142.推しではないけど尊い
黒髪ボブさんの指示に従い、光沖さんとアケミさんが一礼します。
椅子から立ち上がった“蘇生術士の彩さん”が、〝パチ パチ パチ パチ〟と拍手して、
「皆さん、こちらに、お集まりください。」
そう促したのです…。
なんとなく整列した私達に、
「どちらさんも、お疲れ様でした。」
彩さんが会釈した流れで、
「今日の試合は、全て見応えがあって、どれも素晴らしかったです。」
「敗れはった方は残念でしたが、気落ちせんと、また挑戦してみてください。」
「優勝チームは、おめでとさんです。」
このように述べました。
その周囲では、[護衛隊]の半数ほどが、テーブルを移動させたりと、なにやら準備しています。
「これより、ご希望の相手を復活させますが……、その後は、近くのホテルを押さえとりますんで、皆さん、お泊りください。」
「準優勝のグループも。」
「お代は、こちらで支払いますんで、遠慮せず。」
蘇生術士さんが報せたのです。
我々が未だ意気消沈しているなか、護衛隊の一員である“茶髪ロングの女性”が、彩さんに近づいてきて、
「OKです。」
と、伝えました。
頷いた蘇生術士さんが、
「では、取り掛かりましょう。」
こう告げたところ、
「ちょっと待ってもらっていいかい?」
“赤髪セミロングの勇者さん”が止めたのです。
「はい??」
「なんでしょう?」
伺う彩さんに、
「うん。」
「実はね…。」
「ボクらが甦らせたいのは、一人だけなんだ。」
「という事は、枠が四つ余るよね、必然的に。」
「それを、準優勝の“シンオウ連合隊”に譲りたいんだが……、認めてもらえないだろうか??」
アケミさんが確認します。
「え?!」
「いいんですか?」
私を筆頭に、こちらの誰もが驚いたら、
「ああ、構わないよ。」
「もともと、清水寺に向かう前に、〝ボクたちが優勝したら、そうしよう〟って、話していたんだ。」
「なので、こっちは、全員が納得済みさ!」
勇者さんが笑顔で答えました。
それに対して、
「ありがとうございます!!」
私は深々と頭を下げたのです。
他の人達も、お辞儀しております。
ミサさんに至っては、
「ありがたやぁ~、ありがたやぁ~。」
両手を擦り合わせて拝んでいました。
「や、やめてくれよ。」
「なんか、くすぐったいからさ。」
いささか困惑したアケミさんが、
「どうだろう??」
「この提案……、ダメかな?」
蘇生術士さんに視線を送ったのです。
「まぁ、あなた方が、それで宜しいんなら、私としては何も問題ありませんけど。」
彩さんが承諾してくださった事によって、
「やったぁ――ッ!!」
「よっしゃあッ!」
など、活力が戻る私たちでした♪
1台の長テーブルにて。
生き返らせたい人の姓名(フリガナ付き)/生年月日or年齢/住所を、用紙に記入する運びになりました。
なお、アドレスは簡略なもので良いそうです。
例えば、“東京都神里町”までを書き、これに続く番地は伏せておいて大丈夫とのことでした。
左から、ハルカさん・ミサさん・穂積さんが横並びで、ボールペンを手に取ります。
その向こう側では、蘇生術士さんがイスに腰掛けていました。
時刻はPM19:15を過ぎたあたりです。
各試合は、予定よりも早く終わっています。
ペンを置いた三人が、待機している人達の所に、それぞれ合流しました。
「蘇生を始める前に…。」
「他界されている方は、御遺体や御遺骨が安置されとる場所で復活します。」
「斎場、ご実家、お墓、何処であれ。」
「そやさかい、関係者は現地に赴かはるんが、よろしいでしょう。」
「この世に甦らはる人々や、ご家族が、混乱せんよう、いろいろと教えてあげる為にも。」
彩さんが、このように説明したのです……。
「じゃあ、行ってくる。」
穂積さんと、紗凪さん&真守さん姉弟が、[転移の宝玉]でテレポートしました。
「すぐにでも、こっちに戻って来るからね。」
軽く手を振るミサさんは、カナさんに付き添ってもらって、横浜へと瞬間移動します。
「それじゃ、また、あとで。」
あちらでは、お仲間と相談していた“白銀ショートヘアーの騎士さん”が、一人で〝シュンッ!!〟とテレポーテーションしたのです。
お寺に残っている私たちは、各自、〝ワクワク〟〝ソワソワ〟しておりました―。