104.現状⑥
【魔女】を選択したところ、宙に“杖”が出現しました。
どうやら、【巫女】の時と同じで武器は一択しかないようです。
木製かつ黒色の柄は1.2Mの長さで、先端には直径8㎝の黄色い宝玉が付属しています。
右手で[魔法の杖]を掴んだ私に、
「ことはおねえちゃん、“ま女”になったの?」
月媛ちゃんが伺ってきました。
「うん。」
「そうだよ。」
私が微笑んだら、
「お――!!」
〝バイブスいと上がりけり〟になったのです。
何故なら、彼女は、子供向けアニメ[魔女っ子ヒカリン]の大ファンだからであります。
なんでも、主人公の“ひかり”が自分と同名だという事もあって、ドハマリしているそうです。
「それで??」
「結局、琴晴ちゃん達の旅に、壱紀が参加するっていうこと?」
壱紀くん・葵月ちゃん・月媛ちゃんの母親である次女さんが、尋ねてきました。
「……できれば。」
私が頷いたところ、
「そう…よね。」
叔母(次女)さんが、不安げな表情になったのです。
旦那さんの、
「壱紀、お前は、どうしたいんだ??」
との質問に、
「……、小学生の琴音ちゃんでさえ戦っているんだから、僕も何かしら役に立ちたい。」
「男だし…。」
と、答えました。
〝ふぅ―〟と息を吐いた彼らのお父さんが、
「そっか……、分かった。」
「行ってきなさい。」
承諾してくれたのです。
お母さんの方も、
「しょうがないわね…。」
「壱紀、あんまり無理しすぎないようにするのよ。」
認めてくださいました。
壱紀くんは優しいが故に、他人の為に頑張り過ぎて自分が傷つくタイプです。
ご両親は、そういう性格を心配したのでしょう。
やや重たくなった空気を、
「で??」
「いつ出発するの?」
葵月ちゃんが変えてくれます。
私は、両腕を組んで、
「ん―。」
「交通手段が問題なんだよねぇ。」
「高速道路は使えなくなっているみたいだから……、飛行機か新幹線が動いてくれていると助かるんだけど。」
〝むむぅ~ッ〟と悩みました。
聡真くんが、
「じゃあ、調べてみよう。」
スマホで検索してくれます。
「…………。」
「残念ながら、世界中の空港が封鎖されてるみたいだね。」
「敷地内…、例えば、滑走路や駐車場にエネミーが現れて、従業員と利用客の多くが犠牲になったらしく、〝危険だから〟って理由で。」
「新幹線は……、お! 運行してる。」
「かなり本数を減らしているけど。」
彼の説明を受けて、
「東京からの所要時間と料金って、どれくらい??」
聞いてみたら、
「ん?」
「琴晴ちゃんが訪れたことのある場所に“瞬間移動”してから乗ったほうが、距離を短縮できるし、値段も安くなって、いいんじゃない??」
と提案してくれました。
「さすが、ソウくん!!」
「ナイスアイディア!」
喜んだ私が、“テレポーテーション”する候補地を考えたところ、[名古屋]になったのです。
静岡駅は停電の影響で全線が運休しているのと、三重県には新幹線が開通していないので、“愛知県 → 岐阜県 → 滋賀県 → 京都府”といった旅順になります。
必然的に。
「あとは、“1”に戻った私のレベルを幾らかアップしておくのと…、“戦士”に関することを、カズくんに、いろいろ教えとこうかな。」
「これからの事を、何かと想定して。」
そう述べる流れで、
「あ!!」
「セカンドステージは、人外たちの登場が、一時間、早まってるんだった。」
〝フ〟と思い出した私は、
(紗凪さんに伝えといたが良いよね?)
(……、うん!)
(そうしとこ。)
電話を掛けることにしました。
“別種のタイムループ”の件は内緒にして―。
【魔女っ子ヒカリン】もまた、本編における“架空の作品”です。
今回も、著者が無知なだけで、そのような[アニメ・漫画・小説・ゲーム]などが実在している場合は、すみません。
あしからず。
2022.2.12現在。