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だって僕はNPCだから  作者: 枕崎 純之助
第四章 『城下町紛争狂想曲』
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9話 「光と闇と」

 剣と杖のぶつかり合う硬質な音が響き渡る。

 リードの振り下ろす剣をミランダは黒鎖杖バーゲストで弾き返した。

 体力・魔力ともに少なくなったミランダなら組し易しと考えたのか、果敢かかんにミランダを攻め立てるリードだったけど、彼女のしぶとさに業を煮やしたのか後方へ下がっていく。


「逃げるな!」


 ミランダはそう叫んだけど、入れ替わりに襲い掛かってくる他のプレイヤー達が邪魔でリードを追撃できない。

 ミランダの後方ではジェネットが残り少なくなったプレイヤーたちを次々と打ち倒していた。

 高レベルのプレイヤーたちは各々得意とする武器や魔法を用いてジェネットに襲い掛かるけど、彼女は下位スキル『清光霧』(ピュリフィケーション)を駆使して的確に一人一人を倒していく。

 属性が光側に振り切れているジェネットの神聖魔法『清光霧』(ピュリフィケーション)はそのあまりの純度の高さのため、属性が少しでも闇側に傾いているキャラクターでレベルの低い者たちは、その霧を吸うと瞬時にショック状態となって戦闘不能に陥っていった。


 しかし『清光霧』(ピュリフィケーション)は光側の属性を持つ敵には効果が薄い。

 そうした相手にはジェネットは懲悪杖アストレアを使った白兵戦で対処するけど、ここまで生き残っている相手も並の敵じゃない。

 そんな敵を多数向こうに回しての近距離戦闘となるとジェネットも苦戦を免れなかった。


 当初は手柄を自分のものにするべく各々勝手に武器を振るっていたプレイヤーたちもここにきて連携を見せるようになり、ジェネットは次第に追い詰められていく。

 そしてついにジェネットは背後をとられてしまい、プレイヤーの凶刃が彼女を襲った。


「危ないっ!」


 僕がそう叫んだその時、真っ黒な炎の塊がそのプレイヤーを直撃した。

 プレイヤーは断末魔の叫びを上げながら黒コゲになって倒れていく。

 その隙にジェネットは前方の相手を懲悪杖アストレアで弾き飛ばすと後方へと素早く飛び退すさって距離を取った。

 そして驚いた顔で、黒コゲになったプレイヤーのむくろに目をやる。


 そのプレイヤーを打ち倒しジェネットを窮地きゅうちから救ったのは、ミランダの下位魔法『黒炎弾』(ヘルバレット)だった。

 ジェネットは前方を向いたまま、自分の後方に注意を払う。

 そこにはミランダの姿があった。

 まさかミランダがジェネットを助けるなんて……。


「……どういう風の吹き回しですか?」


 隙を見せず警戒した表情でそう言うジェネットに、ミランダは仏頂面ぶっちょうづらで言葉を返した。


「あんたのことは大嫌いだけど、あいつに免じて一時休戦してあげる」


 ミランダの言葉にジェネットは少しの間、黙っていたけど、やがて微笑を浮かべた。


奇遇きぐうですね。私もあなたは嫌いですが、あの兵士様の仇を討つためなら共闘も辞さないつもりです」


 そう言うと二人は残りのプレイヤー達に挑みかかっていく。

 す、すごい。

 あの二人が一緒に戦ってる。

 水と油みたいに相容あいいれないあの二人が。


 ミランダの攻撃が光側のプレイヤーを滅ぼし、ジェネットの攻撃が闇側のプレイヤーを葬る。

 二人の共闘は思った以上の相乗効果を生み出し、プレイヤーたちは次々と人数を減らされていった。

 もはやその数は目視で数えられるほどまでになっている。

 後方でリードは仲間から回復魔法と補助魔法を受けながら、ミランダとジェネットの奮闘に怒りとあせりをつのらせて顔をゆがめていた。


「くそっ! これだけの数がいてたった二人を倒せないのかよ!」


 リードは忌々《いまいま》しげにそう吐き捨てた。

 残った彼の仲間たちもいよいよ不利になった戦局に、顔を見合わせて退却すべきかどうかを口にし始めていた。


「やばいぞ。リード。このままじゃ負けちまう」


 不安げにそう言う仲間の胸倉むなぐらつかんでリードは声を荒げた。


「馬鹿野郎! これだけの物量で敗北なんてことになったら俺たちの面目は丸つぶれだ! 次のアップデートで降格されちまうだろうが!」


 その時だった。

 街の一角で大きなどよめきが上がったんだ。

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