第三話 冒険者の街へ
もう少し早く投稿するつもりが、まさかのミスで全部消えたので、遅くなりました。
俺は部屋の扉を開ける。
すると、そこには森が広がっていた。
えっ……ちょっと待って?ここ、山の麓なんだよね?なんで森が広がっているんだ?
俺がその光景に混乱していると[叡智の声]さんが教えてくれる。
『返答:ここは確かに山の麓ですが、同時に森の中でもあります。山の麓に森が広がっているのです』
成る程……そういうことなら納得だ。
よし、じゃあ行くか。
『質問:ところで、どちらへ向かわれるのですか?』
……すいません、決めるの忘れてました。
えっと、冒険者になるにはどこに向かうのがいいですかね?
『返答:ここからでしたらセントリア国にある冒険者の街〈トレジオ〉が良いと思います』
ふむ、成る程。じゃあ、そこへ行きますかね。
気を取り直して、〈トレジオ〉へいざ、出発‼︎
『提案:あと、私のことは長いのでエイとお呼びください』
……はい、わかりました。
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小屋を出発してから俺は[叡智の声]さん改め、エイさんのナビゲートに従い森の中を突っ切っていた。
……それにしても、暇だ。特に何かあるわけでもなくただ歩いているだけである。
もうちょっと何かないかなぁ……
そんなことを思っていると進行方向に何かがある。
近付いて見てみるとそれは足先だけ白い赤色の兎だった。
その兎がボロボロに傷付いて、倒れている。
おいおい、コレはヤバいのではないか?
そう思い俺はエイさんに助けを求める。
『返答:[魔術【聖】]を使えば良いと思います。やり方は今送ります』
エイさんがそう言うと直後また、俺の頭の中に情報が流れ込んでくる。
……うん、二度目でも慣れないなコレは。
そんなことを思いながら俺は情報通りに兎の側に正座して、兎に手を翳して傷を癒すように考える。
すると、俺の掌から暖かみのある光が出て兎を包み込む。
暫くして光が散るとそこには無傷の兎がいた。
どうやら、成功したようだ。
俺が安堵していると兎が目を覚まして起き上がる。
そして、俺に気付いて青い瞳で見上げてくる。
「えっと……大丈夫か?」
「きゅいっ」
俺が質問するとそれに兎は元気良く答えてくれる。
よかった完治したようだな。
「何があったかは知らないけど、以後気を付けろよ」
俺はそう言うと立ち上がり、森の中の行軍を再開する。
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そして、兎と別れてそこそこ時間の経った現在、俺の腕の中にはその兎が抱えられていた。
いや、だって仕方ないのだ。
あの後、俺は引き続き森を突っ切る為に森の中を歩いていた。
だが、その後ろを兎がずっと付いてくるのだ。
俺が立ち止まれば止まり、俺が進みだせば進む。
そして、俺はその可愛さに負けて兎を抱き上げ、一緒に歩くことにしたわけである。
にしても、この兎、モフモフフカフカで気持ち良い。
「あぁ、お前良いな……」
「きゅう」
そんな感じで歩いているとある事が気になった。
兎は何故あんな所であんなボロボロだったのだろうか?
『返答:推測ですが、恐らくこの森に生息する他の魔物に襲われたのではないかと思われます』
うぉ⁉︎考え事してる時に急に言われるからびっくりした。
しかし、成る程……魔物、ねぇ。
やっぱりこの世界には魔物がいるのか。
『返答:はい、います。因みに今、貴方が抱えている兎もスマイルラビットという歴とした魔物ですよ。あぁ、スマイルラビットはこの世界では珍しい無害で、更には幸運の証として保護対象になっている魔物ですから、危険はないですよ、情報は今送りますね』
エイさんから送られてきた情報によると確かにこの兎はスマイルラビットという魔物のようだ。
だが、一つおかしな点がある。
それは、普通のスマイルラビットは臆病で人には近づかないらしい。しかも、色はピンクらしい。
はて、この相違点はなんだ?
『返答:それはその兎が亜種だからです。亜種は普通種と外見的差異があり、その個体特有の特殊能力が有ります。それと、何故貴方が触れるかというと、貴方が命の恩人だからです』
へー、そういうことなのか……
「お前に特殊能力がねぇ……一体どんなのなんだ?」
「きゅいっ」
俺が疑問に思い問うと兎は俺の腕をすり抜けて、地面に降り、少し前に出る。
「きゅぅ……いーー‼︎」
そして、息を吸うような動きをした後、叫ぶような鳴き声をを上げると息を吹く……代わりに炎を吹いた。
「えぇ……マジかぁ……」
その光景に俺は唖然とするしかなかった。
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俺は兎のパフォーマンスが終わるとエイさんにまた教えて貰って引火した炎を消火して、その場を離れた。
「お前、炎吹けるなんて凄いな」
「きゅいっ」
俺が兎を褒める言葉を言うと、兎は胸を張るような鳴き声を上げる。
お前は可愛いなぁ、と言いながら俺は兎を撫でる。兎はそれを気持ち良さそうに受け入れてくれる。
「おっ、なんか広くなってぇ……」
そうやって兎と戯れながらエイさんの案内で歩いていると、森の中にある開けた所が見えた。
……見えたのだが、そのには何やら半透明の青いゼリー状の丸い物体がいた。その数五体。
あれは、まさか……
『返答:分類スライム、種族名[ベーシックスライム]、通称スライムという魔物ですね』
へ、へぇー。あれってそんな名前なんだー……
そう、そこにいたのは見たまんまスライムであった。
あれ、どうしようか?
『提案:倒してしまいましょう。初めての戦闘にはもってこいの相手ですよ』
……そうですか。分かりました。
結論が出ると、俺は兎を足元に降ろして、長剣を抜き構える。
足元では兎も戦闘態勢を取っている。賢いなぁ、この兎。
一連の動きの間にスライムもこちら側に気付いたようでぷよぷよしながらこちらに近付いて来る。
……見た目可愛いな。
その姿に少し和んでいると、俺から二メートル程離れた位置まで近付いて来た一体のスライムが動きを止めてその場でぷよぷよしだした。
何してるのかと見ているとスライムは勢い良く俺に向かって跳ね飛んで来た。
「うぉっ⁉︎」
びっくりした俺は咄嗟に目を瞑り、長剣を振った。
すると、振った長剣に何かぶよっとした物が当たる感触があり、そのまま振り抜くと、後ろでべちゃっという音がした。
俺は目を開いて後ろを見るとそこには真っ二つになったスライムが落ちていた。
お、おぉー……やった、のか?
暫く見ていても動く気配はなかったのでやったのだろう。
『警告:まだ終わっていませんよ?』
俺が惚けているとエイさんが注意を促してくる。
それで俺はまだスライムは四体残っていることを思い出し急いで振り返る。
そこにスライムは……いなかった。
そこにあったのは焼け焦げた黒い何かが四つとその黒い何かのうちの一つを漁っている兎だけだった。
えーっと、これはつまりあれだ。兎が残りのスライムを倒したという訳だな、うん。
俺がその事実に呆然としていると兎が何かを咥えて戻って来る。
「ん?お前、何咥えてるんだ?」
咥えている物を受け取ると、それは半透明の薄い灰色のクリスタルの様な石だった。数は四つだ。
「何だ、このクリスタル?」
『返答:それは魔石です。魔石とは魔物から採れる魔力の塊です。魔石にはランクや属性があり、それらは魔石の採れる魔物と同じです。因みにその魔石は無属性のFランクの魔物であるベーシックスライムから採れたものなので無属性のFランクです。因みに魔物のランクは下からF、E、D、C、B、A、S、Xです。これは冒険者も同じクラス分けです』
なるほど、エイさんの説明によればこれは魔石というらしい。まぁ、魔物がいるのだから魔石くらいあるよな、うん。
それから俺の倒したスライムからも魔石を回収した。
因みに、回収の為にスライムを見ると魔石を残して無くなっていた。
スライムからはその体が素材として採れるのだが、倒すと魔力となって霧散してしまうらしい。その為、スライムの体は魔物自体のランクのわりに高価らしい。
回収後、森の中なので暗くなってからではまずいということで今日はこの開けた場所で野営することになった。
「でも、ここ森の中で魔物がいるのに野営してて大丈夫なのかね?」
「きゅう?」
そう、ここは森の中で、魔物がいるのだ。なのに野営していて良いのだろうか?
そう思っているとエイさんのこたえが来る。
『返答:大丈夫です。森の中などにいる魔物はその殆どが火を嫌います。その為焚き火をしていれば大抵は安全です』
そういうことなので、俺は木の枝を集めると、[精霊の友【火】]で火をつける。
それから、[収納]の中に入っていた何かの肉をこれまた[収納]に入っていた木製の持ち手のついた鉄の串に刺して火で焼いていく。
辺りに肉の焼ける香ばしい匂いが漂う。
……これに誘われて魔物が出たりして……
そんなフラグのような事を思ったが何事もなくその後も時間が過ぎ、俺は[収納]に入っていた寝袋で就寝した。
それにしても、[収納]便利だな。
因みに火は[精霊の友【火】]で消えないように出来た。