もしもし
「もしもし、君かい?
そうそう、僕。
調子は・・・無傷って言うと嘘になるけど。
軽いのが多いだけ幸運だったさ。
帰れそうかって?
ごめん、上司に言われたんだ、まだ戻れない。
こっちに・・・少なくとも三ヶ月くらい、多くて何十年も居ることになるって。
他の仕事とかもまだあるらしい
ほんと、ごめんな。
ジョセフの調子はどうだい?
よかった。学校にも行ってるんだろ?
被害とか、ないか?
元気そうで安心した。
そっか、掛け算習ってるのか。
会いたがってるって?嬉しいなぁ。
もう二年、会ってないからさ、
忘れられてるんじゃないかって、思ったりもしたんだ。
終わりそうか、っていうとなぁ・・・
終わりそうだよ、
わが国の敗北と言う形でだけど。
予想してたんだね
君は本当に強い人だよ。
僕にはもったいないくらいだ。
こっちの様子かぁ・・・
戦場は酷いとこは本当に酷い。
むごい話はしたくないけど、聞きたいなら話す義務がある。
えーっと・・・見ただけでも、
死体があちこち転がってるよ。
負傷者だっていっぱいいるし。
血のにおいが充満してて、消えないんだ。
煙とかもすごいし。
大丈夫大丈夫!
皆、根性だけは人一倍だって、知ってるだろ?
隣のヨハンも、ぴんぴんしてるんだぜ。
早く行こうってせかすんだ。
はは、ほんと参っちゃうな。
本当は、仕方がなかったとはいえ、人をあやめてしまった僕が、
ジョセフに、そして君にあっていいのか、なんて思うんだ。
ありがとう、そういってもらえると心が軽くなるよ。
じゃあ、その心配はもうしない。
時間がもうあんまりないんだ。
後ろで上司がせかしてる。
名残惜しいけど、切るね。
すぐ会えるさ、
じゃあね、ばいばい」
受話器を置いた。
後ろにいる男が、笑いながら、それでも油断を見せることなく話しかけてくる。
「終わったようだな、家族へのお別れはすんだか?」
「ああ、待ってくれるだけ、ありがたい」
「なぁに、俺だって故郷に妻とか娘とか残してきてんだ。
お前の気持ちもわかるってもんだ。
申し訳ないが、こういうトコなんだ、ココは」
「ああ、嫌って程分かってる。仕方ない。これも運命だと割り切るしかないね」
「じゃあな」
「ああ」
頭に向けられた銃が熱を発する。
聞きなれた音が耳元でして、鼓膜が破れそうだ。
ヨハンもあっちで首を長くしてまっているだろう。
時期に君も、こっちにくるだろう。
後ろにいた男は敵です、みたいなおちです。わかりにくくてごめんなさい。
妻には、自分が大丈夫といって安心してほしかったんです。
ヨハンも死に、背後から敵に銃を向けられた絶望的な状況。
もうすぐ妻と子のいる故郷にも、戦争は進んでいきます。
敵だって妻や娘がいるのです。
おもしろくもなんともないけど、
こんな認識です。
あ、でも戦争中たぶん電話つかえないのでは?
とおもったけれど、
このシチュエーションが頭の中で出来上がってたんで・・・