第5話:白刃抜く蝶
しばらくすると、影は昨日のように金色の糸に絡めとられるようにして小さくなっていき、光の玉となって教室のほうへと飛んでいった。
急いで影を吸収した光の玉を追いかけると、光の玉は男性講師の中に吸収されるようにして入っていった。
「これであの男は大丈夫だ。しばらくすれば目を覚ますだろう」
オーアが言った。
「…………」
しかし俺は素直に喜べない。
結局俺が救えたのは1人だけで。
他の大勢の生徒や、友達の小柴すら俺には助けられなかった。
ここにいる皆は、明日、学校には来ない。
その家族も友人も、皆不安を抱えてこれから生活することになる。
いつ彼らは目覚めるのか。
このまま一生眠り続けたままなのではないか、と。
……そう思うと申し訳なかった。
皆を、小柴を直視できずに、俺は俯いた。
涙すら出ない。
そんな自分に軽く嫌悪を覚える。
「……サツキ……」
彼女が軽く、慰めるように俺の肩に手を乗せた。
その時、妙に辺りが明るくなった。
「! サツキ、見ろ!」
オーアが急に声のトーンを上げた。
何事かと顔を上げると、目の前には無数の青い光の玉が浮かんでいた。
「……え?」
光の玉はそれぞれの生徒の身体に入っていった。
勿論、小柴の身体にも戻っていったのを俺はきちんと確認した。
「……オーア、これって……」
半ば放心状態で彼女に尋ねる。
「他のティンクチャーが一仕事してくれたようだ」
彼女は満面の笑みでそう答えた。
「…………はは……」
思わず笑いがこぼれる。
「よかった……」
気がつけば目頭が熱くなっていた。
恐らくは、責めから解かれたことによる安堵の涙だ。
結局俺は、自分が1番可愛いらしい。
現金な奴だと自分でも思う。
けど、ここにいる皆が、小柴が、助かってくれて良かったという気持ちに嘘はない。
……本当に、よかった。
「サツキ、ここはもう心配ない。外へ出よう。お前がここにいると友人に怪しまれるだろう?」
彼女の言葉に頷いて、俺達は塾を後にした。
街はいつもどおりの風景だった。
あのネイチャーの群れが暴れた風にも見えない。
「ティンクチャーってあんた以外にもいるんだな、こっちに」
それは初めて知らされた事実だった。
「無論だ。今回の件に関してはほぼ全チームのティンクチャーが関与している。……しかしあれだな、あの数のネイチャーをまとめて仕留めるとは、なかなかのやり手と契約したようだ」
心底感心するように彼女は言う。
どうやらこの街の誰かが、他のティンクチャーと契約して皆を助けてくれたらしい。
もし会えるのならば礼のひとつくらい言いたいものだ。もしあのままだったら、今みたいに暢気にレモンティーを手に提げて帰路につくなんて出来なかっただろうから。
ただ
「……なあ、腕、大丈夫なのか?」
彼女が俺をかばったときに受けた傷が少し気がかりだった。当の彼女はというと、破れた袖は得意の早着替えで既に直しているが、傷までは流石に治せないように思うのだ。
「言っただろう、掠り傷だ。すぐに治る」
彼女はそう言って右腕をぶんぶん回すので「あんまり動かすなよ」と慌てて止めた。
「その……なんていうか、血、流れてるんだな」
思わず俺がそう呟くと
「は? どういう意味だ?」
彼女は怪訝な顔をした。
無理もない。さっきの俺の言い方だと少し失礼だったかもしれない。
「いや、悪気があって言ってるわけじゃないんだけど。あんた空から降ってきたりぬいぐるみに変身したり、あんまり変な奴だから……」
俺はそこで言葉に詰まったが、彼女は大体の意味を把握してくれたようで
「ふむ、まあ確かにお前達から見ればおおよそ人間らしくはないかもしれないが。もともと私たちの身体は人間をモデルにして創られているんだ。まあ多少器官の場所が異なったりするが、血液を始めとして機能的には人間と同等のものを私たちも持っている」
彼女はそう教えてくれた。
「へえ……」
そんな生返事をしながら、俺は礼を言うタイミングを図っていた。
結局今日も彼女に助けられた。
無理を言って力まで貸してもらったんだ。
礼を言わないといけないのに、なかなか言うタイミングが見つからない。
……そうこうしていると
「そういえばサツキ」
彼女が歩を止めてこちらに向き直った。
「今日、初めて私のことを名前で呼んでくれたな」
彼女は無邪気な笑顔でそう言った。
「……な、なんだよ、呼んだら駄目なのかよ」
あまりにもその笑顔が眩しかったので、思わずつっけんどんな言い方になってしまった。
が、彼女は微笑み返して
「いいや。『あんた』じゃ他人行儀だからな、名前で呼んでくれたほうが私は嬉しい」
そんな、恥ずかしいことを言ってくる。
「……し、知るか!」
俺はまたも熱くなってきた頬を隠すために早歩きを始める。
「はっはっは、照れるな照れるな。私が頬を舐めただけで赤くなっていたからな、サツキは」
「なってねえよ! でたらめ言うな!」
秋の静かな夜道。
後ろから聞こえてくるからかいの声に反抗しながら、綾が首を長くして待っているであろう我が家を目指した。
翌日、いつもどおりの時間に新品の自転車で学校に行くと、教室はひとつの噂でもちきりになっていた。
俺が自分の席につくと、その近くで固まって喋っていた男子達が手招きした。
「瀬川、聞いたか? 昨日西進で大量に人が倒れたって! 救急車が来て大変だったみたいだぞ」
西進、というのは俺が通っている塾の名前だ。
「今流行ってるあの病気っぽいけど昨日は全員すぐ目が覚めたってさ」
「へ? そうなん? 今川、なんで知ってんの?」
「倒れた奴の中に友達がいてさ、夜中に自慢げにメールしてきたんだよ。『俺は生還したぞー』ってな」
あの事件がもうこんなに話題になっているらしい。
そうしていると
「おーっすお前ら、朝から楽しそうだな」
後ろから、いつもの声がした。
振り返ると、昨日となんら変わりない小柴の姿があった。
「あ、小柴! お前昨日西進行ってたんじゃねーの!? お前も病院行ったのか!?」
1人がストレートに尋ねる。
「おう、気付けば病院だった。なんつーかほんと、寝てただけだったような気がするんだよなー」
彼は首を傾げてそう言う。身体のほうに異常はないようだ。
「お前が授業中寝てるのはいつものことじゃん」
1人がからかうと小柴は「なんだとー」とじゃれつく。
「小柴、気を失う前の記憶もないのか?」
俺は恐る恐る尋ねてみた。すると彼はあっけらかんと
「おう。ほんと、まったく記憶がないんだよ。でもなんていうかなー、変な爽快感があったようななかったような?」
そう言った。記憶がないというのは幸いだ。あんな光景、思い出しただけで寒気がする。
「爽快感って。危ない薬みたいなガスでも充満してたんじゃねえの?」
「うわ、ありえるー。あ、ガスで思い出したけどさ、東棟の……」
そうして話が段々と逸れていった。
そんな他愛のない会話を聞いていると小柴が傍らに寄ってきて
「結局昨日は授業なくなってラッキーだったよ。でも病院行くくらいならやっぱり五月ちゃんと遊びに行ったほうが楽しかったかな〜」
とはにかむ。俺はやれやれと溜め息混じりに
「ラッキーってお前……。でも無事でよかったな、ほんと」
本心をこぼす。すると小柴はがしりと暑苦しく俺の肩に腕を回してきて
「心配してくれんの!? やっぱ五月ちゃんはツンデレだなー!」
とかなんとか言ってくる。
「俺はツンデレじゃねえ!」
「よしよし、今日こそ遊びに行こうぜー。実は昨日からゲーセンで新しい音ゲーが稼動してんだよ〜。早くやりたくてウズウズしてんだ〜」
俺の意見はおかまいなしに小柴は続けた。
……まあ、かまわないが。
「わかったよ、付き合うよ。でも後ろに人が並んでんのに連続プレイはやめてくれよ? 前んときとかマジで後ろの奴の目、怖かったんだからな」
「はーい。……ん? 五月ちゃん、頬のそれ、どうした?」
小柴がそう尋ねてきた。頬といえば昨日戦ったときに出来た切り傷だ。今は絆創膏を貼ってある。
「え。ああ、妹と遊んでてちょっとな」
「へー、綾ちゃんて意外とやんちゃなんだなー」
……ああ、また綾のせいにしちまったよ。
軽く罪悪感を覚えつつそう誤魔化していると、とある生徒とはた、と視線がぶつかった。
五十嵐だ。
視線がぶつかっても、気まずくなって視線を逸らすようなことはせず、彼女はつかの間、じっとこちらを見ていた。
まるで何かを探るように。
「…………?」
俺のほうが気まずくなって視線を逸らそうとした瞬間、彼女のほうが先に視線を落とした。
――なんだろう……?
俺は気付かない間に彼女に何か粗相をしてしまったんだろうか。
日直忘れてるとか!? ……いや、今日は俺日直じゃないし。あれかな、昨日の首の傷も妹のせいにしちまったから相当凶暴な妹なんだなとか思われたのかな。
……ああ、すまん綾。
放課後、俺は小柴との約束どおり奴と一緒に駅近くのゲーセンへと足を運んだ。
夕方にしてもまだ早い時刻なせいか比較的すいていて、小柴は嬉しそうに目当てのゲームを連続プレイしていた。
俺はというとそれをたまに覗いてやりながらクレーンゲームをぼちぼちプレイし、小さいカエルのマスコットを1つとることが出来た。
綾への土産も1つ出来たところで
「おーい小柴ー、まだやるのかー?」
適当に声をかけて、怖そうなお兄さん達が来店する時刻になる前にゲーセンを出た。
「まだ遊びたりねーなー。なー、久々に五月ちゃん家行っちゃだめ?」
小柴が頭の上で腕を組みながらそんなことを言ってくる。
「え……」
普段なら別にかまわないんだが、今はさすがにまずい気がする。
恐らくこの時間だとオーアが家にいるだろうし。
「ちょっと……無理かなー」
やんわりと断ってみる。
「そっかー、残念。じゃあ俺の……お!」
小柴が何か言いかけて止める。何かを発見したようで、視線をどこかにやったまま俺の肩をばしばし叩く。
「五月ちゃん五月ちゃん、あれ見ろよ! すっげー美人! モデルみてー!」
小柴はそうとう興奮しているようだった。彼がここまで女性関係のことで興奮するのは実は珍しい。
一体どんな美人なんだと俺も視線をやってみると。
――げ。
視線の先、数メートル先にある本屋の軒先で、通行人の視線を集めているにも関わらず堂々と雑誌を立ち読みしている女がいた。
軽くウェーブがかった金糸の髪に、地味目の長袖Tシャツと細身のジーンズ。……とくればもうあいつしかいない。
「外人さんかなー? あんなに真剣に何読んでんのかな? ちょっと近寄ってみようぜ」
小柴がぐいぐいと俺を引っ張る。
「え、いやちょ! こらまて小柴!」
体格という点でかなり彼に負けている俺は抵抗むなしくどんどん引きずられていく。
すると、俺の声に気付いたのか、彼女のほうがこちらを振り返った。
「!」
ああ、まずいまずいまずいー!!
「おお、サツキじゃないか」
こちらの気など知らず、彼女は朗らかに軽やかに挨拶をした。
「ってええ!? 五月ちゃん知り合い!?」
小柴が思いのほか大きな声で叫ぶので周りにも若干ざわめきが広がる。
もうやめて……。
「ん? そっちは昨日の……。いや、はじめましてだな。君はサツキの友人か?」
何か意味深な言い方だったが話しかけられた当人はその事実だけで舞い上がってしまったらしく
「はい! 五月君の大親友の小柴高明でっす!」
なぜか敬礼しながら挨拶していた。
「つーかなんでここにいるんだよ」
小柴に聞こえないよう小声で彼女に問う。
「職探しだ。こういった雑誌には求人情報がよく載っているからな」
それで本屋で立ち読みかよ!
どうせならもっと目立たないところで立ち読んでくれよ!
「五月ちゃん、何こそこそやってんだよー。紹介してよー」
小柴が勢い任せに服の裾をひっぱってくる。
――やめてくれ、服が伸びる! つーかなんて紹介したらいいんだよ!?
俺が慌てていると
「私はオーアだ。つい先日この町に越してきた。町で最初に出会ったのがサツキでな、不慣れなことが多いので色々と助けてもらっている」
オーアはさらりとそう言った。
――意味は、通じる、か?
「はー、そうなんすか。五月ちゃんが羨ましいなあ、こんな綺麗な人と最初に巡り会えるなんて」
……小柴の台詞がちょっときもいぞ。こんなキャラだったのかこいつ。
「はは。サツキと同い年の割には気の利いたことを言ってくれるな、タカアキは」
愛想笑い、というよりも本気でそう思っているのだろう、そんな笑みを浮かべて彼女は言う。
一方小柴はいきなりファーストネームで呼んでもらえたことが相当嬉しかったらしく、自分の名前を小声で反芻しながらその場で身もだえしている。
そうこうしていると
「あ、あのー、す、すみません。ここお店の入り口なんで、で、出来ればお話は……」
本屋の店員らしき大人しそうな眼鏡の女性が出てきた。
「おっと、これは失礼した。お詫びに1冊本を買っていこう」
オーアはそう言ってそのあたりにひら積みされていた漫画雑誌を店員に手渡す。
――てちょっと待てよ。
「おい、金は」
俺が言うと。
「おっと。……すまん、貸してくれ」
…………なんて奴だ。
その後、小柴が家に来ないかと俺と彼女を誘ったが、家で1人で留守番をしている綾のことを思うとあまり長居は出来そうになかったので今日は断っておいた。
日も落ちかけた頃、帰路につく。
「ていうかさ」
「なんだ?」
「なんでグラビアアイドルが表紙の漫画雑誌をわざわざ買うんだよ。レジのとき恥ずかしかったじゃねえか」
俺は先ほどの件についての不満を漏らした。
彼女は悪びれた風もなく言う。
「表紙の女子が私好みだったんでつい手に取ってしまったんだ。他意はない」
――そういうのを確信犯と言うんだ、馬鹿。
「なんだ、サツキはそういうのは普段買わないのか?」
「俺は単行本派だ」
「ああ、なるほどな。だが雑誌には雑誌の長所があるぞ? 色んな話を読めるだろう」
「まあそうだな」
何で俺は今、人外生物と漫画の話をしてるんだろう。
「しかしあれだな、最近の雑誌の表紙を飾る女子は皆大きいよなあ。まだ10代だろうに」
「……一応尋ねるが、何の話だ」
「鈍い奴だな、バストの話だ」
なぜか少々頬を赤らめて応える金髪美女。
どうしてここで胸の大きさの話になるんだ。
「私が言うのもなんなんだがな、私はちょっと控えめぐらいのほうが好みなんだ」
「そんなもん知るか!」
耐えかねて俺が吼えてもこいつのトークは止まらない。手に持っていた漫画雑誌を掲げて
「この雑誌の子ぐらいがちょうどいいバランスだと思うんだ。ところでサツキはどっち派だ?」
なんて尋ねてくる。
「オヤジトークを道端で堂々と繰り広げるなこの変態が!」
「な!? 人の好みだけで変態呼ばわりする気か!?」
「好みとかそういう問題じゃねえ! つーかなんでお前女のくせに女の子の好みとか語ってんだ!?」
俺がそう言うとオーアはけろりと
「いや、我々は基本雑食だからな」
なんて言いやがった。
「……ちょっと待て、我々ってことはその、ティンクチャー全体がってことか?」
恐る恐る尋ねると
「ティンクチャーに本来性別というものは無意味だ。まあ確かに形は個体によって男性女性に分かれているが、それは形だけの問題だしな」
…………なんとフリーダムな。
俺がそんな、呆れたような顔をしていると、オーアはからかうようにくすりと笑った。
「まあ大抵の者は自らの形に囚われるがな。それは私も同じだ」
俺は盛大に首をかしげる。
……つまるところこいつはなんなんだ、と。
だがオーアは続ける。
「人間も同じだ。すぐ形に囚われる。これは摂理といっても仕方あるまい。だが形に囚われすぎるのは……よくない。中身をきちんと理解しないとな」
そう呟いたオーアはどこか遠い目をしていた。まるで何かを懐かしむ、もしくは悔いるように。
彼女の言葉の意味が段々よく分からなくなってきた。
「……それって結局どういう意味なん」
だよ、と問おうとしたとき、俺の目は捉えてしまった。
数十メートル先の宙を、黒い何かが飛んでいくのを。
「ちょ、あれ……」
気付けばオーアもそちらの方向に目をやっていた。
「連日出没か。……昨日のことといい、3年前よりひどい状況だな」
彼女はそうひとりごちてから
「見つけてしまった以上放置するわけにもいくまい。とりあえず私はあれを追う」
昨日のように急に走り出した。
「え、あ、ちょ! お前1人で追ってもどうにもできないんじゃないのか!?」
俺も慌てて追いかける。
「……サツキ、お前も意外と物好きだな。わざわざこんな厄介ごとに首を突っ込むのか?」
彼女はどこか俺を突き放すようにそう問うてきた。
――昨日もそうだ。彼女は出来る限り俺をこの件に関わらせないようにしている節がある。
しかし同時に彼女は独力ではあれをどうにかすることは不可能だと自ら言った。
ひどい矛盾だ。
それぐらい、彼女だって分かっているだろうに。
「別に好きで厄介ごとに首を突っ込んでるわけじゃない。あんたこそ方策もなしに追いかけてどうする気だ」
彼女の背中に向かって俺がたしなめるようにそう言うと
「お前は本当に生意気な奴だ」
どこか儚げな響きを秘めた声が微かに聞こえた。
辿り着いたのは、松の木が無数に植えられた公園。
散歩コース用に作られた公園で、敷地は広い。
太陽が沈みきるのを見計らったように、電灯が自動的に点き始めた。
「確かこっちのほうに……」
空が暗いせいか見失ってしまったのだろうか。まったく姿が見えない。
「……下等ネイチャーは動きだけは速いからな」
オーアも諦め気味にそう呟きながら木の上などを見渡す。
「……帰るか?」
見つからないものはしょうがないと、踵を返そうとしたそのとき、公園の奥のほうで何かが微かに光った。
「……?」
それは、青白い光だった。あの光には見覚えがある。
「おいサツキ?」
オーアの呼びかけに返事もしないで俺は自然と足をそちらに向けていた。
木の陰から何かが光ったあたりを覗こうとしたその瞬間
「!?」
ざく、という木の乾いた音が響く。
見れば、俺の顔のすぐ脇で黒いものが串刺しになっていた。
串刺しになったのは勿論、さきほど俺達が追いかけていたネイチャーで。
それを串刺しにしたのは、幻想的に青白く光る白刃。
そしてその刀を握っているのは……
「い、五十嵐……?」
何事にも動じそうにない冷静なる眼と、和を強くイメージさせるつややかな黒い髪。
目の前にいるのは、紛れもなくクラスメイトの五十嵐揚羽だった。
「な、ん」
で、と言いたかったのだが、舌が回りそうにない。それに、俺がちゃんとした言葉を発する前に彼女が口を開いた。
「……瀬川君。邪魔」
小走りの亀、息切れにつき連続更新は無理そうです(あきらめるの早ッ)。
今回の話は最後の最後まで「バストの話」あたりの会話に悩んでたんですが(変なとこで悩むなよ)……なんかすみません。
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。次回もお付き合いいただければ幸いです。