11話『公会議と新たな仲間にフレさん──1215年』
イングランド王ジョン。
失地王と呼ばれる彼の大活躍により、その名の通りイングランド・アンジュー帝国が持っていた大陸領の殆どをフランスに征服されてしまった。奪いとったフィリップは彼の治世時だけでフランスの国土を二倍近く増やすという偉業から、初代ローマ皇帝の名を取って[尊厳王]と呼ばれる程であった。
もしジョン王の兄であるリチャードが生きていたら、フランスのフィリップ王はまず攻めては来なかったし、もし大敗を喫したとしてもリチャードは国民から嫌われることも無かっただろう。それぐらい人気のある英雄だったからだ。
ともあれ領地は取られ重税は掛け破門は受ける王にとうとうイングランドの諸侯はキレた。
「こいつに任せてたら俺らの領地まで失地するんじゃないか」
そんなわけで出されたのが1215年、[大憲章]である。
名前がカッコイイので一度習えば覚えている人も多いだろうが、一部を簡単に解説をすると、
・王が勝手に重税掛けるのを禁止。
・王が勝手に処刑とか裁判するのを禁止。
・王が勝手に教会運営に口出しするのを禁止。
・やりたい事あるなら議会開け。
と、云う──つまりは王の権力をごっそり剥奪する条文であった。
おまけにジョン王の権力ではなく、その後も脈々と後世まで続くイングランド王にまで効果を発揮する永続カードである。
こんなもんを臣下に出される王なんてそうは居ないし、受ける王も居ないのだがジョン王はやはり格が違った。
「くくく……それで貴様らの気が済むのならよかろう。このジョン王の刻む歴史がまたひとつ増えたな……」
「うわあこの人なんでこんな時まで不敵なんだ」
「だがこれで終わったと思うなよ……我が策を見せてやるからな!」
「はいはい。そこ判子押してね」
大言を吐くジョン王だがあっさり調印。
こうして後々まで「イングランド王ってあれだよね。マグナカルタ。笑」とヨーロッパで言われるようになるハズレ王家みたいな扱いを受けることになる。
当然反発するのは次かその次に王を出す可能性のある一族であった。
「なにやってんのおおおお!? ジョン王がアホなのはわかるけどそれやっちゃ駄目だろ!!」
「無効! マグナ・カルタは無効です! ほらジョン王も無理やりやらされたって言ってる!」
「くくく……これが我が策だ!」
「こいつ何も考えてねえ!」
と、イングランド国内のみならずフランスも巻き込んだマグナ・カルタの是非と王位争いが起こるのである。
ジョン王を仕方なく擁護する一派と、あいつらやっちゃってくださいよとフランスのルイ8世に頼んで軍を派遣してもらう一派。
勝敗は、悲しいことだがジョン王の味方をした時点で見えていたと言わざるを得なかった……。
*****
とりあえずイングランド国内がハッスルしていたり、フレデリカがテンションで教皇への恩義を忘れてドイツで好き勝手していた時期に。
教皇が開催するキリスト教会上層部が集まる公会議に送り込まれたフレデリカの右腕、ベラルド大司教は大層胃が痛かっただろう。
1215年ラテラノ公会議。
まさに教皇の権力が最大限に高まっているこの時代に相応しく、これまでに無い大規模なものであった。
集まった聖職者は2000人を軽く超える。これもイノケンティウスの持つ教皇パワーによるものだ。
普通の教皇が開く公会議となると大体集まるのは500人から700人ぐらいだろうか。なお、後に語られるがこのイノケンティウスの三代先の教皇が開いた会議だと僅か150人ぐらいしか集まらなかった。パワーが低い例である。
「これだけ集まった中でフレデリカさんへの苦言が出なければいいけど……」
ヨーロッパ中から、特に大都市や首都からは必ず一名以上は参加しているのでここで悪名でも流されればヨーロッパ中に広まるだろう。
さすがにそんなことはしないと思いたい。ベラルドは胃を押さえながら馬に乗ったままローマの街を見回していた。
特に船で来るものが多いので外港のオスティアから、殆どパレードのような勢いで多数の司教などが多くの護衛や従者に囲まれて荘厳にやってくる。
方や自分は馬であった。
しかも単騎。
ドイツからアルプスを越えて走ってきた。
「……このベラルド、フレデリカさんに毒されてないかな!?」
追手がない分行きより楽だろーみたいなノリで大司教が一人送られてやってきた。
実際楽だった。馬に一日中乗っても平気な状態になっている。なにせ、シチリアからドイツ行きだけならず、ドイツに行っても毎日馬で走りまくって国内を移動しまくるフレデリカに付き合わされていたのである。
山賊に出くわしたのに余裕の乗馬技術で逃げられた。アルプスに一人キャンプでも心細くなかった。旅費は現地調達で教会から分けてもらえた。
このままだと単騎で中東まで走れそうな勢いだ。
「十字軍もこのベラルドとフレデリカさんと隊長の三人で行くとか言い出さないよなあの人……ん?」
ローマに入ってくる人の群れの中に、一人の乗馬している聖職者が目に入った。
彼もベラルドに気付いたようで馬をこちらに向けて近づいてくる。
「モチうめえ」
「グイエルモ殿!」
そう、モチを食いながら馬に乗っている聖職者などフレデリカの家庭教師だったグイエルモぐらいだろう。
「お久しぶりですベラルド殿。フレデリカさんはお元気ですか」
「ええ、そりゃあもう。なんというか、一ところに一月と滞在しないぐらいドイツを移動して回ってますし休暇になると隊長を連れて狩猟に出かけますしで……皇帝なのにまだ元気な少女そのものですよ」
「それは結構なことで。多分一生変わらないので覚悟しといてください」
「うわあ……ところでグイエルモ殿も会議に?」
ベラルドの言葉に彼はモチを飲み込んで頷いた。
「ええ。拙僧も今はシチリアで修道院長をしておりまして。俗人が出世したものだなあと我ながら」
「ははは。なに、神を信仰する気持ちに生まれは関係ありませんよ。そういえば教皇が許可を出したフランシスとか云う托鉢修道士もかなり最近は有名になって来ているとか」
「イタリアではよく聞きますねえ。ウゴリーノ枢機卿の推しメンらしいですけど」
「あの人かあ……」
ベラルドが微妙に顔を渋らせて感慨深そうに云うので、グイエルモも苦笑した。
「控え目に言って、ウゴリーノ卿って悪党顔ですからなあ」
「山賊にクリソツなんですよねえあの人。髭もじゃだし。目つき悪いし」
お互いの意見が一致してグイエルモが即興で顔真似をして声を当てる。
「『ぐふふ……巷では聖者などと言われておるがフランシスも儂の前では毛を刈られた子羊よ……』
「言いそう!」
「『このようなあられもない姿を信者が見ればどう思うかな……?』」
「言いそう!」
などと、その枢機卿も住んでいるローマの町中だと云うのに遣り取りをする二人であった。
すると騎乗しているグイエルモの前に一人の修道士が跪いてフードを取った。
「パレルモのグイエルモ修道院長とお見受けします」
「はい?」
見下ろすと明るい栗色の髪の毛をした頭を下げたまま、その相手は話しかけてくる。
見窄らしい衣で小柄な体を包み、座っている様子は乞食のようであった。
だが、その清らかな雰囲気は聖母マリアを彷彿とさせる、済んだ空気を身に纏った人物だ。
「私への悪言ならば幾らでも構いませんので、ウゴリーノ枢機卿を外見で悪く云うのはどうか止めて頂けないでしょうか」
「……すみません、拙僧が間違っておりました。訂正します。なのでどうか頭を上げてください。フランシスさん」
グイエルモはひょいと馬から飛び降りて詫びを入れた。
アッシジのフランシスは立ち上がる。初めて直接見たベラルドは、
(綺麗な目をしている……)
と、フランシスの雰囲気に気圧される。初雪のような触れがたい気配を感じる相手であった。
ぶっちゃけ、からかっては天罰が当たりそうな清さがある。フレデリカとは大違いと云うか、絶対合わせたらいかんと思ってしまう程だ。
「ウゴリーノ枢機卿は法学に詳しく教皇にも一目置かれる立派な御方ですね。見た目で判断したことを懺悔致しましょう」
「申し訳ありません。私のような若輩が」
「いえ。フランシスさんも公会議に?」
「はい、教皇とウゴリーノ枢機卿から呼ばれまして」
と、云うがとても大司教や修道院長が集まる公会議に出るような格好には見えなかったのだが。
頭からすっぽりと被る襤褸のようなローブは膝の上で破れていて、この寒いのに太ももから下は何も身につけていない裸足であった。
細い手足はちゃんと食事を取っているのか不安になるが、それが信仰なのだから仕方はあるまい。
フランシスは一礼をしてラテラノ宮殿へ向かって歩みだした。
その後姿を見送りながらグイエルモは、
「ところでさっきのゲスセリフ、フレデリカさんも言いそうですよね。フリードリヒ棒を持ちながら」
「言いそう言いそう」
「絶対合わせちゃ駄目ですなあ。フランシスさんと」
「逆に邪道なフレデリカさんが浄化されてしまいそうな目をしてましたからなあ」
などと不真面目にぼやきながら、また続々と集まってくる聖職者を会議が始まるまで眺める暇つぶしに戻るのであった。
グイエルモは袖から新たなモチを取り出しながら云う。
「そういえばこの会議で聖なるモチが教会公式設定になるとか何とか」
「まっさかー」
※なった。
*****
モチが教義公式設定になるのと同じくして、オットーへのトドメとばかりに再破門及びフレデリカが神聖ローマ皇帝であるとローマ教会が正式に認める決議がラテラノ公会議で決まっていた頃。
ライン川の支流が流れるハーゲナウと云う地にフレデリカ達は居た。
国内を移動して回りつつも彼女は時折この城がある街に寄って暫く時を過ごすのが休暇であったようだ。
尤も、この地にいても彼女得意の手紙と連絡員を常に遣り取りさせて国内の情報は全て届くようにしているが。
口八丁と手紙、そして人気取りによってこれまでやってきたフレデリカは情報戦略の重要性を知っている。
その城の近くで剣撃の音が鳴り響いていた。
「行きますぞ~!! 見ていてくだされ~!!」
金髪の聖騎士が眼帯を付けたもう一人の騎士へ斬りかかり、それを受け止めて金属がぶつかる鋭い音を出した。
すぐに剣を戻して続けて横薙ぎに振るう。隊長は半歩分だけ後ろにステップして掠らせるだけに留めつつ、片手に持った己の剣で聖騎士の肩を打とうとした。
「神回避ですぞ~!!」
体を回転させるように──無駄な動作にも見えるが、とにかく──ポージングしながら避けられた。
「出た! 団長の神回避!」
「鳥肌注意! 鳥肌注意!」
(本人と周りがうぜえ)
チュートン騎士団の団長ヘルマンと、剣の鍛錬をしている隊長はげんなりとしながら距離を取って構え直す。
最近フレデリカの傘下に入ったチュートン騎士団だが、とりあえずそれまでの最大戦力であり護衛騎士でもある隊長の腕前が見たいと申し込んできたのである。
二人ほど騎士団の団員を叩きのめしたまでは良かったが、ついに団長自らが勝負を挑んできた。
「三位一体! トリニティ斬ですぞー!」
「ええい面倒な」
右袈裟、左袈裟、唐竹の順に振るわれる剣。凄まじく早い上に重い。一撃目の重さを受け止めた瞬間に二撃目が飛んできた。隊長はヘルマンの左方向にくぐるようにすり足で移動するが、避けられたと判断したら軌道が変わり唐竹の位置に剣が落ちてくる。
己の剣の腹で相手の剣を殴りつけて軌道を変え、更に素早い動きでヘルマンの背後へ回る。
すると体全体を回転させて勢いに乗せ剣を思いっきり叩きつけてきた。受け止めるが隊長の大柄な体が軽く浮くような威力である。
「ヘルマン団長の三連斬を受け止めた!」
「ソードバリア持ちだぞあの隊長!」
お互いに譲らぬ攻防にチュートン騎士団は声援を送る。主にヘルマンにだが、尊敬する彼と同等に戦う隊長にもだ。
しかし面倒な事になったものだと隊長は思う。
このヨーロッパ中で尊敬を受ける聖騎士団の、団長をボコって倒すのはまずいのではないかと悩んでいるのである。
故に適当に相手をして負ければいいか、と考えていたのだが、
「頑張れー隊長。負けたらお風呂にフリードリヒ棒持ち込んじゃうぞー」
(凄く嫌だ……!)
とんでもない声援を送っているのはフレデリカである。俺に使うつもりか。
隊長VS団長と云うバトルに彼女も見学しているのだが、それによって更にパワーアップしているのがヘルマンであった。
フレデリカにいいところを見せようとさっきから攻撃が怖い。それに予想以上にヘルマンは強く、手加減をして微妙なところで勝ちを譲ると云う真似ができるかは疑問だ。
負けたら主に自分の大事なものが失いそうな気がするので負けるわけにもいかないが。
ヘルマンの連撃を避けまくりながら慎重に機を伺う。
一気に防御ごと押し込もうと、ヘルマンが大きく飛び上がって切り下ろしてきたのを見て、
(今だ……)
と、掬い上げる斬撃をヘルマンの剣に合わせた。
剛力と剛力。そして十数合の打ち合いで衝撃を与えてた両者の刃の根本をぶつけると──ご、とか、ぎ、とか鈍い音を立てて、両方の剣がへし折れて砕けた。
柄だけになった剣を軽くぷらぷらと振って、隊長はヘルマンの言葉を待つ。
「……これは引き分けでござるな。やるなお主!」
「まあ、フレさんを守れる程度ではあると自負している」
隊長は肩を竦めて云う。
彼の何気ない言葉にヘルマンは大いに内心を驚かせながら、笑みを作った。
ドイツ、シチリアの王でヨーロッパの君主ではフランス王フィリップと双璧になりつつある神聖ローマ皇帝を守れる程度、と云うのはかなり豪気な話である。
「──よし! それでは隊長を入れてオフ会を初めますぞ~!」
「イエー! オフ会だオフ会! 女の子が居た試しの無いオフ会!」
「でもなんか逆に気を使わなくてちょっと安心するオフ会!」
などと団員が盛り上がっていると、フレデリカが手を上げて言った。
「え? 我混ぜてくれないの?」
一同、無言でフレデリカを注視した。
そうだ。
そうであった。
この場には女の子のフレデリカが居たのである。全員童貞なチュートン騎士団からしてみれば異常事態発生だ。
まさに彼女は騎士サークルの姫状態で、皆がそわそわし出した。
その空気を読んだのだろう。隊長がフレデリカの肩を叩いて云う。
「女人厳禁だ、フレさん。彼らは清い聖職者なんだから」
「なーんだ。残念。じゃ、お酒は運ばせるから皆だけで楽しんでね~」
そう言ってフレデリカは立ち上がり、ヒラヒラと手を振って城の方へ歩いて行くのであった。
残された騎士団にはなにか寒い空気があった。咽び泣く者さえ居た。むしろ隊長がその空気に動揺した。
「なんだ? どうした。存分に楽しめ」
「ち、ちくしょう何だこの余裕は!?」
「ええい無性に腹が立つ! 飲み比べとかで勝負だ!」
そして騎士団と隊長の元に、酒樽と豚肉の料理が運ばれてきて飲み会となるのであった。
豚は頭と内臓を取った枝肉を大きな鍋で茹でて火を通し、切り身にした後で茹で汁と塩、香味野菜に酢を混ぜたソースに浸して食べる。
柔らかい肉に旨味のあるタレが酒の肴に最高である。
隊長を酔い潰そうと多く騎士が彼に酒を飲み比べで勝負するが、
「隊長には勝てなかったよ……」
「うわー! 七人目の団員がやられたー!」
「ザルだぞこの隊長!」
と、愉快に飲み比べは続くのであった。
このチュートン騎士団別名ドイツ騎士団。糞真面目なイメージのあるドイツ人で構成されているのだが、やけに陽気な連中が多いようだ。
「こうなれば! 騎士名物マラ比べだ!」
誰かが脱ぎだしたらもう止まらない。自信のある騎士団が次々と全裸になってチンをぶらつかせる。ヘルマンなど回転させ始める。
彼らは聖職者であり、清廉潔白を信条とした身の上である。
しかしまあ、命を掛ける騎士だ。たまには羽目を外すこともあっただろう。
「ほら隊長も脱いで! 剣では負けるけどチンでは負けませんぞ!」
「……仕方ないな」
これもコミュニケーションの一環だと諦めて隊長も寒空の中で服を脱ぎ捨てて一瞬で全裸になり、引き締まった体を夜風に晒す。
「どうだ」
「ぬぬぬ……」
そして堂々と腕を組んでずっしりとしたブツを魅せつける。
しかし騎士はめげずに、
「お、大きさが全てではありませんぞ! いざと云う時に縮こまらない胆力が……」
「おーい隊長いるー?」
「ぎゃあああああきゃああああああ!!」
ひょいと姿を現したフレデリカの言葉に、脱いでいた騎士は一斉に叫びを上げて乙女の様に脱いだ服で股間を隠した。
赴任したばかりのところの女主人の前でチンをさらけ出すなど騎士にあるまじき行為だ。
神に祈る者さえ現れた。祈られても困るわ神も。
だが隊長は慣れた様に曝け出したままで返事をする。
「どうしたフレさん」
「おっ脱いでるなら丁度いい。お風呂いこー」
「……フリードリヒ棒は持っていかんでくれよ」
「わかってるって。あ、それじゃ隊長借りて行くから……って、何なら一緒に入る? ヘルマン」
言葉を向けられた団長ヘルマンは露骨に動揺して首を振った。
「でゅ、でゅふふふふふふ!? せせせ拙者はそういうエッチなのはデュフデュフ──ゴヴァハ」
「団長が鼻血を噴いて倒れたぞー!」
「ホスピタル騎士団呼んでこーい!」
大変な事になったので、仕方なくズボンを履き直した隊長だけ連れてフレデリカは風呂に行くのであった。
その堂々とした態度にチュートン騎士団は畏怖を覚えると同時に、
「リア充滅べ!!」
「あれが余裕の秘密か!」
「エッチなのはいけないと思います!」
と、後でこっそり叫ぶのであったという。
入浴後にフレデリカの部屋で、頭にタオルを乗っけたまま何やら書き物をしているフレデリカの髪の毛をがしゃがしゃと拭ってやる隊長である。
「手紙手紙っと」
「また文通か。ん? 今度はアラビア語だな」
「イスラム圏にも文通相手を探しててね。シチリアに住んでるアラブ人経由で良い文通相手を探してくれたんだ」
「ほう」
「やっぱり中東の人とは学術的な会話ができていいよね。アリストテレスのアラビア語版とか向こうにいっぱいあるらしいんだけど羨ましいなあ……っと、こう書いたら送ってくれないかな?」
「相手に迷惑を掛けるなよ、フレさん」
隊長はちらりと、その文通相手の[アリー]と書かれていたのを見た。
相手が良いペンフレンドになってくれればとは思うが、それにしてもこの皇帝の手紙と学問好きは大したモノなのである。