170.魔女の譲受人
経緯をザックリと説明した私は、家族に現在の職種をチェックしてもらったものの、各自、変化はありませんでした。
このため、手分けして親戚に連絡したのです。
再びループした件と、ジョブを継承した人がいるだろうから調べてもらうために…。
1~2分後に[テレポーテーション]してきたのは、壱紀くんの所のファミリーです。
父の妹(次女)さん一家が、畳に座りました。
〝ふぅ――〟と息を吐き、
「月媛だったよ。」
「継いだのは。」
口を開いたのは、婿養子たる叔父さんであります。
「じゃあ、いっしょに、ぼうけん出来るね♪」
琴音が嬉しそうにするも、
「いや、月媛は、まだ幼いし……、なぁ。」
深刻そうな叔父さんが、奥さんに目配せしたのです。
「そうね。」
「さすがに危なすぎるわ。」
同意した次女さんに、
「つまり…、〝参加させない〟っていうこと??」
息子である壱紀くんが問いかけました。
「ああ。」
叔父さんが首を縦に振り、
「仕方ないでしょ。」
叔母さんが困り顔になります。
それらに対して、
「いーやーだーッ!」
「あたしも行きたいぃーッ!!」
月媛ちゃんが駄々をこねたのです。
この光景に、祖父母が、
「いいじゃないか。」
「琴音だって、一つしか変わらない年齢で、立派に努めているみたいだし。」
「そのとおりよ。」
「それに…、〝可愛い子には旅をさせよ〟って言うじゃない。」
「きっと、月媛の成長にも繋がるわ。」
そう意見してくれました。
しかしながら、
「けど……。」
次女さんは釈然としておりません。
どちらかといえば“甘えんぼ”な月媛ちゃんを、心配しているのでしょう。
「せめて、君らが一緒であれば、いくらか安心できるんだが…。」
叔父さんが述べつつ、神澤さん&神岳さん四人組に視線を送ります。
「いえ、我々は、この町を護る活動に専念していきたいので、すみませんが、無理です。」
穂積さんが断ったところ、誰もが残念そうにしました。
「あ、でも、紗凪さん達と同じくらいの世代で、割と強い人たちと、旅して回る予定だから、そこまで問題ないと思う。」
私の話しによって、
「そうなの?」
「だったら、大丈夫かしら。」
叔母さんが前向きになります。
「あまりにも危険そうなときには、“転移の宝玉”で、ここに撤退してくるつもりだし。」
更に私が告げてみたら、腕を組んで〝うぅ~ん〟と考え込んだ叔父さんが、
「まぁ、〝無茶はしない〟と約束してくれるなら、許可するか。」
半ば諦めた様子で承諾してくださったのです。
これに対して、
「いいの?!」
月媛ちゃんが瞳を輝かせます。
軽く頷いた叔父さんが、
「壱紀、月媛のこと頼んだぞ。」
真顔で伝えました。
それを受けて、
「勿論。」
壱紀くんが真摯に答えたのです。
この流れで立ち上がった琴音と月媛ちゃんが、向き合って両手を握り、
「良かったね!」
「うん!!」
〝ぴょん ぴょん〟飛び跳ねて喜びを表したのでした―。