第一話 二つの思い
…私たちの視界に入っている…績君。
でも、もう…私たちに、彼の歩いている姿を見せてはくれない…。
彼は、死んでしまったのだから・・・。
彼の死を告げたのは、心臓の振動を図るものよりも早く、病院の先生の口の方が早かった。
「…6月25日…3時…潤野 績さん、お亡くなりになられました…」
その言葉は、涙を流し、必死に
「目を覚ましてよ…ねぇ、潤野くん!!!」
と、そう言っている私には、届かなかった。
私の隣にいた、日下部君は、私の肩に手を乗せ、
「…もう…よせ…潤野は亡くなったんだ」
「…わかってる…でも、潤野くん…また、笑顔で、微笑んでくれるかな・・・って」
彼の顔は、見ていなかったからわからなかったけど、たぶん、泣いていた。
手には、悲しみが込められているのが、私もわかる。
「私が、まだ小学校の時…績君と同じ学校の同じクラスだった…それで、彼は、その頃よりも前からいじめがあってた」
そう、語りだしたのは、笹津さんだった。
そう、その原因は、私がまいた「潤野は、変態さん」だ。
私自身、彼のことを嫌っていたわけじゃない…。
逆に、彼のことを、好きでいた。
だから、他の人と一緒にいてほしくない、接してほしくない、私のそばにいてほしい。
そんな願望から生まれた、私の我が侭な言葉。
それが、彼を傷つけた。
だから、必死にもがいた。
でも…無駄に終わった。
彼女自身も、それに気が付いていたみたいだった。
だけど、止められなかった…。
言えば、潤野くんは、私を嫌い、話もしてくれなくなってしまうかもしれない…。
だから、潤野くんにだけは、伝えていなかった…。
単純に、彼なら私を今でも許してくれたかもしれない。
彼を、二度と傷つけることはなかったかもしれないのに…。
言えなかった…。
「そして、そのいじめは…極悪非道なものだった…助けてあげたかった…でも、私ひとりの力じゃどうしようも・・・なかった!!!」
そう…それは、私も見ていた。
最初は、見て見ぬふりだった。
でも、体育館裏で、集団からの暴行を見たとき、自分を心底恨んだ。
どうして、あんなことを…
私さえ、あんなことを言わなければ…彼は…。
「…そして、そんな月日が経って…私は、親の都合で、引っ越すことになった」
思えば、突然の引っ越しだった。
「その時に伝えよう、私の気持ちを…助けられなくて、ごめんなさいと…」
と、彼女は一つ間をあけて
「そして、私の思いを」
このときに確信をした。
というよりも、させられた。
彼女は、彼、潤野 績くんが好きだったことを。
「でも…チャイムで、遮られ、思いは、績君には届かなかった…」
「それでも…今なら言える、今この場所で、皆がいても、私の気持ちを、績君に伝えられる!」
「私は、潤野 績君が好き…大好き…好きで好きで堪らない…離れていても、私の心は、いつも績君に向けられていた…」
その時だ。
「「私は、貴方のことが好き」」
完全に完璧にハモった。
私と笹津さん。
二人の思いは、もう、いない彼に届いただろうか…?
前回のコメコイの続編で、視点は、ほぼ由愛か千早です。
中心的な話は、二人の思いです。




