33.現状③
「お姉ちゃん、やっつけた!?」
玄関で尋ねてきた妹の琴音に、
「バッチリ!」
私は笑顔で答えます。
靴を脱いで上がったところ、妹の近くに居た咲凛ちゃん&葵月ちゃんが、
「なんか、琴晴ちゃんばかり戦わせて、ごめん。」
「いつも、ありがとね。」
と、代わる代わる述べました。
「いいよ、いいよ、全然。」
「それよりも、着替えて来るね。」
そう答えた私は、階段へと向かいます。
台所では母と叔母さんたちが朝食の支度をしているようで、お味噌汁や卵焼きなどの美味しそうな匂いが漂っていました。
パジャマから私服にチェンジして、広間へと足を運んだところ、父や叔父さんらに重たい空気が流れていました。
「どうしたの?」
出入り口付近に座っていた壱紀くんに、そっと聞いてみます。
壱紀くんは、葵月ちゃんのお兄さんで、身長は168㎝ぐらいです。
高1から高2になる途中の16歳である彼は、中学まで柔道部でした。
辞めた今でも筋トレは欠かしていないようで、割と体格が良いです。
スポーツ刈りでしたっけ? そういう髪型をしております。
「ああ、琴晴ちゃん、おはよう。」
穏やかというか、少し気弱な性格である壱紀くんの挨拶に、
「おはよう。」
「それで?」
と返したところ、
「ああ、うん。」
「うちの父親や、叔父さんたち、それぞれの会社から連絡があって…、どこも社員の3~4割が亡くなってしまったとかで、世の中、危険な状況だから、暫くは自宅待機になったらしいんだ。」
「いつまで続くのかは分からないけど。」
との事でした。
おそらく、同僚が命を落とした悲しみに打ちひしがれていたり、仕事がストップして収入を得られなくなったことに頭を悩ませているのでしょう。
声を掛けづらい雰囲気のなか、私に気付いた聡真くんが、
「あ、おはよう、琴晴ちゃん。」
「出来たよ。」
と、出現させたアイテムを、座卓の上に並べていきます。
その間に、他の人たちが、
「おはよう。」
「外の連中を倒してくれた、という事か。」
「頼りっきりで、すまない。」
「ありがとな。」
といった具合に、口を開いたのです。
〝どうも、どうも〟みたいな感じで、皆に会釈して、長方形のローテーブルに視線を送ったら、体力系と魔力系のポーション/解毒剤/転移の宝玉が、3個ずつ置かれていました。
「ん?」
「数、多くない??」
私が首を傾げたら、
「夜中の2時に、あいつらの所為で目が覚めたから、新たにコピーしておいた。」
と説明しくれたのです。
「おー、やるねぇ。」
ご満悦な私に、
「これさ、一つずつ貰っておいてもいい?」
「明日からも複製していきたいから。」
と、聡真くんが提案します。
「勿論!」
「どんどん増やして、全員に配ろう!」
「いや、いっそ販売して生計に役立てるのもアリ、かな?」
私が今後の展望を考えていたところへ、
「ご飯にするから片付けてー。」
母と叔母さん達が、食事を載せた大きめの黒いトレーを運んできたのでした―。




