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アンノウン・Bouquet  作者: あやかわ
1/7

プロローグ


午前零時。


雨が降っている。

ざぁーざぁ…と。


真っ黒な色の海に降り注いでいる。


そんな海の上にコンクリートでできた道を俺は歩く。


「もう、疲れたなぁ…」


俺は生きることに疲れていた。

ただ、生きていても次から次へとやってくる。

辛いこと、重い責任。

歳を重ねるごとに重くなる。

当然といえば、当然だ。


「そんなこと分かっているっての」



世の中が決めた基準に沿って生きてる人…つまり普通の人は、普通にそれを乗り越えていく。

だが、その基準に沿ってない一部の人間には。

それが辛くて、苦しくてしょうがない。


俺はその基準に沿ってない人間だ。

いや、別に毎日、全く楽しいことがないわけじゃない。

そりゃあ、昨日はとあるアプリゲームのガチャで前から欲しかった最高レアのモンスターが手に入ったし、一昨日は探していた漫画が購入できた。

家族と楽しい話をした。

友人と楽しく遊んだりした。


他にも上げたらキリがないほどある。


だが、それと同じくやってくる不幸や不安、責任。

それらが、どんなに楽しくてもすぐに塗り替えてくる。


俺はそれから逃げたかった。

小学生の時も、中学も、高校も、専門も、社会人になってからも、必ず思っていた。


そして死にてぇ、死にたい、消えたいと何度も思っていた。

自殺も考えた。

でも、死のうと思う時に限って決意が揺らいで結局、生きてきた。


「それで得た答えは、ただ心臓が動いてるから生きてるんだなってことだった」



つい、口に出してしまった。


が、周りには誰もいないし別に良いかぁ。


雨が降る中、傘もささずに雨に打たれながらiPodで好きな音楽を聴いていた。

俺が中学の頃から好きなバーチャルアイドルの曲。


苦しい時、辛い時、逃げたい時はいつも励ましてくれた彼女の声。

楽しい時、嬉しい時、ワクワクする時はより盛り上げてくれた。



まるで、その彼女がずっと一緒にいてくれているような…。



「はぁ…」


もし、本当に隣にいてくれているなら。

「彼女の目の前ですごくカッコ悪いことをしているなぁ…」


つくづく自分が嫌になる。

心底そう思った。

すると、それは後押ししてくれた。



なんとなく察している人もいるかもしれないが、俺は今、この真っ暗な海に飛び込んで死のうと思っている。



ちょうど今、聴いている曲が演奏を終えた。

俺はiPodを操作して再生ボタンを切る。

そして胸ポケットにイヤホンごと入れた。


「すぅ…」


深呼吸。

人生で最期の深呼吸。

口の中には空気と少量の雨が入ってきた。


俺は歩み出す。

死へと向かって。



結局、20年間生きてきた俺は何の成果も残さずに終える。

こんなクソみたいな人間はさっさと消えよう。





最後の1歩踏み出す。


コンクリートの道から海へ。

片足から落ちていく。






















はずだった。
















「駄目っ!!」


その声の高く天に登るような綺麗な声は1人の男の命を繋ぎ止めた。



物理的に俺の体を背後から引っ張って。





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