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憲治マジ切れ

 鍵の案内で町中をぶらぶらとする。

「この国で何かおかしいところはないか?」

「……人がいない?」

「及第点だな。俺らみたいな意思を持ったイキモノがいない。それが正解だ」

 鍵に手足が生え、前を歩く。

 鋏は宙に浮いており、メジャーは首に、ピンクッションは腕にそのままいる(、、)

「一応、この国には女王がいるんだが、そいつが仕事を放棄した。そのせいでこの国が停滞。その反動でイキモノが他の世界に渡っちまったのさ」

「鍵は?」

「俺も女王を何とかすべく頑張ろうと思ったけど、ワーウルフの爺に言われて俺を扱えるイキモノ捜しに別世界に渡った」

 ワーウルフの爺があの老執事なのだという。

「百年近く、ワーウルフの爺と旅してきたんだが、二十年前からあそこに居ついた。爺曰く『()を扱えるイキモノの匂いがする』ってな。

 不思議の国への扉をあの時計に隠して何人かテストしたんだが、全部駄目。お前で四十二人目。やっと見つけたぜ」

 微妙な数字だ。憲治はそう思った。

「てなわけで、お前の仕事は他の世界に繋がる扉を見つけて安定させること、この世界にイキモノを呼び戻すこと、それから女王を始末……じゃなくて退治すること」

「断ると俺は消えると」

「物分りがいいじゃねぇか」

 楽しそうな声色で鍵が答える。

「で、どうやって呼び戻すんだ? どうやって扉を見つけるんだ?」

「知らん」

 きっぱりと、ふんぞり返って鍵が言う。


 憲治は思わず絶句した。


「……おい」

「ここここ、こぇぇぇ!! 憲治そこまで怒るな!」

 右手でがしっと鍵を持ち、思わず詰め寄る。

「お前の顔、怖いんだから怒るな!!」

「やかましい! 知らないのに人を巻き込んだのか? このやろう」

「仕方ないじゃねぇか! 俺が出来た時には他の鍵はそばにいないし、開けられる扉はあそこだけだったんだ!! イキモノも少なくなってたしっ!!」

 憲治の言葉に反応して、右側で鋏もじゃきん、じゃきんと音をたてる。

「だから怖いっての!!」

 その瞬間、ピンクッションが己についていた針を目潰し(?)のように鍵に二つほど投げた。

「ピンクッション、んなことしちまったら、憲治が悲しむぞ。こう見えて道具は大事に使うやつだからなぁ」

 鋏がフォローにならないフォローをしてきた。

「だって腹立ったんだもの。憲治から仕事奪ってまでここに連れて来たくせに、何にも分かんないだなんて」

「それは同感だわ。でも、針を拾う憲治の身にもなったら?」

 メジャーまでもが呆れて言う。

「俺って針以下!?」

「当たり前でしょ」

「俺がいなかったらお前らに人格与えてないんだけど!?」

 そんな鍵の言葉を無視するように、鋏はまだじゃきん、じゃきんと音を鳴らしている。

「知るかよ、そんなこと。それに憲治にとってはお前よりもおれっちたちが大事だってこと知ってる?」

「分かったから!

 俺も宮殿に潜り込んだり出来るように頑張るからっ!! お願いだからこの国救ってよ!」

「断る」

「即答!?」

「だって、俺にメリットないし。縫い物も出来ず、編み物も出来ないんじゃデメリットしかない」

 しかもご飯すら調達が難しい。そんな状況で誰がやるというのか。

「分かった! 俺のほうで衣食住全部手配する! それからお前が縫い物や編み物もできるようにする!」

「……善処しよう」

「それでも善処なの? お前は鬼か!!」

「てめぇにそんなこと言われる筋合いはねぇよ!」

「まったく。鋏は短気なんだから。でも私たちも同意見だわ。憲治、裁縫以外何も出来ない子だから」

「と……とりあえずワーウルフの爺が使っていた部屋に行くから。そこをねぐらにする……これで駄目?」

「飯は?」

「分から……ななななな何とかしますーーー!!」

 分からないと言おうとした鍵を、鋏と憲治が脅した。


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