143.感無量
私のスマホに、紗凪さんからの“メッセージ”が届きました。
『こっちは、いつでも大丈夫だから、よろしくね、琴晴ちゃん。』
と…。
ほぼ同じタイミングで、マサさんと、アケミさんにも、それぞれ連絡があったようです。
ミサさんに、ハルカさんから。
それらを、彩さんに伝えたところ、
「では、始めましょか。」
用紙を手に取り、我々が甦らせたい人達の名前などをチェックしつつ、何やら〝ブツブツ〟と唱えだしました……。
およそ3分が経ち、〝ふぅー〟と息を吐いた蘇生術士さんが、
「滞りなく、終わりました。」
このように伝えてきたのです。
あっさりした状況に、
「ん?」
「〝復活した〟って事かい??」
勇者さんが拍子抜けしています。
なんだか想像していたのと違ったのでしょう。
私も同感です。
皆が少なからず心配しているのを察してか、
「ええ。」
「成功しましたんで、ご安心を。」
「あとは、皆さんからの報告を、穏やかに待ちましょ。」
彩さんが微笑みました。
〝ほッ〟とした私たちは、誰ともなく、お喋りしていきます。
その流れで、
「そういや、“赤髪の嬢ちゃん”は勇者なんだってな。」
団長さんが、アケミさんに話し掛けたのです。
「“嬢ちゃん”だなんて…。」
「よしてくれよぉ~。」
勇者さんが嬉しそうに照れております。
言われ慣れていないに違いありません。
「“勇者”って、珍しいですね。」
「やっぱり〝S級以上の職種〟やろか?」
軽く首を傾げたのは蘇生術士さんです。
「ボクの場合は、“SSS級超激レア”って、ジョブの項目に書いてあったよ。」
アケミさんの説明に、
「そうですか。」
「私のは、“SS級激レア”と、記載されとりました。」
彩さんが返しました。
「え?!」
「そんなのがあるんですか??」
私が不思議がったら、
「ええ。」
「……、おそらくですが、私の職種に関しては各国に一人ずつしかおらんようなので、“SS級”かと…。」
「そちらの“勇者さん”は、ひょっとしたら〝東洋と西洋に一人ずつ〟かもしれまへんし、あるいは〝世界に一人だけ〟のため、“SSS級”なんでしょう。」
「ま、どちらにしても“稀有”ですわなぁ。」
蘇生術士さんが解説したのです。
全員が〝へぇー〟と納得していたところ、
「琴晴ちゃん!!」
背後から声が聞こえました。
振り向くと、[清水の舞台]から“ボブショートの女性”が〝タタタタタッ〟と走ってきて、私に〝ガシッ!〟と抱き付いたのです。
「穂乃歌さん……。」
「生き返ったんですね。」
「うん、うん!!」
「琴晴ちゃんのお陰でね。」
「三人から、いろいろと聞いたよ。」
「いや、私は役に立っていませんし…。」
「そんな事ない!」
「琴晴ちゃんが動いてくれたから、私は、この世に戻ってこれたんだよ。」
「ありがとう、本っ当にッ、ありがとね。」
穂乃歌さんが更に力を込めてきます。
「いえ、……、あぁ、はい。」
私は、穂乃歌さんを〝そっ〟と抱きしめました。
この近くで、一緒に帰って来ていた穂積さん/紗凪さん/真守さんが〝ニッコリ〟したのです。
お三方とも、目を真っ赤にしているので、ひとしきり泣いてきたのでしょう…。
何はともあれ。
心が温かく満たされていく私でした―。