149.現状⑨
「その幽霊たちに攻撃は通用するのかな??」
との疑問を口にしたのは、ウルフカットの【機工士】たるユウジさんです。
これに、“黒髪ボブのナガハマさん”が、
「いえ、効かんみたいです。」
「物理や、魔法に、スキルの、どれもがすり抜けてしもうて。」
そう答えました。
「では、〝倒しようがない〟って事か?」
アップバングの【侍】たるジュンヤさんが、眉間にシワを寄せます。
「〝通常は〟ですけど…。」
「例外として、神官や巫女の“ライト・ボール”と、ビショップの“ホーリー・ウォーター”であれば、ダメージを負わせられるみたいです。」
ナガハマさんの説明を受け、
「〝死霊だから〟という訳ですね。」
〝ふむ〟と頷いた“青髪ウィッグ”のカズヒコさんが、
「“閃光”は通用しないんでしょうか??」
新たに尋ねました。
これに対して、“オシャレ坊主のサカイダさん”が、
「ま、霊なだけあって、太陽や電気などの強い光の下では、姿を現すことは出来へんようです。」
「そやけど……、“閃光”は瞬間的なもんなんで、一旦は消えても、すぐに再出現するみたいやさかい、そこまで有効やないでしょう。」
そのように返したのです。
「つまり、〝暗闇の中でしか活動できない〟って事かい?」
[赤髪の勇者]ことアケミさんが訊いたら、
「基本的には…。」
「あと、“月明かり”みたいに、光が弱ければ、いくらでも動き回れるみたいです。」
「とは言え、〝術者を中心とした半径5M以内〟っちゅう範囲の制限があるみたいやけど……。」
「ただ、幽霊らは〝元戦闘職の集まり〟らしいんで、“魔法使い”や“弓使い”など、攻撃を遠くまで飛ばせる連中も居って、なかなか厄介やそうですわ。」
「そやさかい、ネクロマンサーを狙うんが、定石になっとるみたいです。」
サカイダさんが解説してくれました。
スポーツ刈りで日焼けマッチョの【武闘家】たるサトシさんが、〝うぅ~ん〟と腕を組んで、
「うちらのパーティーだと、カズヒコが頼りになってくるな。」
こう呟きました。
その流れで、
「じゃあ、こっちは、私と琴音ちゃんの出番だね!」
穂乃歌さんが述べたところ、
「ちょっと待て。」
「お前も参加するつもりなのか??」
「復活したばかりで、俺達よりもレベルが低いままなのに?!」
兄である穂積さんが慌て出したのです。
「そんなの関係ないよ。」
「蘇生術士さんの無念を晴らすために、私も戦う!!」
全くもって引く気がなさそうな穂乃歌さんを、
「だったら…、俺たちでカバーしてあげればいいんじゃないか?」
「危険が及ばないように。」
「あまりにもヤバそうな場合は、“転移の宝玉”で安全な所まで撤退して、仕切り直せばいい。」
光沖さんがフォローしてあげました。
これに、
「そうだよ、お兄ちゃん!」
「ありがとう、団長!!」
穂乃歌さんが勢いづきます。
〝はぁー〟と溜息を吐いた穂積さんが、
「絶対に無茶だけはするなよ。」
「約束だ!」
そのように促すのでした―。