155.死霊使い
打ち合わせを経て、私達は、B1への階段を下りていきました…。
「こっちだ。」
穂積さんを先頭に、右へと折れて、廊下を進んでいきます。
暫く進んで〝ピタッ〟と止まった穂積さんが、
「この部屋の中に居るみたいだ。」
そう伝えてきました。
私たちから見て右側に在る“引き戸”に手を掛け、
「いいな?」
確認してきた穂積さんに、全員が頷きます。
ドアを開けて、入ってみると、室内は割と広めでした。
「“リハビリテーション”だったのかしら??」
このように呟いたのは、紗凪さんです。
器具などは既に運ばれたのか、ガランとしております。
最奥には、少年が、一人がけ用のソファに座っていました。
ちなみに、帽子は被っておらず、“サラサラ黒髪ショートヘア”です。
彼の左右の床には、[プッシュライト]が二つずつ置かれています。
どれも“暖色系”なので、灯りは強くありません。
きっと、“リモコン式”でしょう。
何はともあれ。
「ようこそ。」
「見廻組?」
「それとも、護衛隊やろか??」
少年が喋りながら立ち上がりました。
「どちらでもありません。」
そう述べた私に、ネクロマンサーが〝ん?〟と首を傾げます。
「アンタらが、どこの誰なんかは知らんけど……、蘇生術士の仇を討ちに来たんは、間違いなさそやな。」
「完全に武装しとるし。」
分析した相手に、
「ああ、そうだが…。」
「どうだ、少年。」
「痛い目みないうちに、おとなしく捕まるのは??」
団長さんが確認しました。
〝フッ〟と鼻で笑ったネクロマンサーが、
「絶対に嫌や。」
「来いッ、全ての隷従!!」
と発した事によって、[乱世の武士]を含む幽霊が六体も登場したのです。
なお、武士以外は“現代人”であります。
慣れない霊の集団に、私の腰が引けそうになったところ、当初の予定どおり前線に出た琴音が、
「せん光!」
自身を輝かせました。
これによって、
「くッ!!」
敵が両目を瞑るのと共に、幽霊達が消えたのです。
しかしながら、
「おんけい!!」
我が妹が続けざまに唱えていたところ、霊どもが再び現れました。
ネクロマンサーは、まだ瞼を閉じています。
それでも関係なく、幽霊らが襲い掛かってきたのです。
武士の他は、騎士(男性)/戦士(女性)/剣士(男性)/機工士(女性)/魔法使い(男性)という構成になっていました。
我々は、振り回される武器や、放たれる弾丸に魔法を、回避していきます。
穂乃歌さん&琴音のコンビは、
「ホーリー・ウォーター!」
「ライト・ボール!!」
これらを次々に飛ばして、騎士・剣士・機工士・魔法使いを倒しました。
ただし、事前情報によれば、大元であるネクロマンサーを押さえない限り、霊は何度でも復活してくるそうなので、気が抜けません。
そのような状況で、
「十分だ。」
こう告げた穂積さんが、
「俊足!」
スキルを発動して、少年へとダッシュします。
それは、【アサシン】がLV.10になった時に収得するスキルだそうで、[素早さ]が5秒間だけ2倍になるそうです。
穂積さんは、一度、お昼に、“親子丼が人気の店舗”が在る道路で、披露していました。
話しを戻しましょう。
我が妹によって、穂積さんのスピードは合計で4倍になっております。
現時点での琴音の【閃光】と【恩恵】の効果は25秒です。
既に20秒が経過しているなか、穂積さんが、かなりの速度で敵に迫りましました。
この勢いにて、[短剣]の“柄頭”で、ネクロマンサーの胸の中心あたりを〝ドンッ!!〟と突いたのです―。