魔王が○○を始めましたシリーズ 『魔王がファミレス店員始めました』
勇者たちのパーティーはついに、魔王ベルゼブルのいる魔王の間にたどり着いた。
天地を揺るがすような激しい戦いが行われ、魔王ベルゼブルはついには、最終形態である第5形態にその姿を変えた。
「おおおおおっ!?ここまで来て、第5形態かよ。」
とにかく戦うしかないだろう。とりあえずテンション上げと、攻撃力と守備力を上げる呪文は唱えておく。
しかし、魔王ベルゼブルは、いてつく波動を放ち、呪文の効果をかき消す。
「こうなったら…。」
会心の一撃狙いの一発をお見舞い!
ズガッッ!!
見事、会心の一撃!!
「そーれ!」
実は魔王ベルゼブルの急所は、眉間だった。
勇者は、いちかばちか、急所めがけて伝説の剣を投げつけた!
ドガッッ!!
見事、急所に命中!!
ドッカーン!ちゅどーん!
「どぎゃひえーっ!」
魔王ベルゼブルは砕け散る。
「我が名は魔王ベルゼブル…、
その私が、こんな形でお前たちに敗れるなど…。」
肉体は既に無く、魂だけとなった魔王ベルゼブル。やがてその声も、消えてゆく。
「やったぞ!やったぞ!」
勇者たちのパーティーは勝利を喜ぶ。一方、魔王ベルゼブルの魂はその後…。
「はっ!?ここは…?」
気がつくと魔王ベルゼブルは人間の姿に。
そして手には、先ほどお客さんから注文を受けたチーズハンバーグを持っている。もう片方の手にはライスを持っている。
「ここは…、思い出せない、俺は今までいったい…。」
そこに、女店長という人物から、どやされる。
「ちょっと!何ボーッとしてるの!チーズハンバーグは、あちらのお客さんに持っていくんだよ!」
「あ、そうだ、そうなんだ、わかりました…。」
どうやらそこはファミリーレストラン、通称ファミレスという所らしい。
そして魔王ベルゼブルは、そのファミレスの店員になっていた。
何がなんだか、いきなり何が起こったのかわけのわからないまま、
しかしそれでも、ファミレス店員となった魔王ベルゼブルは、どうにか注文のチーズハンバーグとライスを、指定のお客さんの所へ持っていった。
「どうぞ、チーズハンバーグとライスです。
ご注文の品は以上でよろしいでしょうか、こちらは伝票になります。」
その場はどうにかやり過ごしたが、やっぱり、何が起こったのか、どういう経緯でこのようなことになったのか、訳がわからなくなっていた。
しかしそれにしても、かりにも俺は天下の魔王ベルゼブルだぞ。
魔界では部下の魔物たちを付き従えていたこの俺が、ファミレスで店員としてこき使われなければならないとは…。
しかもあの女店長に…。と思ったら、無性に腹が立ってきた。
そしてその日は、食器洗いをさせられた。まったくなんで、魔王である俺がこんなことに…。
そして、後で気がついたことだが、このファミレスの店名が、なんと!
『魔王のファミレス サイゼリウス』というらしい。
ちなみにサイゼリウスという言葉には特に意味はなく、創業者の思い付きで名付けられたらしい。