level.1 その2
セルフィを拠点に近場を探索していたロイとレムの2人は
ある異変に気付く
道の途中から結界が張られておりそこから先に
進むことが出来ないようだ
2人の推測からこの大陸は結界により
分断されていると思われる
その意図は分からないがセルフィに住む人の話しからして
恐らく3つの結界で隔てられている
3女神…それが結界を解く鍵になっているだろうと
ロイはレムに語った
街の人の話しではここから一番近いのは
東に1週間ほど歩くとあるラーマの泉だという
そこに水の女神アイシスが眠ると言うのだ
ゲーム時代セルフィを拠点としていた2人には
そこに泉などなかったことを知っているが
まずはそこを目指す事にした
だが何が起こるか分からぬ未知なる状況を懸念するロイは
レムに仲間を集める事を提案する
あてはあるの?とレムが聞くと
自分達と同じくこのセルフィを拠点にしていた
グリンローグ最大のチーム『アルバトロス』とロイは口にした
数少ない大規模なチームの一つで
6人で1チームだったゲーム時代
13のチームをギルドとしてまとめあげたのが『アルバトロス』である
そのアルバトロスのトップに君臨するのがゼロスという男で
そのゼロス率いる円卓の騎士と呼ばれる12人が
アルバトロスを支えていたのだった
彼らと組めれば攻略出来るだろう
だが不安要素もあった
とりあえず逢いに行ってみようよとレム
ロイは不安を拭いきれぬまま2人で街の中心にあるアルバトロスの館へと
向かうのであった
高い塀により大きな円で囲われその中心にそびえ立つまるで城のような館
その館に続く入り口の門には剣を携えた2人の男が立ち並んでいた
門番であろう2人
1人は30代くらいの屈強な男でもう1人は10代後半くらいのオドオドした感じの男だった
ロイが屈強な男にゼロスに逢わせて欲しいと頼むと
一言帰れと言い放ち静かに睨み付け立ち塞がった
ロイは堪らず今自分達がおかれている現状
この世界に起きている異変を唱えても興味がないと
まるで聞く耳を持たれなかった
その時黙って聞いていたオドオドした男が口を開く
ぼ、僕は彼の言うようにおかしいと思う!
気付いたらゲームの世界に居て現実では死んでるみたいな事言われて
皆それを受け入れて今までと変わらずおんなじ事してて
おかしすぎるよ!僕は家に帰りたいんだ!!
オドオドした男の勢いに屈強な男は呆気に取られていた…
しばらくすると屈強な男が
俺だってほんとは帰りてぇ嫁も子供も心配で仕方ねぇよと
本音を洩らす
コイツのいう通りその女神ってのに逢えば何か分かるのかもしれねぇなぁ
帰る方法だってあるかもしれねぇ
そう言うと門に手を掛け力いっぱい押した
門はギギギ…と鈍い音を鳴らし開いていったのだった
逢ってきなウチの大将によ
オドオドした男も笑顔でどうぞと手をぱたつかせる
ありがとうございますとレムが会釈すると
いいって事よと屈強な男が照れくさそうに鼻の下を指で擦っていた
こうして2人は館へと足を踏み入れたのだった
館に入ると広いフロアに左右には螺旋階段
漫画で見るような大金持ちの屋敷のようでその荘厳さに
2人は一気に緊張してきた様子
その瞬間
ちょっとちょっと君たち誰よ?
ここは関係者以外立ち入り禁止だよ
騎士のような格好をした青年が慌てた様子で近付いてくる
そこでロイとレムは先程の説明をしゼロスへの謁見を改めて求めた
(まぁ彼が通しちゃったなら仕方ないか…)
騎士の青年はこっちだよと2人をゼロスのいる
中庭へと案内したのだった
中庭に着くと椅子に座り紅茶を飲む1人の男の姿が見受けられた
その男に近付きヒソヒソと話す騎士の青年
そして男がこちらを見て一言紅茶は好きかね?と尋ねてきたので
2人は思わずハイ!と答えると
此方の椅子に掛けたまえと招かれたので挨拶をしそのまま椅子に腰掛けた
早速だが質問は私からさせてもらおうとゼロスが言う
それに対しロイは何なりとと答えた
では答えてもらおう貴様らはギフトを持っているか?
その質問に2人は???となる
質問の意味が分からないとロイが言うと
いいから答えろとゼロスが言うので2人とも持っていると答えた
ふっ…そうかさすがはナイト·ウォーカーか
俺らのこと知っているのか
当然だ…この街のチームの情報全て入手していたわ
そして貴様らが尋ねてきた理由も周知の上よ
アルバトロスの情報網を舐めるなよ
するとゼロスは立ち上がり続けざまに
女神については我々もパーティーを組み遠征し調査する予定であったと告げた
そしてパーティーに入れてやる代わりに条件を飲めと言う
その条件とは…
レムのアルバトロスへの加入だった
ロイの不安とはまさにこの事だった
その娘の事は広く知れ渡っていたからな
【祝福】我がギルドも欲するギフトだ
レムは怯えてロイの袖をぎゅっと握り締めている
それに応えるようにロイはその条件は飲めないとはっきり告げた
愚かだな…
今やあの頃と違い6人という縛りもなくなりアルバトロスも
正式にギルドとして成り立っている故
最大限守られた環境の中 生きられるのだぞ
確かにと思う所もある
ゲーム時代レムは多くのプレイヤーに苦しめられてきたからだ
だがロイにとってナイト·ウォーカーのメンバーは誰1人
掛け換えのない仲間だとゼロスに気持ちをぶつけた
するとゼロスは
まあいい貴様らの実力を直に見てから改めて決めると言う
大きな力も弱者が持ったところで意味を成さぬからな…と
最後にロイは最初の質問の意味を聞いた
ゼロスは答える
全ての者がギフトを宿している訳ではない
多くのプレイヤーはギフトを失っているのだよ
ギフトを持つ者こそ真に選ばれた者『神託者』なのだよ
では明日の朝日の出と共に出発する
集合場所は街の東口くれぐれも遅れぬように
そう言い残しその場を後にした
ロイは新たな不安を抱えつつ出発の朝を迎える事となるのであった