時渡りの姫巫女 なんちゃって小話(ショタ
「……アレ?」
ここは、いつものグレンタールの村の中。歩きながら、リィナは何ともいえない違和感を覚えていた。
なんか違う。
「おい、どうしたんだ、困ってるのなら、助けてやるぜ?」
かけられた声に、リィナは振り返る。
偉そうな口調だけれど、かわいらしい、甲高い子供の声。
振り返ると、そこには6才前後ぐらいの小さな男の子が一人立っていた。
黒い髪、青灰色の瞳、そしてこの整った顔立ち………。
この、ちっこくて、かわいらしくて、ちょっとぷにっとしている、この愛らしいくも生意気そうな、これは………。
「……ヴォ、ヴォルフ、様??」
そう、ヴォルフにそっくりだった。きっと、ヴォルフの幼い頃はこんなだっただろうと思うくらいに、とても愛らしくて、生意気そうで、年の割に妙にかっこいいというか、かっこつけてるというか……。
「おまえ、俺のことを知っているのか?」
あああ、ちっこいヴォルフ様が、私を見上げている……。
「……かわいいですぅぅ!!!」
衝動的にリィナは少年を抱き上げた。
「な、ちょっ、ヤメロ……!!」
リィナに抱きしめられ、ヴォルフ少年は暴れるが、まだその小さい体では、とてもではないが逃げ出せない。
その間にもリィナは、ぷにっと柔らかいほっぺを触って、柔らかな髪を撫でて、小さな体を抱きしめる。少年の抵抗など、ささやかな物だ。
小さくても、女相手だから、手加減してるっぽいし。さすがヴォルフ様よね。
と、ちっこいヴォルフをリィナはしっかりと堪能したのであった。
目が覚めて、あれ?と、思う。
夢かぁ。
子供の頃のヴォルフに会うなど、夢以外何者でもないのだけれど、ずいぶんとリアルな夢だった。
「かわいかったなぁ、ちっこいヴォルフ様」
ほっぺの感触や、柔らかな髪の感触、抱きしめた時の小さな体。
かわいくて、胸がきゅーっとなる。
そして、リィナは今日も舞いの練習に行く。
ヴォルフを横目に、昨日の夢を思い出してにやにやしているとヴォルフが近寄ってきてぽんと頭に手を置いて、がしがしっと髪を撫でられた。
「よう、ちびすけ」
「ちびって言わないで下さい!」
夢の中のヴォルフ様は、あんなにかわいかったのに!
ぷんぷんしながら、リィナは練習に向かったのだった。
そのリィナの後ろをついて行きながら、ヴォルフは、
「このおちびちゃんを見てると、なんか、彼女を思い出すな……」
などとさらりと流れる金髪を見ながら、幼い頃、一度だけ会った女性を思い出す。
顔は覚えていないが、さらりと金糸のように流れる髪と、とても綺麗な人だと思ったことだけは覚えている。そして、その金色の思い出と共に、抱きしめられた腕の優しさや触れてくる手の感触を思い出すのだった。