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Gift~神からの贈り物~  作者: 縫月
8/25

level.3 その1

マージュに連れられ村の北の外れにある洞窟へと

やってきた


ここは天然の洞窟を利用した牢屋で奥はそんなに深くありません

そう言ってマージュは油を染み込ませた松明に火打ち石で火をつけ灯した


こちらです足元気をつけてください


薄暗い一本道の洞窟をゆっくり歩いていくとやがて広い場所に出た

よく見ると壁で遮られた鉄格子

ここが2人が閉じ込められている牢屋のようだ


エミリア…!


マージュが左の牢屋に駆け寄り親友の名を呼ぶ


うぅ…マージュ…

微かに弱々しい声でエミリアが反応した


大丈夫ですか?とレムが右の牢屋に向かって話しかけると

ぼくは大丈夫です…それよりエミリアをとセタロウは

エミリアを気遣った


この牢屋を開ける鍵はあるかい?

ロイがマージュに尋ねるとマージュは左の服のポケットから

鍵を取りだし鍵を開けようとした


そのときエミリアが開けないでと懇願した


どうしてなの?

レムが悲しい顔で尋ねると


ここを出てしまったら村の長達は彼を受け入れてくれない

わたしたちの関係を認めてくれない…

そう涙ながら訴えた


どうして…

この村じゃなくなった生きていける

何でそこまでしてこの村に拘るんだ


ロイは拳を震わせながらエミリアの真意を問う


たとえここを出てどこかへ行ったとしても同じです

彼は神託者わたしはグリンローグの民

決して周りは認めようとしないでしょう…

人は自分達と違うものを受け入れがたいものです


彼女の言う通りです

何を言おうとぼくはこの世界の人間じゃない

だから彼女は自分の産まれたこの村で

愛する村の皆に受け入れてもらおうと自ら選んだんです


同じ…同じ人間じゃないか…

ロイは思い出していた現実世界での自分を

家族を鬱陶しく思い社会に溶け込めずゲームに没頭していた

孤独な自分を

この2人の家族に受け入れてもらいたい

その真摯な想いに

家族と向き合おうとせず距離を置いてきたロイにとって

初めて自分が愚かだと思えたのだった


険しい道だね…ロイがそう言うと


エミリアは笑顔でわたしは愛する村の皆と一緒に乗り越えたいからと答えた


エミリアや…


後ろからエミリアを呼ぶ声がして振り返ると

そこには松明も持たず暗がりを手探りでそっと様子を見に来た

長の1人が立っていた


クーロ様…マージュが驚いて松明を落とす

それをそっと拾い上げクーロは言った


エミリアや許しておくれ…

お前がそこまで村の者を想っていてくれたとは

儂らが愚かだった

儂らはお前を愛するばかりにこんな酷い仕打ちを…


どういう事ですかとロイが尋ねる


エミリアは17年前のある日村に捨てられた子なんじゃ

最初にこの子を見つけたのは儂だった

それから儂ら村の者一丸となって育ててきた


そんな…両親は赤子の頃に病で亡くなったって…


子供に罪はない

儂らはお前が捨て子だと知るとどんな想いをするか

想像しただけで辛かった

だから当時の村の者は今後一切口に出さぬよう誓い

お前の成長を見守って来たんじゃよ


それなのにどうしてこんな仕打ちを

マージュは怒りと悲しみでいっぱいになっている


怖かったんじゃ

皆お前がいとおしくて仕方なかった

そんなお前がふらっと現れた異界の人間と恋仲となり

この村を捨てどこかに行ってしまうのではないかと

不安でどうしようもなかった…

そこでお前が諦めてくれるまで暫しここに2人を閉じ込め

仲違いさせようと皆で決めたのじゃ

だが今さらながら気付かされてしまった

浅はかだった…すまない


そう言ってクーロはその場に倒れ込んだ


ぼくのせいでこんなにもエミリアを愛してる人達を苦しめていたなんて

セタロウはクーロの言葉に改めて異界の者であることを

想い知らされたしかし


長様ぼくもエミリアも

もとよりこの村を離れるつもりはありませんでした

それに長様の今の言葉を聞いてぼくはエミリアを愛し

エミリアが愛するこの村が大好きになりました

確かにぼくはこの世界の人間じゃない…でも

彼女を愛する気持ちに違いはありません!

エミリアはぼくと村の皆を繋ぐ絆なんです


セタロウ…

エミリアは嬉しさのあまり涙が止まらなかった


クーロ様きっと変われます…

家族ですもの


そのマージュの言葉にクーロが静かに涙を流した

ロイの横でレムも泣いている


うん…やってけるよ


それからエミリアとセタロウは解放され次の日の朝

村の皆を集め事の経緯を話したクーロによって皆に受け入れられた


ロイさんレムさんありがとうございました

マージュがお礼を言う


いや自分達は何もしてないよ

エミリアとセタロウの想いが皆の心を動かしたんだよ


うんうん


いえお2人が居たからマージュさんもぼくらのために動いてくれた

お2人のおかげです


本当にありがとうございました


セタロウとエミリアも感謝してもしきれないという感じだった


2人とも幸せに…

この村でならきっとやっていける

ロイは笑顔で祝福する


ありがとうございます

ぼくはこの世界に来て良かったです

最初は元の世界に帰りたかったけどこの世界で自分の居場所

そして大切な人と出逢えた

だから良かったです

そしてセタロウはこの村でエミリアと生きることが

自分の成すべき事だと言った


自分の成すべき事…

あの声を思い出しロイは思った

この世界で自分の成すべき事は何なのかと


こうして2人は村の皆に見送られながら村を後にしたのだった

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