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僕と中二病なアイツ

サクッと読めるのでよろしくお願いしま「フハハハハ!」

うわあ、やめろっ、悪魔グシオン!!

「高瀬、パス!」

「はい!」


 元気に返事をした俺、高瀬敦也(たかせあつや)はパスされたバスケットボールをドリブルしながらゴール近くまで走り、シュートを打つ。

 しかし、ボールはリングにぶつかった後、無常にも網の外に放り出された。


「おい、何やってるんだよ!」


 先輩が俺の方へ近づき苛立ちをぶつける。バスケットボール部に所属する俺達は、放課後体育館で試合形式の練習をしているのだ。


「一年でレギュラーになったからって、良い気になってんじゃないのか? いつまでも調子に乗ってんじゃねえぞ!」


 そう。俺は、自分で言うのもなんだがこの中学のバスケ部に入ってから活躍し、一年の内からレギュラーの座を勝ち取っていた。しかし、先輩たちはそれが気に食わないのか、俺が少しミスする度に文句を言ってくる。

 二年生に進級した今でも、調子に乗っているつもりは無いんだけどなあ。




 俺が何も言えずに黙り込んでいると、不意に後ろから声が聞こえた。


「フハハハハハ! どうやら私の力でボールの軌道が変わったようだな! これからもこの悪魔グシオンがお前を苦しめ『くっ……グシオンめ! 俺の身体を乗っ取って俺の大切な親友を傷つけるなんて、絶対に許さない!』」


 そう言って一人芝居をしているのは、俺の親友の日置勇(ひおきゆう)。サラサラの黒髪をした勇は、一応イケメンの部類に入ると思うが、このように残念な言動をする為にモテた試しがない。


 先輩達は、いきなり体育館で茶番を演じ始めた勇をポカンとした顔で見ていたけれど、次第にドン引きした表情に変化し、「おい、あっち行こうぜ」と言って体育館の隅の方に移動してしまった。




 先輩達の背中を見送った俺は、勇の方に近づいて言った。


「ありがとう、勇。俺が先輩にキツく当たられていたから、庇ってくれたんだよな」


 笑顔の俺を見た勇は、照れくさそうに眼を背けて呟く。


「……別に、お前の為じゃないし……グシオンが俺の身体を乗っ取ったからだし……」


 俺の事を「大切な親友」と言っておいて何を今更。勇とは小学生の時からの付き合いだけど、昔から勇は優しい奴だった。


       ◆ ◆ ◆


 小学四年の時、今と違って引っ込み思案だった俺は、同級生から虐められていた。俺と同じように大人しい性格だった勇は、クラスメイトの俺を助けたいと思いながらも、オロオロするばかりで何もできなかったらしい。


 しかしある日、勇は「フハハハハ!」と笑って、虐められている最中の俺と虐めっ子の間に割って入った。

 悪魔だの何だのと語る勇にドン引きした虐めっ子は、「気持ち悪い奴」と言いながらその場を離れた。



 俺はすぐ、勇が俺を助ける為にこんな芝居をしたと気付いた。俺が勇に近付き礼を言うと、勇は照れくさそうに「悪魔に身体を乗っ取られただけだから……」と言ってそそくさと立ち去った。


 俺を虐めっ子から助けようとした勇は、悶々と悩んだ末、アニメで見たような設定で虐めっ子の気を削ごうと考えたのだろう。それでも、俺や虐めっ子に声を掛けるのには相当な勇気が必要だったはずだ。勇気を振り絞って俺を助けてくれた勇に、俺は感謝してもしきれない。


       ◆ ◆ ◆


「勇、もう少ししたら部活が終わると思うから、一緒に帰ろうぜ。お前も委員会の仕事が終わったからここに来たんだろ?」


 中学二年生になった現在。バスケ部の先輩達の姿をチラリと見ながら俺は勇に提案した。


「お、おう。……その……悪魔に身体を乗っ取られた俺といつもつるんでくれて、その……ありがとう……」


 少し恥ずかしそうに呟く勇を見て、俺は目を見開いた。ジワジワと心が温かくなる。俺は、勇を見ると満面の笑みで応えた。


「おう! これからもよろしくな!」




 クラスメイトの中には、勇の事を中二病だと言って見下す奴もいる。でも、俺にとって、勇はかけがえのない親友だ。


 これからもずっと勇と仲良くしていけたらいいなと、俺は思った。

この企画、楽しかったです(´艸`*)

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― 新着の感想 ―
小四の頃から今日に至るまで悪魔グシオン設定を貫いて助けてくれる親友……なん、なんて厚い友情……! しかもグシオンの台詞の途中で自我を挟むテクニックが入るあたり、きっと小学生の時よりも小芝居の精度が上が…
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