13.助けるつもりが・・・・
音がしたのは北東の方角です。
私は道路を北へ50Mほど進んでいきます。
その間にも、誰かが、何回か発砲していました。
一つめの右角から恐る恐る覗いてみたところ、一人の警察官が魔物と対峙しながら、弾丸を詰め直していたのです。
私の方からだと後ろ姿である男性の近くには、二台の自転車と一台のミニパトが見受けられます。
彼の眼前には高さ5Mぐらいの植物が、一体だけ居ました。
それは、チューリップのような姿形をしており、花の部分は2Mありそうです。
ポリスメンが、赤い花の上部めがけて射撃していきます。
小走りで駆け寄った私は、
「お手伝いしましょうか?お巡りさん!」
と申し出ました。
「君は?!」
30代後半であろう巡査の視線が私から薙刀へと移ります。
「あ、これは、その…。」
日本では確実に銃刀法違反で逮捕されるであろうことを危惧した私は説明を試みるも、どう言って良いか分からず、しどろもどろになってしまったのです。
「ああ、“戦闘職”とかいうやつか…。」
なんだか納得した様子の警官に、
「ご存知ですか?」
と、返したら、
「殆どゲームをしない俺に同僚が教えてくれたからな、RPGのザックリとした基礎知識を。」
「そんな彼らは、アイツに吞み込まれてしまった。」
「おそらく、二人は、もう…。」
「残る一人はまだあの中にいるみたいだから、助けようとしていたんだが、“一般職”とやらの俺には難しいようだ。」
との事でした。
「成程、です。」
頷いて、
「それでは、私がどうにかしてみましょう。」
前進したところ、敵が背中というか茎を曲げて体勢を低くしました。
向こうも、やる気のようです。
お巡りさんが「あ、待て!」と声を掛けてきたみたいですが、ほぼ同時に、
「閃光!」
と唱えてしまったので、私の耳には入りませんでした。
更に【恩恵】を用いようとしたタイミングで、花型のモンスターが右(私からは左)の葉を〝ブンッ!〟と振るってきたのです。
「え?!」
明らかに目くらましが効いていない状況に戸惑ってしまい、反応が遅れた私は横殴りにされて、ブロック塀に衝突してしまいました。
その際に、眼鏡がどこかへ飛ばされてしまったようです。
ま、伊達なので問題はありませんが。
「くぅ~ッ。」
痛みに耐えながら武器を構えようとしていたところ、もう一枚の葉の裏側から新たな植物型が出現しました。
きっと隠れていたのだろうと思われるソイツの身長は1.2Mくらいでしょう。
容姿は、スーパーマ○オの“土管の花”みたいな感じです。
そのエネミーが口を〝あんぐり〟と開くなり、直径10㎝ほどの“火の玉”を、こちらの顔面へと放ちました。
いろんな想定外に頭の回転が追い付かず、判断が遅れている私には、躱せそうにありません―。