11.地元でのバトル④
間合いを詰めてきたのは、全員ではありませんでした。
六体は潰し合いによって既に消滅しているようです。
イヌッコロ×3とイタチッコ×2の獣系は、人肉(亡骸)に夢中のようで、シカトを決め込んでおります。
と、いう事で、私を標的に認定したのは九体でした。
(動物型に襲われないのであれば余裕かも。)
そう考えていたら、空中を飛べる天使×4と仏×2が、速度をアップしました。
これらの面子は、地上3Mくらい迄が行動範囲みたいなので、高度は低い方です。
そんな敵たちに、【閃光】を放ち、【恩恵】を用いて、ATTACKを開始したところ、後方に居て範囲から逃れたエネミーがダッシュしてきました。
私との距離を縮めてきたのはゴブリン×2&油すまし×1です。
舐めてかかってしまい、うっかり見落としていた私は、油すましの“杖”で、ジーンズごしの右脛を〝バシンッ!〟と殴打されてしまいました。
「いッ!!…つぅ~ッ!」
堪らず、しゃがんでしまった私の左鎖骨が、一匹のゴブリンによる石槍で突かれてしまったのです。
「あぎぃッ!!」
これまた苦悶で表情が歪んだ私は、そいつらを睨み付けて、
「閃光!」
と発しました。
しかし、あれですね。
妖怪どもは、熊本が舞台になっている男子高校生の物語みたいにはいかないものでしょうか?
〝若かりし頃の祖母が奪った名前を返してあげるから退散してよ〟的な。
まぁ、無理でしょうね。
あちらの妖怪は単体で登場するのに、こちらは複数ですから。
まるでRPGで表現されがちな、「○○Aがあらわれた!」「○○Bがあらわれた!」「○○Cが(以下省略)」みたいな感じで。
そう言えば、私…、そもそもコイツラの“友人”ではありませんでした☆
は!
いけませんわ!!
また話しが脱線してしまいました。
こんな調子じゃ、そのうち、“横道逸れ子”なんて不名誉な渾名をつけかねられません。
急いで本線へと戻りましょう。
なんやかんやの激痛に耐えながら敵を屠っていくも、4体を討ち損じてしまいました。
諸々の効き目が失われたようなので、新たに【閃光】と【恩恵】を唱えます。
ええ、ええ。
私に出来るのは、これぐらいですとも。
べ、別に、拗ねてなんかいないんだからね!
そういのをブッコンでいる間にも、私はエネミーらに引導を渡していきました。
残るはドーベルマンと鎌鼬です。
【回復】で傷を治してから、連中に向かおうとしたタイミングで、〝ガクンッ!〟と力が抜けた私は、道路に両膝を着いてしまいました。
「え?!」
戸惑う私の脳内に、
『魔力が切れました。』
『およそ1分後に気絶します。』
『解決するためには、“魔力回復ポーション”を、お使いください。』
『活動停止まで、60秒、59、58、』
との女性の声が響いてきます。
私は、いささか痙攣しながらも、どうにか左手首のブレスレットに触れました。
が。
これはジョブなどが記載されている“ステータス・オープン”なので、意味がありません。
やっちまいました。
(イベントリ!)
と、念じたところ、縦20㎝×横30㎝×厚さ1㎜ほどの半透明で青い画面が〝シュンッ!〟と出現したのです。
これらの類が嫌いな方々は酷評するでしょうね。
私も同感です。
陳腐にしか思えないので。
なにが“神のゲーム”だ!
こんなんで人類の命を弄ぶだなんて、笑えません。
(厨二かよ!)
(末期な奴らだな!!)
と憤っている最中にも時間は過ぎていき、焦りが生じる私でした―。