141.決勝戦です・フィニール
「よーし、よしよしよしよし!!」
「よくやった!」
団長さんを筆頭に、私たちは、手を叩いて、紗凪さんを迎えました。
あちらでは、
「気にするこたぁないッ!!」
「あとはボクに任せておけ!」
「必ず決めてみせるから!!」
アケミさんが宣言しております。
それに気付いた真守さんが、
「あの赤毛の人って、“勇者”だったよね?」
私に確認してきました。
「ええ。」
「そうです。」
私が頷いたところ、
「勇者??」
「なんだそりゃ?」
光沖さんが眉をひそめたのです。
「そういうジョブでして……、“蘇生術士”より珍しいかと…。」
私に続いて、
「ロールプレイングゲームの主役だよ。」
「漫画やアニメとかの題材にもなっているみたいだけど……。」
「まぁ、どれも、〝他の職種とは異なる特別な存在〟という扱いになっているね。」
「それこそ“唯一無二”みたいな。」
真守さんが説明しました。
「んん~??」
「要は、〝かなり強い〟って事か?」
尋ねてきた団長さんに、
「はい。」
「アケ…、あの女性の詳しいステータスは分かりませんが、そう思っておいたがよいかと。」
「本人のレベルにもよるでしょうが。」
私は、このように答えたのです。
「ふむ。」
「若さや見た目に惑わされず、用心するに越したことはない、か。」
光沖さんが認識を改めたタイミングで、
「両チームの代表は、こちらまで!」
黒髪ボブさんが述べました……。
【騎士】である団長さんは[木槍]を、【勇者】たるアケミさんは[木剣]を、手にしております。
これまで通り、審判さんがルールを説明していき、
「泣いても笑っても、これが最後となります。」
「どちらも後悔せんよう、お気張りください。」
「ほな、大将戦…、始めぇッ!!」
そのように告げたのです。
光沖さんが、
「むんッ!」
武器を左から右へと払います。
「てぇいッ!!」
アケミさんは剣で逆方向に、槍を〝カンッ!〟と弾き返しました。
この流れで、
「もらったぁあッ!」
勇者さんが武器を上から振り下ろしたのです。
「ぬおッ!!」
団長さんは体を左後方に捻って逃れました。
そこからは、互いに応酬を繰り広げていったのです。
木槍と木剣とが、ぶつかり合う音が響いております。
この闘いを〝じぃ――ッ〟と観察しているのは壱紀くんです。
きっと学べるものが多いのでしょう。
暫くして、お二人は、どちらともなく距離を取りました。
アケミさんが、
「なかなか強いねぇ。」
笑みを浮かべます。
「そっちこそ。」
光沖さんも〝フッ〟と口元を緩めました。
真顔になって黙した双方が、〝ジリ ジリ〟と間合いを詰めていきます。
先に攻撃したのは団長さんです。
突きに掛かった武器を、途中で〝ピタッ〟と止めました。
「ん?!」
勇者さんが訝しがったところで、光沖さんが槍を下から上に〝ぐるんッ!〟と半転させます。
武器の反対側で、アケミさんの顎を狙うも、
「おっと!!」
上半身を反らして躱されました。
しかしながら、
「と、と、と、とぉ~!」
勇者さんはバランスを崩して後退りしています。
“好機”とばかりにダッシュした団長さんが、木槍を右から左へと払いました。
アケミさんは、その一撃を避けきれず、左脇腹に柄を〝ズドンッ!!〟と、くらったのです。
「ぐぬぅうッ。」
歯を食いしばった勇者さんが、左手で〝ガシッ!〟と槍を掴みます。
更には、右手に握っている剣の“先端”を、団長さんの喉元に〝スッ〟と付けたのです。
「勝者……、アケミ選手!!」
審判さんの判断に、〝ああ~~ッ〟と肩を落とす我々でした―。