4-嘘
河川敷の鉄橋下。
だいぶ暗くなってきたため、ここで一泊することにした。
「ごめんね」
俺はとにかく謝るしかないと思った。
「なんで?」
「だって、関係ないのに巻き込んじゃって、親も心配してるよ」
「だいじょーぶなのだ。あたしは勝手にどっかに行くとかしょっちゅうあるから」
確かにありそうだ。
「むしろね、こういうの楽しい。冒険みたいだし」
こういう子だから俺は好きなのかな。
この気持ちってちゃんと伝えた方がいいのかな。
ぐぅー。
スズのお腹の音。
「あはは、おならじゃないよ」
ちょっと照れた様子でお腹をさする。
「ちょっとさ、待ってて?」
俺はスズが頷いたのを確認すると町の繁華街の方へむかった。
人を傷つけてはいけないというルールがある。
でも、物を盗んではいけないなんてルールは設定されていない。
もちろんモラルに欠けるのはわかってるけど、スズの空腹を満たせるならしょうがない。
そうして光学迷彩を有効利用した。
袋に入っているものを袋ごとくわえて逃げ去る。
光学迷彩を解くまで、袋が宙を移動している光景にみえるんだろう。もちろん誰にも見られてないけど。
「うおっ、どしたのこれ」
「もらってきた」
嘘をついた。
「ダメ」
え?
「盗みは絶対にダメ」
「あ・・・」
絶対に表情には出ていない。
なのになぜバレたのかが全くわからない。
「あたしもちょっとはお金持ってるから大丈夫さ」
そう言って、スズは近くのコンビニで自分のご飯と俺のご飯を買ってきてくれた。
「・・・ごめん。返してきた」
スズがコンビニに行ってる間に、元の場所にとってきた物を返してきた。
普段テキトーな性格してるのに、正義感が強くて、実は芯が通っている。
「俺のさ、次からご飯買ってこなくていいから」
「食べないと死んじゃうよ?」
「その辺のねずみとか捕まえて食べるから」
なんで嘘を繰り返すんだろう。
つきたくてついてるわけじゃないのに。
また怒られるかもしれない。
「うーん、ちゃんと捕まえて食べるんだよ?」
ちょっと考えてから、スズはそう言った。
きっと嘘だってバレてるんだろう。
きっと俺が普通の猫じゃないってバレてるんだろう。
でも、バレない振りしておちゃらけてくれる。
だから俺はスズのことが好きなんだろう。