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だって僕はNPCだから  作者: 枕崎 純之助
第一章 『闇の魔女』
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5話 「取り残された男」

 アップグレード後からこの洞窟を訪れるプレイヤーの人数は3倍以上にふくれ上がり、僕もミランダも自分の仕事をする時間が増えた。

 必然的に二人の会話の時間は減ってしまったけど、それでも僕はミランダが活躍をする姿を見られるのが嬉しかった。


 このゲームでは戦闘を行うことの出来るプレイヤーやNPCは共通して三種類の魔法やスキルを実装することが出来る。

 下位、中位、上位の3つのわくに魔法やスキルを自分で選んで割り当てる。

 少ないけれど、その限られたわくに色々な魔法やスキルの中から自分に合ったものを選択して組み合わせる、というシステムが結構な人気をはくしているらしい。


 もちろん最初から誰でも強い魔法やスキルが選べるわけじゃなくて、レベルが上がるにつれて選択できる種類が増えていく。

 スキルの組み替えも自由自在だ。

 闇の魔女たるミランダは3つのわくのうち下位魔法に実装している『黒炎弾』(ヘルバレット)と呼ばれる闇の炎を火球状にして打ち出す闇属性の魔法を連発してプレイヤーたちを苦しめていた。


 そして彼女の装備武器である『黒鎖杖(バーゲスト)』。

 この杖の先端には漆黒の鎖が取り付けられていて、伸縮自在のそれがプレイヤーたちを打ちのめし、縛り上げては葬り去っていった。

 さらにミランダのような高レベルのキャラクターは、3つのわくの他に4つ目のわくとなる特殊魔法があり、特定の条件でのみ発動するという縛りがあるものの、その威力は絶大だった。

 当然、このわくにはミランダの伝家の宝刀である『死神の接吻』(デモンズキッス)が実装されている。


 そしてアップグレードによって『死神の接吻』(デモンズキッス)は発動条件などに変更が加えられていた。

 相手の息の根を止める確率が50%から33%に減退したものの、それまで彼女の体力が3分の1以下までに減った場合にのみ発動する条件だったのが、体力が半分になった時点で発動するように調整された。

 これによりミランダは戦闘中、以前よりも早い段階で『死神の接吻』(デモンズキッス)を繰り出すようになり、プレイヤー側は魔法の効果が2分の1から約3分の1に減ったという利点はあるものの命の危険にさらされる時間が長くなる。

 よりスリルと緊迫感を演出することができるってことらしい。

 とっつきやすさを増すことでミランダはよりメジャーなイメージを持つようになっていて、彼女自身がそれを楽しんでいることは僕にとっても嬉しいことだった。


 ちなみに僕はアップグレード後もまったく変わりえのない冴えないキャラのままだ。

 戦闘に参加しない一般NPCだから実装できる魔法もスキルもないしね。

 アップグレードから取り残されて何一つ変更点がないって一般NPC軽視もいいところだと思わない?

 セリフの一言一句まで以前と変わらない僕を見て、ミランダは勝ち組が負け組を憐れむように感想を漏らした。


「成長しない男ね」


 ……僕のせいじゃないですよね?

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