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俺の幼馴染が行動的過ぎて辛い3

作者: てとら

 カーテンを開けると、太陽の光が部屋中に差し込んだ。


「朝になってしまったね」


「そうだな」


 毛布に包まりながら、俺とヒトミはそんな言葉を交わした。

 

「結局、寝かせてくれなかったんだね」


「どちらかと言うと、お前が続けたがるせいだと思う」


「君の体力が持つ限りは、僕は何度でも」


「ほう?」


 そこまで言うならば。


「まだやるかい?」


「……ふふ」


 彼女は困った様に笑う。さすがに限界か。

 うん、俺も眠いしな。

 俺は手を伸ばして、テレビとゲームの電源を切る。


「結局勝ったのは2回だけかー。悔しいね」


「まだまだ。そんな簡単に追いつかれてたまるものか」


 俺が教えてこいつが始めた。さすがに負けられない。


「大口叩いていられるのも今のうちだけだよ……。私だって、すぐに追いつくから」


「いつも言ってるが、その様子は見られないな」


「くそう」


 彼女はコントローラーを手放して、毛布に頭をうずめた。


「泣いた?」


「そんな訳あるものか。この程度で私は泣かないよ。……ただ」


「ただ?」


「眠いんだ」


「ほう、そいつは聞き捨てならんな」


 そのまま放っておくと本当に寝てしまう。俺は肩をゆすって彼女を覚醒させる。

 うう、と言いながら彼女は顔を上げて、非難の目を俺に向けた。


「何をするだぁ。……眠いんだってば」


「眠ったらお前は10時間は起きないだろうが。ここから10時間寝られると非常に困る。非常に」


 朝五時から眠ったら起きるのは夕方三時。面倒なタイミングになる。いろいろと。


「ああ、君の両親が帰ってきてしまうという事? 大丈夫よ。いざとなれば窓越しで自分の部屋に戻れる」


「窓越しで帰ってもらうにはお前が起きていないと困るだろ。で、お前は十時間は起きない」


「じゃあもう既成事実作ったって言おうよ」


 こういう事はすらすら言えるんだからコイツは全く。


「俺が家から追い出される。高1の身分で社会に放り出されたら俺はどうすりゃ良いんだ」


「女の紐にでもなるとか」


「やめろ」


「うふふ、冗談だよ。君がそんな人間だとは思ってないよ」


「それを聞いて安心した」


「それに君が寄生虫の生き方をお望みだと、私が困るからね」


「あー、そうだなー」


 あえて、何も言わんぞ。


「……スルー?」


 俺の気遣いをなんだと思っているんだこいつは。


「突っ込んだら黙りこむだろ?」


「うん」


「だから、何も言わなかったのに。ほじくり返したら駄目だろ」


 彼女はうーん、と腕を組んだ。


「ダメはダメ、だけど、何も言われないのも、それはそれで寂しいかなって」


「えぇ?」


「えー? ダメ?」


「うーん」


 面倒だなぁ。


「こっちとしては突っ込んでも良いけど、黙られると気まずいんだよな」


「じゃああんまりダイレクトじゃない感じで」


「注文が多いぞ」


「君は良い料理店になれそうだ」


「注文を付けるのは主に店側だろ。どちらかと言えば、お前だ」


 そうか。と彼女は言う。

 うーむ。嫌な予感。


「なら、もっと注文を付けてみようか」


「面倒だからやめて」


「えーっとねぇ」


「やめて」


「君は服を脱げ」


 人の話を聞けよ。てか、なんでやねん。


「拒否する」


「王様のいう事は絶対だよ?」


「あれぇ? いつから王様ゲームになったんだぁ?」


 注文というか命令だな。

 ちなみに女性に命令されて興奮するような性癖は俺にはない。蛇足だけど。


「良いから早くーはーやーくー」


 彼女は膝をぺしぺし叩いて催促してくる。

 俺が脱いで何が起きるというのか。


「いや、やらねーよ?」


「えー?」


「無理だろ。そりゃ」


 モラルとか色々な物を犠牲にしまくってる気がする。モラルの意味は知らない。


「大体、なんで俺が脱がなきゃなんねーんだよ」


「君の体を見れば眠くならないかと思って」


「なんでだ」


「興奮するかも知れないじゃないか? ギンギンになるかもと」


 ヘンタイがいる。ヘンタイだぁ


「何言ってんだお前」


「男だって女の体を見たら否応なく興奮するだろ? それと同じだよ? 女の異性の体には色々感じるものだから」


「そういわれるとそんな気もするけどさぁ。いやいや、でも不平等だろ。俺だけ一方的に服を脱がされるなんてのは、ちょっとズルく……」

 

 って……

 ん? んん?


「……それは、私も脱げって事?」


「……」


 しまった。

 これは失言。


「いや、違う。そもそもどっちも脱がなきゃ良いだろって事」


「でも、私は君の体見てみたいな」


「嫌だって言ってんだろ」


「私も脱げば良いでしょ?」


「やめろ!」


 Tシャツに手を掛けるな。ちらとへそが見えたぞ。


「良く見てるわねぇ」


「っ……!」


 俺は彼女の服を押さえて、彼女が自主的に露出しようとするのを止めた。


「なんだよ? 見たくないの?」


「見たくない……訳じゃないけど、ここでじゃない」


「ホテル?」


「そういう意味じゃねえ!」


「…なにさ」


 じっと、俺を顔を見る彼女。


「えっと、今じゃなくて」


「うん」


「……その」


「なぁに?」


 ああ、もう。


「将来的に、で、頼む」


「……え?」


「…………ほら、俺達、まだ、なんでもないし?」


 高校生だし?


「…………ぷふ」


 彼女が頬を膨らませる。


「笑うなぁッ!」


「ごめん。ちょっと面白かった」


 彼女はにやにやしながら、毛布をかぶる。


 その時ちらっと白い何かが見えた気がしたけど、気のせいだろ。


「じゃあ、楽しみにしていてくれるってこと?」


 その言い方は……。


「……なんか俺がヘンタイみたいじゃないか」


「違うのかい?」


「違くない……わけでもないが! 違うと言ったらうそになる!」


「まどろっこしいなぁ。ちなみに私は変態」


「軽っ!」


「だって、恥ずかしがっていても仕方ないし。私は、いつも君の事ばかり考えていて、その」


「ああ、分かった。分かったから黙れ」


「じゃあ、口をふさいで欲しいな」


「……」


「嘘だよ。そんな怖い顔しないでってば」


 楽しそうに、彼女は笑う。対して俺はため息をついた。

 毎度、奥手なのかやり手なのかはっきりしやがれ。


「それじゃあ、お詫びに朝ごはん何か作ろうか?」


「ん? マジで?」


「マジでー」


「すげー」


「すげーだろ」


 彼女は立ち上がって、俺に手を差し出した。


「ただし、代金は体で支払ってもらう」


「うちの材料使う癖に何を言ってる」


「そうか、払うのは私の方だね。仕方ないなぁ」


「やめろって言ってんだろ!」


 俺は彼女の手を取り、立ち上がる。


 そして何となく手をつないだまま、部屋から出た。

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