表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

2-ショート

 公園の外はすぐに道路になっている。

 車の音を聞いた俺は、咄嗟に子供を守っていた。己の意思じゃない。ロボットのルールによってだ。

 人間の命を守ることが最優先事項になっている。

 俺は子供の代わりに車に激突した。

 衝撃はひどいものだった。

 一瞬だけど、電源が飛んだ気がする。


「ヌル!」


 ふっとばされた俺に駆け寄るスズ。


「大丈夫・・・。ちょっと痛かったけど」


 もちろん痛覚は存在する。しかも右前足に損傷があるようだ。

 俺の体には無数のナノマシンが存在していて、自動修復機能も搭載されている。

 つまり、ほっとけば治るわけだが、それも時間がかかったりする。


「びっくりしたよほんとにもう」


 若干涙目のスズは、俺を抱えて、車の運転手もシカトして、轢かれそうになった子供すらもシカトして家に走った。

 まぁ、子供はすぐに立ち上がってて、特に怪我はしてなさそうだったからいいけど。


「無茶しないでよ」


 帰ってすぐ、俺はふかふかのソファーに横にならされた。

 ロボットだから大丈夫と言いたい。

 いや、なんで俺はロボットであることを隠しているのかわかんなくなってきた。スズに心配かけたくない気持ちがすごく溢れてくる。


「ほんとに大丈夫だから」


 右足には包帯が巻かれていた。何の意味もないのに、なんとなくうれしかった。

 右足が痛いはずなのに、胸が苦しい感じがする。


「スズ・・・」

「ん?」


 でも、その先の言葉が出てこなかった。

 これがどういう感情なのかわからない。

 自分の脳内をフルで検索するけど、データの中に感情は入っていない。


「なんでもない」

「うん」


 ふと、公園での話を思い出す。


『愛の告白』


 愛ってこういうことなのかな。

 そうなのかと思った瞬間、ものすごい葛藤が俺の中に起きてしまった。

 猫と人間なんて不釣り合い。

 さらには、ロボットなのに恋をしてしまった。

 そもそもバカバカしい話だと思われそう。

 思考がおかしくなりそうだ。

 車にぶつかっておかしくなったのかな。

 自分が自分でないような、不安定な感情が渦巻く。


「ヌル?体が熱いよ?熱あるの?苦しい?」


 心配してくれるスズが愛おしく感じてしまう。

 ロボットのくせになにをしてるんだろう。

 俺はこのぐるぐるから逃げ出すために、いったん自分の思考スイッチをオフにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ