無くさぬものに祟りなし。
耳元で謎の声が話しかけてきた。
「ねぇねぇ。ねぇねぇ。」
その声は中性的な声で遠いような近いような音量だった。
「ねぇねぇ。ねぇねぇ。」
ずっと話しかけてくるので私は声をかけた。
「だれなの?ねぇ、だれなの?」
しかし、声の主はずっと同じ言葉しか発しなかった。
私はその声の行方を探した。
壁や机の裏や玄関など探したが声だけが付いてくる。
しかも、同じ言葉の、「ねぇ」しか発しない。
不気味な声から逃れたい為、友人に電話かけた。
受話器から友人が私に話しかけた。
「どうしたの?」
私は必死に今ある状況を説明した。
友人は説明に対して応えた。
「だから、なんなの?さっきから、ねぇ。ねぇ。って
何いってるんの?切るよ?」
友人から電話が一方的に切られ、私は怒りを覚えて、もう一度電話をかけた。
すると、友人が電話にでて怒りをぶつけた。
「なんできるの?ねぇ。ねぇ。ってなによ!いい加減にしてよ!」
しかし、友人は意味不明な言葉で訴えかけた。
「さっきから、ずっと、ねぇ。ねぇ。ってなんなのよ!だから、何が無いのよ?こんな真夜中に電話かけないでよね!切るよ!」
電話が切れた。
私は不思議に思った。
今は真夜中じゃなくて真昼なのに。
もう一度、電話をかけると知らない男の人が電話に出た。
そして大きな声で
「おまえじゃねぇ!」
と罵声とともに電話がきれた。
私は唖然としてると又、耳元でクスクスと
「ねぇ。ねぇ。ねぇ。」
と女性の声が聞こえた。
しかし、奇妙な事に、その声の主は友人の声に微かに似ていたことを。