミュニケーションを図り、東・南・西の三方向に分かれたのです。
不安や警戒によって足が止まってしまった人々を、
「対応されてしまったが問題ない!」
「もう一つ手が残っているから大丈夫だ!」
「冷静になれ!」
「勝てるからッ!!」
と、団長さんが鼓舞したのでした。
走り出したネズミ達に、近距離型が、ダガーや、ヌンチャクに、素手を、振り回します。
何匹かにはヒットしたようですが、すり抜けた鼠らが、中盤型に襲い掛かってきました。
ちなみに、私は、その“中間タイプ”です。
神社の西側から「閃光!」と聞こえてきました。
男性の声だったので、おそらくは、あちらのチームにいらっしゃる【神官】が用いたのでしょう。
ただ、ネズミは“獣系”に属しているらしく、鼻が利くようで、あまり意味をなしていません。
また、雑兵と侮るなかれ、1M級の兵隊たちは、ドーベルマンや鎌鼬よりも機敏であり攻撃力も上回っている模様です。
(ならば!)
私は【恩恵】を発動しました。
眼前の紗凪さんや穂積さんなどから逃れた敵の一匹が、私めがけてダッシュしてきます。
薙刀を右から左へと払うも、剣で〝ガキィンッ!〟と受け止められてしまったのです。
(“恩恵”を使って、互角?)
(いや、単純に読まれていただけかも??)
といった考えを巡らせていたところ、攻撃を防いだ鼠の背後から、別の一匹がジャンプしつつ、槍で私を突き刺そうとしてきました―。




