6-投降
ついに、都心を離れ、一面畑だらけのところへやってきた。
日本の畑は改良に改良を重ねられ、最高級の土で出来てるらしい。それも国が農業支援を全面的にバックアップして、今では輸入に頼らなくても大丈夫なほどだとか。
「こんなに畑だらけなんは初めて見たぁ」
「俺も」
夕暮れで、影が伸びきっている。
俺はスズの影を踏んで歩いていた。
なんとなく、離れたくなかったから。
突如、スズの影がなくなり、耳障りなプロペラの音があたりを覆い尽くした。
ヘリコプターだ。
ここまで近づかないとわからないほどの消音機能を搭載したヘリなんて日本にあるとは思わなかった。
「すごいね」
スズはのんきだ。
もうきっと逃げきれないだろう。
いや、最初からわかってたことだ。逃げられるわけがない。
だって、俺の体の中にはGPAが搭載されてるんだから、世界中のどこにいたってバレてしまうんだもん。
宇宙にでも逃げない限り無理だ。
スズにそれを提案したら、きっとノリノリになってくれただろうけどね。
俺が今まで逃げてたのは、すごく単純な理由だ。
「少しでも長く、スズと一緒にいたかったんだ」
思いを言葉にした。
「照れますなぁ。でも・・・あたしもだよ」
ヘリの音でうるさいはずなのに、すごく鮮明にスズの声が聞こえた。
「俺、行ってくるね」
「・・・うん。帰ってくるんだぞ?」
「・・・うん」
「返事がちっちゃい!」
「うん!」
大きく頷いて、俺はヘリから出てきた男に無抵抗に抱きあげられた。
「大事にしなさいよ」
スズの言葉に男は一礼して、ヘリに乗り込んだ。
スズを置いて、俺は空に飛び立った。
どうしても、どうしてもこの時はやってきてしまうものだった。
でも、でもやっぱり離れたくないって感情が強い。
ねぇスズ、きっとまた会いに行くから。
そう心で思った直後に、男によって主電源を切られてしまった。
視界が真っ暗になる。
思考が真っ暗になる・・・。