第四話 竜との邂逅
今回かなり短め
「うぉおおお‼︎」
「きゅいぃぃ‼︎」
俺と兎は現在、森の中を全力疾走していた。
理由は簡単。
「「「グルゥルゥオォ‼︎」」」
三体の灰色の狼の魔物に追われているからである。
何故こうなったか、それは不慮の事故だった。
朝になり起きた俺は体を伸ばした。それから朝食を食べ、後片付けをして、また森の中を進んでいった。
そして、朝の気持ち良い空気の中歩いていると何かを踏んで滑った。
何を踏んだのかと見るとそこには灰色の狼がいた。
俺が踏んだのはその狼の尻尾だったのだ。
そして、怒った狼とその仲間によって俺たちは追い回されている。
……ついてねぇ‼︎
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灰色狼から逃げ切り、木の陰に隠れながら休む事が出来た。
「ふぅ……危なかったな。もっと周りに気を配りながら進まないとな」
「きゅうぃ」
気が緩んでいたと思い、気を引き締めて木の陰から出て移動を再開……
「ウゴッ⁉︎」
……出来なかった。
移動を再開しようとしたところ、木の陰を出た先に背中に棘がいくつも生えたゴリラがいた。
『警告:あれはニードルコングという魔物です。ランクはDです』
……え?D?それって……どれくらい強いのかな?
『返答:スキル[鑑定]でステータスを見ることが出来ます』
エイさんの発言に従いスキルを使う。
すると、驚きの結果が出た。
それは……
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##### ♂ ニードルコング
称号:野生
HP:250/250
MP:200/200
攻撃:227
守備:186
俊敏:265
○特殊能力○
種族:ロケットニードル
種族:ニードルスピン
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……終わった。勝てるわけがない。
ニードルコングは俺のステータスの五倍よりも更に高いステータスをしていた。
「……に」
「ウゴッ?」
「逃げるぞぉおおお‼︎」
「きゅいいいいい‼︎」
ステータスを見た瞬間、俺は叫び逃げる為に走る。兎も俺の後ろを懸命に付いてくる。
「うおおぉおお……お⁉︎」
だが、今日の俺はついてない。
何故なら目の前に先程の灰色狼がいたからだ。
向こうも俺を憶えていたらしく、唸ると俺に向かって走って来ようとして……方向転換して逃げ出した。
何故逃げる⁉︎
俺は不思議に思ったがすぐに答えはわかった。
俺の上を何かが飛び越えた。
そして、目の前にその何かが降り立つ。
それは、先程のゴリラであった。
ゴリラはこちらに振り向くと獰猛な笑みを浮かべる。
「くそっ……やっぱり逃げれないか」
俺はゴリラが降り立つ一瞬前に反射的に急ブレーキをかけて止まっていた。
その為、今俺とゴリラは五メートル程距離を取って向き合う形になっている。
「ウッゴ、ウッゴ‼︎」
ゴリラが拳で胸を叩く。所謂ドラミングである。
……確かドラミングって興奮してる時にやるんだよな
そんな事を思っているとゴリラが一旦身を屈めると勢い良く跳び上がる。
そして、空中で前転し始めると、どんどん加速して行く。
俺が呆然と見ていると、超高速回転するゴリラがこちらに向かって飛来する。
「なっ⁉︎」
俺は反射的に兎を抱え右に跳ぶ。
すると、俺がいた場所にゴリラが落ちて、そのまま数メートル程進んで行って止まる。
ゴリラが進んだ跡は地面が抉れていた。
……もし、躱していなかったらと思うと、背筋を冷たいものが伝う。
俺が戦慄しているとゴリラが起き上がる。
俺はゴリラがこちらを向く前に急いで走る。
逃走あるのみ‼︎
しばらく全力疾走して手頃な木を見つけるとその陰に隠れる。
そうして、周りを警戒するがどうやらゴリラは追いかけてこなかったようだ。
「ふぅ……何とか逃げ切っ」
『お主、何者だ?』
「……⁉︎」
ゴリラから逃げ切った、そう思った矢先、声を掛けられる。いや、声とは違うだろう。なんというか頭に直接響いてくるような、エイさんの声の響きに似た声だった。
恐る恐る後ろを振り向くと、そこには……竜がいた。
『これ、聞こえておるのであろう?聞かれたことを無視するでない』
俺が呆然としていると、竜が俺に質問に答えるように言ってくる。
「え、あっ、えっと……俺が誰かだっけ?」
『うむ、そうだが……女子なのに自分のことを俺と呼ぶのは、どうかと思うぞ』
えっ、そこにツッコむか?
竜の思いもよらないツッコミに驚きつつ、死んでからこの場所に来るまでの経緯を話す。
「……というわけなんだが、信じないよな?」
そう、最後まで言って気付いた。幾ら何でもこんな話信じてもらえるわけがないと。
因みに話ながらこの竜のステータスを見たのだが……ありえない強さだった。
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ガーデ ♂ 樹竜[古竜]
称号:大森林の主
HP:4768/4768
MP:4789/4789
攻撃:4786
守備:5795
俊敏:3766
○特殊能力○
種族:竜眼
種族:竜術【樹】
人化
念話
人語理解
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俺の話を聞いて何を思ったのか、竜は前脚で顎をかく。
そして、前脚を下ろすと話し出す。
『ふむ、信じられない話ではあるがありえない話ではない。理由としては勇者召喚があることから別の世界、異世界があることは確実であるし、神くらい実在するだろう。それにしても……お主は災難だな。神にはミスされるわ、森では襲われるわ、運の値があったらきっとマイナスだろうな』
そう言って竜は笑う。
『くくくっ……よし、決めたぞ。お主に知識と戦い方を教えてやろう』
「……はっ?」
竜は一頻り笑うと提案、というかほぼ決定事項のようなことを言う。
俺の意思はどこいった……
そんなことを思いながらも理由と話し殆どこれからの予定が決まって行く。
そして、話が終わろうとした時であった。
「貴様、ガーデ殿から離れるで御座ります‼︎」
そう言いながら黒髪ポニテの女性が槍を構えて突っ込んで来た。