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第一章 5

 恍惚の表情で変態的な妄想を口走るミュイーストから逃げるように執務室の中に入り、バルブッチは扉の鍵を閉めた。

 有能なのは間違いないのだ。有能なのは……。

 にわかに疼きだしたこめかみを指で揉みながら、バルブッチはもう片方の手で、机の上の魔子無線機を取った。


「現地の機関員全員への通達だ。周辺住民を即刻退去させろ。プラピア様の『触媒』の準備ができ次第、作戦を第二段階へ移行する。以上」

「了解」


 通話を切り、肘掛け椅子にどっかりと腰を下ろす。

 これで、『計画』の第一段階はほぼ終了だ。

 無論、プラピアが企てた壮大な野望の、これはほんの序幕に過ぎないが。


 バルブッチは、机に備え付けの魔子論理演算機を起動させた。立体投影画面を立ち上げ、もう一度、ウィルナノーグ島の地図を確認する。

 理想的な龍脈の『結節点』は、島の南西部、海岸線から四・五キロメートル(二ヒッポ)ほどの内陸に位置する貧民街の地下深くで見つかった。島の北部にある火山群、そこへ通じる魔導有機金属流体の道の停留点だ。

 この場所では、温度差による流体の密度・物性の違いと、そこから生じる魔粒子仕事関数の違いによって、急激な魔力勾配が作られている。

 これだけ侵略して、見つけた『結節点』はたったの一つ。

 まだまだ先は長い。


 人工的な魔力勾配を作ることはできる。

 だが、それではだめなのだ。

 人工的な魔力勾配では、『第四世代魔粒子』の生成は望めない。

 それはエルタリートの魔力場理論でも予言されていたし、過去の実験でも実証されている。

 必要なのは、良質な魔力勾配なのだ。

 人の意思が――観測者の魔力が介在することなく、自然に作られた勾配なのだ。

 それがなければ、『悪魔』を殺すことはできない……。


 プラピアが企てた『計画』。

 それは、自分の中に植え付けられた『悪魔』を、自分ごと殺すための計画だった。

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