187.厳島神社での攻防戦①
AM10:50となり、フェリーが出航しました。
なお、宮島へと真っすぐ進んでおります。
〝10分後に着港する〟という事で、一旦、解散となり、船内を探検する私たちでした…。
AM11:00頃に、一同は桟橋へと降り始めたのです。
行政の方は、二人が戦えるらしく、我々と命運を共にします。
残りの三名は“一般職”のため、フェリーに残っていました。
私達は、12分ほど歩き、[厳島神社]の“不明門”に辿り着いたのです。
ちなみに、“ふめいもん”や“あけずのもん”に“あかずのもん”とも読み、“不開門”という別名があったのだと、一緒に訪れた行政の男性が説明していました。
そんな門の付近に、地元民が50数ぐらい待機しています。
なんでも、〝神社でのバトルに参加する〟とのことでした。
私たちは、神社の入口に回ってきています。
フェリーからの道中、あちらこちらで広島弁が聞こえておりました。
壱紀くんが、
「そういえば、リョウさんって、方言を使っていませんね。」
素朴な疑問を投げかけたら、
「あー、うん。」
「普段は東京で生活しているから、自然と標準語になっているけど…。」
「家族や、こっちの友達と喋るときは、フツーに安芸弁になってしまうね。」
このように説明したのです。
余談かもしれませんが、大学が春休みになり、リョウさんが帰省したところで、世界が様変わりしたとの事でした。
「えー、…、そろそろ時間となりますので、皆さん、ご準備の程よろしくお願いします。」
「厳島神社に張られていた“結界”は既に壊されていますので、くれぐれも、ご注意ください。」
行政の方に報らされて、全員が装備をチェンジしていきます。
現在の天気は、小雨です。
腕時計を確認した行政の男性が、
「11時20分となりましたので、討伐を実行します。」
そう告げたことによって、およそ200名が建物内へと足を踏み込みました……。
[東回廊]を、二度、右に曲がったら、正面より人外らが向かって来ていたのです。
数は、240体といったところでしょう。
先頭グループが乱闘になっていくなか、背後からも同数のエネミーが襲撃してきました。
サハギン達の背丈は、120㎝くらいです。
鱗は、緑色と、赤色が、存在しているので、オスとメスかもしれません。
各自、鉄製の[一本銛]を所持しています。
銛の基本的な長さは150㎝あたりですが、伸びると倍はありそうです。
ともあれ。
予想していなかった“挟み撃ち”に、人間側はプチパニックとなってしまい、統率が乱れていました。
私たち[東京組]は、集団の中央にいます。
「くッ!!」
「これじゃ、スキルや魔法はもとより、飛び道具も使えねぇなッ。」
「味方に当たっちまう危険性があるから。」
そう述べつつ、眉間にシワを寄せたのは、【侍】のジュンヤさんです。
「どうにかすべきなんだが…、いい手段が何も思い浮かばなぁーいッ!」
頭を抱えたのは、勇者さんであります。
焦りだす我々の西側より、
ドウッ!!
直径30㎝でコバルトブルーの[光線]が放たれました。
寧ろ[水鉄砲]という表現が適切かもしれません。
どちらにせよ、私達の近くにて、この射撃範囲内に居た人々がダメージを負います。
残念ながら絶命してしまった方が何名かいるようです。
混乱に陥っていた所為で、誰もが【恩恵】を施し忘れていたのも影響を及ぼしたのでしょう。
【ビーム】が発動された方角を、一斉に見たら、6M大のサハギンが海に佇んでいました。
鱗が青色である半魚人は、銀製で4Mといった[三又銛]を、右手に持っています。
最長で8Mになりそうです。
この武器を装備している敵は、きっと“ボス”に違いありません。
何処に潜んでいたのかは不明ですが、それぞれが配下に気を取られていた隙に登場して、攻撃を仕掛けてきたみたいです。
とかく。
連続で不意を突かれるという〝まさか〟の事態に、[討伐隊]の多くが唖然としています。
そのような状況にて、ボスキャラが〝ギュンッ!〟と間合いを詰める流れで、銛を発射してきたのです。
この先端の一つが、「身か」と唱えようとした私の、首を、
ドシュッ!!
と、貫いたのでした―。