表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

お隣さんへご挨拶

長くなったので、この一連の話は2話に分かれます

 よっしゃぁーー!

 異世界に来て冒険をする。そんな心躍らせるシチュエーションに体中を熱い血が駆け巡る。

 結界石とハムマルとの遠距離思念通話を設定し、ダンジョンから外にでた。

 まずは、ダンジョンの出入り口がある森の探検からだ。食料調達部隊のゴブリン2匹を引き連れて探索していく。

 ……外に出て3分で後悔し始めた。こんなはずではなかった……

 道もないし、落ち葉で地面はふわふわとしてるし、急に滑ったりもする。

 そりゃまぁ、ここに来る人がいないから道もあるわけないよね、やってられんわ。


 ゴブリンにこの辺りに道はないか聞いたところ、あるというので彼らの後についていくことにした……あったぁ

 道というにはあまりにもしょぼすぎるが、獣道でないことは邪魔な木の枝などを刃物で刈って通りやすくしてあるということから人が作った道に間違いはない。

 それにこの感じ、最近というか今でも現役で使っているっぽい。

 なんてのが、なぜ分かるかというとアウトドア訓練なんぞしたことは更々なく、サバイバルのTVショウをみてただけのにわか知識なんだけどね。


 道を10分くらい歩いたとこで洞窟発見!

 もちろん、うちのダンジョンじゃないよ。

 お隣さんだぁー!


 驚かせてはまずいとゴブリン達には少し離れて木の陰で待ってもらうことにして、ひとりで洞窟へと歩いていく。


「こんにちわー、誰かいませんかー?」


 1週間ぶりに人間と話せると思って少し浮かれていたが、すぐに浮かべていた笑みは凍りつく。

 洞窟の奥からでてきた男たちはいかにも()()()()な人種だった。

 髭は伸び放題、傷だらけというか、使い込まれている皮の鎧を着ており、既に鞘から出してある刃渡り60cmくらいの剣を手にこちらに向かってくる。

 そして碌な生活をしていない証拠に腕や足など露出している部分には垢がこびりついてるのが見てとれた。


「お前同業者か? ここは山猫盗賊団のアジトと知ってきたのか?」


 ……ごめん、俺も似たようなものだった。

 この1週間部屋にこもりっきりで、風呂とかもなかったし、歯も指で軽くこすって磨いてただけだわ。

 唯一違うのは服装だけは新しく清潔なものを身に付けていることだった。


 盗賊の問いに対して言葉を発することはできなかったが、奇跡的に体だけは動いた。

 まずい!!

 Uターンして来た道を一目散に走って逃げる。


「待て、こらぁ」

「生かして返すな、追いかけろ!」

「待てぇー」


 声からして3人か、とりあえず振り向きもせずに全力で走る。ゴブリンの潜んでいる木を越えた。彼らは何事かとぽかんとした顔でこちらを見ている。


「逃げろ」俺の指示を聞き、後を追いかけて走っているがあまり足は速くないようだ。たぶんだが、どんどん差が開いていっている。

 いや、怖くて後ろを振り返ることができないんだよ。


「うぉ、こんなとこにゴブリンがいるぞ。やっちまぇ」

「おぅ」

「あ、あぶねぇ、切りかかってきやがったぜ」

「ゴガッ」

「ゴブリンなんか屁でもねぇぜ、もう一匹は任せた。俺はあいつを追いかけるから倒し次第ついて来い」

「任せろ」


 なんか声だけ聞くと、ゴブリンたちと盗賊たちは交戦状態となり、ゴブリンの1匹は倒されもう1匹は戦闘中。そして盗賊のうちのひとりは戦闘をやめ、こちらを追うことにしたようだ。

 やばい、運動不足だ。息があがってきた……

 あっ! そういえば、この辺だったよな。

 道の少し先で不自然に脇から落ち葉が道に向かって散らばっているのが見える。

 木々の間を通って道に出たときに落ち葉をかき出してしまったやつだ。

 ちょうど目印になっていたことを感謝しつつそこを右に曲がり、道もない場所を走る。

 そのついでに後ろを確認、予想外に距離は離れていない。10メートル程度だ。

 『待てぇ』の声にも耳をかさず、ひた走る。

 走りながら声を張り上げているため疲労がみてとれるが、それでも俺よりは体力が残ってそうだ。

 声がどんどん近づいてくる。すぐ間近に息遣いも聞こえてきている。

 俺は腰に挿してあった短剣を抜き、勘だけで後ろに投げた。

 まっすぐ突き刺さるようにではなく、たぶんぐるぐると回転しながら飛んでいったのだろうと思う。

 『ちっ、かすったじゃねーか』の声は先ほどより離れて聞こえる。


 よし、後少し!

 目の前に洞窟が見える。そのままの勢いで駆け込む。

 部屋を抜ける、1つ、2つ、そして階段を降りる、また部屋を越える、そしてもうひとつ。

 唯一ここにだけある扉を叩きつけるように閉め、そこでドアを背にうずくまる。

 もう体力空っぽ、なんも残ってません。吐く息も荒く、ハムスターの問いにすぐ口を開くことができない。


「主様、そんなに息せき切ってどうされましたか?」


 目の前で首をかしげて聞くこいつに少しムカッときた。


「と、盗賊だ、やつらが追ってきている。い、いっしょに行ったゴブリンもたぶんやられた」 


 なんとか息をなだめつつ声を絞り出した。


「早速のダンジョン侵入者ですか。えと、ここをこうしてっと」


 ダンジョンコアに触れつつ何かやっていたかと思うと、壁に先ほどの盗賊の姿が映し出された。

 洞窟の入り口でひとり剣を手に立っている。


「あいつだ、あいつが追いかけてきたんだ」

「あれですか、あれが盗賊ですか。レベルはっと、5ですね」 


「はぁ?」


 なんかレベルとか聞こえたんですけど。


「そういえば説明していませんでしたね。強さの指標としてレベルというものがあるのです。あそこに見えてる盗賊のレベルは5です。あ、また二人来ましたね、彼らは二人ともレベル4ですね。ちなみにゴブリンはレベル3、スライムはレベル1ですので攻め込まれたら負ける可能性が高いです」


 いや、そうじゃねぇだろ。


「そういえば、結界石を使ってあるからやつらは入ってこれないんだよね」

「いえ、結界石が有効なのは主様がダンジョン内にいない時限定でございます。そのため今は自由にダンジョンに出入りすることが可能です」


 ということは、俺が外に出れば結界石は作動するということだな、じゃねーよ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ