146.京都のホテルにて・ちゅうへん
「ループ?!」
「それって…、“激アツ”じゃないかぁーッ!」
アケミさんが嬉々となさっています。
ほぼほぼデジャヴです。
勇者さんの左隣にいるカズヒコ(青髪の神官)さんが、
「なぜ内緒にしていたのですか?」
「どんな理由があるんです??」
首を傾げます。
「あー、それはですねぇ……。」
「名古屋城でお会いしたあと、マイクロバスで一緒に三重県のホテルに向かい、宿泊したんですが…。」
「その時に、温泉を共にしたアケミさんとハルカさんに、ネックレスの件を、うっかり教えてしまいまして……。」
私が説明していたら、
「ん!?」
「ボク達の名前を知っているのかい??!」
アケミさんが驚いたのです。
「ええ、まぁ、車の中で教えてくださいましたので。」
「あのとき居なかった、そちらの〝丸メガネさん〟以外は。」
私が伝えたところ、
「あぁ、彼女は“ミオ”といってね…。」
「“裁縫師”なんだ。」
勇者さんが紹介してくれました。
「それで?」
「あなたの妹さんが、仁王門で、ハルカさんを睨んでいた事には、どう繋がるんです??」
カズヒコさんが疑問を呈し、
「それよ、それ!!」
「私って、なんで嫌われているの?」
白銀ショートヘアさんが不思議がります。
「……、殺されかけたんですよ。」
「三重のホテルで、ハルカさんに。」
「私は剣で心臓を刺され、妹は“風斬”を放たれて。」
そう述べたら、
「え?!」
「私が??」
「なんで?」
ハルカさんがビックリしたのです。
「私からネックレスを奪って、“ショウ”とかいう人が生きている頃に戻ろうとしていました。」
「ただ…、どの日時にタイムループするかはランダムであり、操作が不可能なため、自動的に“名古屋城の駐車場”に飛びましたけど。」
私は“もう一つのループ”を隠して〝ネックレスによるもの〟という話しにしました。
ハルカさんは、〝あちゃー〟と、左手で顔を隠し、
「弟がらみだったかぁ。」
と、呟いたのです。
私が〝キョトン〟としたところ、
「あぁ、ハルカくんはブラコンでね。
「弟くんの事となると見境を無くすんだよ。」
「困ったことに。」
アケミさんが〝やれやれ〟といった感じで肩をすくめました。
「とにかく!」
「ほんっと、ごめん!!」
頭を下げたハルカさんが、
「簡単に許される問題じゃないだろうから、この際、私をボコボコにして!」
こんな提案をしてきたのです。
「いえ、それは、さすがに。」
両手を振って断る私に、
「じゃあ、ビンタ!!」
「一発でもいいから、お願い!」
「私の気が済まないから!!」
ハルカさんが詰め寄ってきます。
「うぅ~ッ。」
躊躇した私ではありますが、終わりそうになかったので、
「しょうがありませんね。」
諦めて〝スクッ!〟と立ち上がりました。
「ありがと!!」
「さぁ、いつでも来て!」
歯を食いしばったハルカさんに対し、〝スゥ――、ハァ――〟と深呼吸した私は、
「いきます!!」
そう宣言して、右の掌で、左頬を〝バチィンッ!〟と平手打ちしたのです。
私は人生初のビンタに“変なスイッチ”が入ってしまい、
「これはクリ○ンの分!!」
左の掌にて、右頬をも平手打ちしてしまいました。
いわゆる“往復ビンタ”というヤツです。
「琴晴りぃ~ん。」
「そこは、せめて、〝コトネ―ンのぶん〟でしょ。」
ミサさんにツッコまれ、
「そもそも二発目はダメなんじゃない??」
「人として。」
壱紀くんに指摘されました。
何はともあれ。
〝ハッ!〟とした私は、
「すみませんでした。」
「すみませんでした。」
「すみませんでした。」
「すみませんでした。」
〝ペコペコ〟と謝り倒したのです。
これを受けて、
「いや、いいよ。」
「本を正せば、私が悪いんだし。」
「それよりなにより……、“ドラ○ンボール”って名作だよねぇ~。」
ハルカさんが〝フ〟と遠い目をします。
そんな状況に、
「ぶはッ!!」
「ダメだ!」
「なんだか妙におかしくって、耐えられない!!」
「ツボった!」
勇者さんが吹き出し、誰もがつられて〝ドッ!〟と笑ったのでした―。