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ニートと雪 前編

作者: ぼうたろう

朝久々に目が覚めた。何回目だろう、あの夢を見るのは。いつもなら16時頃起きるのだが。俺の生活はこうだ。16時に起き、すぐさまネットに入り浸り、ドアの前に置いてある、飯を食べて、寝る、そんな感じの生活だ。

不意にカーテンを開けると辺り一面白銀の世界が俺の目に映る。

ちっと舌打ちをして、また寝直すかと布団に戻ると階段を竜巻旋風の如く駆け上がってくる音がするのに気づいた。ガチャ…

「お兄様!!!!!」

「?!」

と威勢良く叫びながら布団にダイブ。これが今年5才になる妹だ。今回は違った。いつもと全然違う。いつもはドア越しで起こしてくるのだが…

「お兄様おきてー!!!!」

「…」

馬乗りしているのがわかる。起きたくない。

「お兄様おきて!!!」

「」

いつもなら無視をかましている。

「お兄様おきて!」

「」

「このくそニート!!!!!!!!!!!」

「は?!」

「おはよう!!」

妹と初めて目が合った気がする。という感覚があるくらい顔を合わせていない気がした。


「お前、どこでそんな言葉覚えたんだ?…」

「N●tflixでお兄ちゃんみたいな引きこもりのドラマやってた!」

妹としばらく目を合わせた後、頭を枕に戻した。

「…お兄ちゃんはな…」

「?」

言葉が出てこない。いつもは何を発っしていた?


「……お兄ちゃんは困っているんだ。お前の知らない所で世界が混乱に陥っているんだ。だからこの身をどこに置こうかってな」

「…お兄様…ニートって大変なんだ…せっかく雪降ったから遊んでくれると思ったのに。」

と、物欲しそうな声で俺に訴え、ベッドから少し離れていき、悲しげな表情でドアを開けようとするのが横目に映った。


「…あーわかったわかった、少しだけだぞ。」

体半分出ていこうとした妹の身体がマッハ20000キロくらいの速さで俺の体に衝突してくる。

「お兄様すき!」


…その可愛さには逆らえなかった。この笑顔も初めて見たような気がする。勝手に頭をポンポンとしてしまった。彼女の笑顔を見ただけで心の中にある何かが浄化されたような気がする。

23にもなって俺は何してるんだか…と心の中でふと呟き、冷床に少し重くなった体を起き上がらせ足をつけた。

窓の前に置物として置いてある、全長30センチ弱の砂時計を反対にして、自分の部屋を後にした。


こんな時間に部屋を出たのは多分1年振りくらいだろう。真夜中、食べた飯をリビングに置きに行くぐらいしか、部屋を出ていなかった、そうあの日を境に…

「じゃ、お兄様、着替えてくる!」

「…ああ、厚着してこいよ、外は寒いからな。」

思い出しなくないものが脳裏に浮かぶ。あと寝起きということもあって頭痛がする。階段を駆け上がっていく音が断片的に記憶がぐちゃぐちゃになっていく。

「やばいな…安定剤飲むか。」

いつもは母が夜飯の際、ご飯と一緒に市販の薬を出してくれていたのだが、探すのがめんどくさい。

そして階段を駆け下りてくる音が俺の三半規管を刺激する。

「お兄様!いこ!」

「ああ、もういいか。」

「何が?」

「所で俺と話すの何日ぶりくらいだ?」

「んーっとね」

首を傾げた。

「季節が1周したくらい!」

「そんなに経つのか。」

「そんな事どーでもいいから、早く行こ!」

つい苦笑いしてしまった。


どーでもいいか…

その言葉が心のどこかに引っ掛かかった。


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