110.甦りの条件
バスに揺られること、およそ16分。
“清水道”のバス停で降車した私達は、お寺へと歩いたのです。
だいたい15分が目安だそうですが、琴音の足に合わせたので、20分程かかりました。
途中の“清水坂”あたりは、なんとも風情があって、〝京都に来た感〟を味わえます。
そんなこんなで…、やって参りました、清水寺!
(これで、穂乃歌さんを復活させられる。)
と思ったら、自然とテンションが上がってきたのです。
この後、〝なんやかんや〟が巻き起こるとは知らずに……。
正面入り口にあたる[仁王門]の階段前に、長テーブルが設置されており、スーツ姿の男女が一人ずつ立っています。
私たちから見て、左側は茶髪ロングの女性/真ん中は黒髪ボブの女性/右側はオシャレ坊主の男性、といった計三名です。
中央の女性が、
「“一般依頼”は左に、“特殊依頼”は右に、それぞれ、お並びくださーい。」
「参拝の方ぁらは、そのままお進みもろぉて、構おりませーん。」
と、呼び掛けています。
左側には7~8人の列が出来ているものの、右側は皆無でした。
〝何が、どう違うのか〟分からなかったので、右の男性に、伺ってみることにしたのです。
年齢は30代半ばといったところで、身長は170㎝ぐらいでしょう。
「あのぉ~、ちょっと、よろしいでしょうか?」
「ん??」
「なんかな?」
「そのですねぇ…、皆さん、なぜ、左側にだけ並んでいらっしゃるのでしょうか?」
「右側は空いているのに……。」
「あー、“一般”と“特殊”やね。」
「…、君らは、“蘇生術士”のことは知っとるんかいな??」
「はい。」
「生き返らせたい人がいて、それで、お寺に訪問したのですが……。」
「ほうか。」
「…、まず、彼女が蘇らせられるのは〝5人まで〟や。」
「けど、ま、そこは、うちらのように雇われとる“戦闘職”や“ユニーク職”が、“魔力回復ポーション”を渡して補のぉとるんやけど……。」
「とは言え、ポーションの数に限りがあるさかい、〝一日に復活させるのは20人まで〟と決められたんや。」
「本人がレベルアップしてけば、これから、生き返らせられる数も増えていくんやけどね。」
「ちなみに、やけど…、人間だけでなく動物も蘇らせる事が可能やよ。」
「……、ここまでは、ええかな?」
「はぁ、…、蘇生術士さんって、女性なんですね。」
「ああ、そうや。」
「……、よければ、話しを進めても??」
「あ、はい。」
「お願いします。」
「…、それで、や。」
「午前10時の部・午後2時の部・午後4時の部、ほして、午後7時の部、といった構成になっとるんだが……。」
「〝一人あるいは一体〟を復活させるんには、500万円を払ぉてもらわんとあかんねや。」
「ごひゃッ!?」
「〝一回につき〟ですか?」
「うん。」
「でも、まぁ、それらのお金は、殆どが寄付などに使われとるよ。」
「困っている人達に、救援物資を購入して届けてあげたり…、“修復士・栽培士・畜産士・養殖士”の活動資金を援助したり、と、ね。」
「あと……、残りは、うちらの給料になっとるんやけど…、彼女は、けっして、私利私欲のために、お金を稼ごうとしとる訳やないから、そこのトコは、ぜひ、理解してほしい。」
「なるほど。」
「ですが……、私達には、そのような大金は支払えません。」
「そこで、や!!」
「君たちみたいに、金銭的に厳しい人らのため、この“特殊依頼”が設けられとるんよ!」
「……、それは、どのような??」
「単刀直入に…、五人一組のチームを作って、参加者同士で戦おてもらう!!」
「はい?!」
「これは、なんと、〝優勝チームは、タダで、5人まで生き返らせてあげる〟という、特別措置なんよ!!」
〝ニカッ!〟と爽やかな笑みを浮かべる男性でした―。